世界各国を旅しながら映画監督や写真家として活動をしてきた長谷井宏紀監督が、フィリピンのストリート・チルドレンとの出会いをもとに描いた長編デビュー作。孤児のブランカは、ある日、“母親をお金で買う”というアイデアを思い付き、実行に移そうとします。しかし、路上で出会った盲目のギター弾きのピーターから、窃盗などではなく歌でお金を稼ぐことを提案され、2人は一緒に演奏を始めます。日を追うごとに、道行く人々を惹き付けていくブランカの歌声。彼女は自分の力でお金を得ることの喜びと自信を手に入れていきます。
日本人から見れば、かなり過酷な環境のなかで、逞しく生きるフィリピンの路上生活者達。さまざまな辛い事情を抱えながら、活き活きと暮らす彼らの力強さに驚き、同時に勇気をもらいます。そして、愛を知らないブランカが、ピーターとの関係のなかで温かな思いやりに目覚めていく姿に、胸が熱くなりました。YouTubeで歌っているところを発掘されたというブランカ役のサイデル・ガブテロちゃんの歌声と、ストリートミュージシャンであるピーター・ミラリさんの演奏も見どころですが、劇中でブランカが歌う「ホーム」という曲がとても印象的です。原曲は「カリノサ」という古いスペインの曲だそうですが、長谷井監督が手掛けたという歌詞がとても温かく希望に満ちていてステキです。劇場用パンフレットに日本語訳が掲載されているそうなので、興味がある方は、ぜひ手にとって読んでほしいと思います。
|
ラブストーリーではありませんが、デートで観るのにもぴったりの作品です。どんなときも、優しさと希望を失わずに生きていこうと、前向きで明るい気持ちになれるので、観賞後は良い雰囲気で過ごせると思います。最近、相手への思いやりを見失いがち…というカップルには、男と女である前に、人としての思いやりをもって相手を見つめ直すきっかけをくれるかも知れません。ストーリーもわかりやすく、子どもから大人まで楽しめる作品です。 |
世界中から新人映画監督を発掘し育成することを目的としたヴェネツィア・ビエンナーレ&ヴェネツィア国際映画祭の出資を、日本人で初めて獲得した作品です。将来的に映画界を目指している人や、チャンスを狙っている学生などは、本作のもつグローバルな視点や、普遍的な愛の表現に学べるところがたくさんあると思います。映画への思いや撮影の裏話をたっぷり伺った長谷井宏紀監督のインタビューも、ぜひ併せてお読みください! |