2017年5月27日より全国公開
キノフィルムズ
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視覚障がい者に向けた映画の“音声ガイド”制作に携わるヒロインの美佐子(水崎綾女)が、視力を失いつつある弱視のカメラマンの雅哉(永瀬正敏)と出会うことで、次第に内面を変化させていくストーリー。本作を観て、生きることの“希望”と“絶望”、そして“他者の視点に立つ”という深いテーマについて考えさせられたと同時に、河直美監督のどこまでも繊細で、計算し尽くされた映画表現に、心底シビれました。劇中に描かれる“表現することの難しさ”や“自分にとっての当たり前が、ある人にとってはそうではない”という思いは、映画作りに魂を捧げている河瀬直美監督自身の苦悩であるようにも思えます。視力を失いつつある雅哉が、美佐子に新しい視点を与え、美佐子自身は雅哉の絶望を知ったときに、自分の仕事の使命を深く心に刻む…。皮肉にも思えますが、この関係性は恋愛でありながらも、その枠を越えた絆を感じさせます。すこぶる難題に、まるで自らに試練を与えるように取り組んだ河監督。良い表現ではありませんが、一体どんな“落とし前”をつけるのかが気になって、グイグイと作品に引き込まれていきました。 ラストは圧巻。臨場感を全身で感じるためにも、ぜひ映画館でご覧になることをオススメします! |
美佐子と雅哉のラブストーリーではありますが、前述したように本作の主題はもっと深いところにあると思います。観る側にも深い思慮や考察があったほうが楽しめる作品だと思いますので、ファーストデートやライトな関係の相手とのデートには少し重い映画かも知れません。ただし、映画好きなら、いつまでも語り合いたくなるような要素がたくさん出てきます。練られた脚本や映像美についてもそうですが、永瀬正敏、神野三鈴、藤竜也らベテラン俳優陣の演技がやはり、すばらしい!水崎綾女も、フレッシュさと少しつたなさが残るところが、美佐子という役にリアリティを与えていていると思います。人によって本作から受け取るものはさまざまだと思いますが、カップルで観ればお互いの価値観を確認するチャンスにもなるでしょう。 |
淡々としながら深いテーマが描かれるストーリーは、キッズやローティーンには少し難解に感じると思います。オススメするとしたら高校生以上ですが、視覚障がい者の方が映画を鑑賞できるように、スクリーンに映る情景を解説していく“音声ガイド”という仕事は大変興味深いものですし、バリアフリーについて考えるきっかけにもなると思います。また、目が見えることがどれほどすばらしいことかも、実感してもらえるかも知れません。ヒロインの美佐子が仕事を通して得る苦労や達成感は、就職活動を控えた学生にも参考になるところがたくさんあると思います。興味が沸いたら、ぜひご覧ください。 |
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2017.5.17 TEXT by min