2016年11月26日より全国公開
ポニーキャニオン
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1950年代のウエストコースト・ジャズ・シーンを代表するトランペッターであり、ジェームス・ディーンを彷彿とさせる甘いマスクと歌声で絶大な人気を博した、チェット・ベイカー。同時期に活躍した多くのスターと同じように、名声と引きかえにドラッグと女性に溺れ、波乱の道を辿った彼の人生を、イーサン・ホークがほろ苦く繊細に演じます。本作は、一人の男の情けなさと切なさと、音楽への純粋な情熱を描いた人間ドラマとして、ジャズ好きやイーサンのファンならずとも、オススメしたい作品です。もちろん、劇中にはセッション・シーンやほかのジャズ・ミュージシャンとの関わりも登場しますので、ジャズやチェット・ベイカーに興味のある人なら、一層楽しめます。イーサンは、トランペットのトレーニングを半年ほど受けてこの役に臨み、演奏シーンの演技も素晴らしいのですが、歌声がチェット・ベイカーの特徴をよく捉えていて聴き入りました。劇中で歌う『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』は心に染み入るように感動的です。独特の色彩と余白の多いスタイリッシュな映像が刹那的なストリートと相まって、観たあとはしばらく余韻に浸りたくなる作品です。 |
精神的に弱さを抱えたダメ男と、それを支える恋人。そう珍しいラブストーリーではないものの、恋人のために人生を再生させようと、かつては大スターだったチェットが町のピザ屋で演奏をしたり、スタジオの雑用係として働く姿は、あまりにもいじらしくて胸が切なくなります。彼女のジェーンのほうも自分の目標に向かって歩んでいるしっかり者で、そのままいけば破滅的な恋ではまったくないはずなのですが…。恋とは、人を大きく成長もさせますが、この上なく人を傷つけるものでもありますね。ジャズ好きなカップルならデートで観るのもオススメですが、かなりビターなラブストーリーですので、デートよりも一人でじっくり鑑賞することをオススメします。 |
大人の恋愛と人生の哀愁が描かれた作品です。キッズやティーンが理解するには、もう少し人生経験が必要かも知れません。ただ、高校生くらいになれば、少し背伸びをして大人の世界を覗いてみるのもいいと思います。マイルス・デイヴィスをしのぐ人気と言われたチェットですが、黒人ミュージシャン(とくにマイルス)へのコンプレックスを感じさせる描写もあり、天才と呼ばれる人間の意外な心理も垣間見ることができます。 |
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2016.11.22 TEXT by min