2017年4月8日より全国順次公開
トランスフォーマー
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自閉症により言葉を失った少年が、大好きなディズニー・アニメーションを通じて外の世界とのコミュニケーションを取り戻し、独り立ちするまでに成長していく姿を、明るくユーモアたっぷりに描いたドキュメンタリーです。2歳で突然言葉を話さなくなり、医師から「一生話せなくなるかも知れない」と告げられた本作の主人公、オーウェン。残酷な現実にぶつかった家族は、戸惑い、絶望的な気持ちになりますが、ある日、父親のロンが、オーウェンがモゴモゴと発している言葉が、彼が夢中になって観ている『リトル・マーメイド』のセリフだということに気付きます。その事をきっかけにディズニー・アニメーションを通じて言葉を交わし、絆を取り戻していく家族達。まるで、ドラマのような出来事ですが、決して諦めることなくオーウェンに話しかけ、希望を持ち続けたからこそ、ロンは彼のささいな変化に気付くことができたのだと思います。 本作のロジャー・ロス・ウィリアムズ監督は、約2年にわたる密着取材と、オーウェンの過去の写真やホームビデオの映像で彼の半生を追っていきます。そして同時に、イラストやアニメーションを巧みに使って、記録として残されていない過去の出来事や、オーウェンの内面で繰り広げられている世界にもフォーカスしていきます。その構成が実に見事で、オーウェンのユニークな個性を生き生きと表現しながら、自閉症という障がいがどういったものであるかという一端を観客に興味深く提示してくれます。さらに、成長したオーウェンが、大学では自ら「ディズニー・クラブ」を主催し恋や失恋も経験する姿を通して、彼の内面が誰よりも豊かであることを知ることができるでしょう。 本作の企画に感動したディズニー社から異例の使用許諾を受け、劇中にディズニー・アニメーションの名作フッテージが数多く登場するところも見どころ。サンダンス映画祭で大喝采を浴び、アカデミー賞ノミネートも果たした本作は、お涙頂戴のアプローチではなく、とてもポジティブな感動に導かれるハートフルな作品です。 |
子どもをもつご夫婦や、将来的に子どもをもちたいと考えているカップルにもぜひ観てほしい作品です。障がいをもつ子どもとその家族を、ポジティブな視点で描写した作品ではありますが、もちろん、そのなかには家族の苦悩も赤裸々に描かれています。しかし、オーウェンの内面を深く理解しようとする家族の姿からは、相手を一個人として理解することの大切さを学ぶことができると思います。そして、それは夫婦や親子という身近な人間関係においても、とても重要なことだと気付かされるはずです。 |
2017年2月に文部科学省の特別選定作品に選ばれ、さらには2016年度の厚生労働省社会保障審議会推薦作品のなかでも特に優れている作品として、『この世界の片隅に』と共に特別推薦作品に選定された本作。キッズやティーンにも、ぜひ観ていただきたい作品です。本作をきっかけに、自閉症という障がいについて調べたり考えたりするのも有意義だと思いますし、オーウェンのように、夢中になるくらい好きなことがあれば、それをきっかけに自分の道を切り拓いていくことができると知ってもらえると思います。 |
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2017.3.27 TEXT by min