2018年5月12日より全国公開
クロックワークス
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粗野で貧しい母娘の言動は、一般常識的な視点で観ると、マナーがなくて、身勝手で自己中心的で、共感しづらい部分もありますが、彼女達がなりたくてそうなっているわけではない部分も見えるので、とてもやるせない気持ちになります。娘のムーニーは6歳にして相当悪ガキですが、ラストで、彼女なりに強がって生きようとしてこんな風に振る舞っていたんだなと思えて、胸が締め付けられました。お金の心配をしたり、住むところを確保したりは大人の責任ではあるけれど、そんな親を子どもなりに心配して、子ども自身も日々戦っているんですよね。娘を愛するがゆえの母ヘイリーの苦悩もリアルに伝わってくるし、少し距離を置きながらも2人を見守るモーテルの管理人ボビー(ウィレム・デフォー)の人間味にも、温かさを感じます。この物語には、いかにも敵という感じの悪役は出てこないので、ショーン・ベイカー監督にインタビューをさせて頂いた際、その点についても聞いてみたので、合わせて読んで頂ければと思いますが、ざっくり言うと、敢えて言うなら今アメリカが抱えている様々な社会問題が悪だということでした。 物語の舞台は、“夢の国”ディズニー・ワールドのすぐそばにあるモーテル。でも、そこに住む人々は、ディズニー・ワールドとは縁遠い人達ばかりで、とても皮肉な状況が描かれていますが、本作には悲壮感だけが漂うわけではなく、娘ムーニーの目を通して、とてもカラフルでキラキラした世界に描かれているので、希望も感じます。すごくアーティスティックな世界観を楽しめる作品でもあるので、フラットなスタンスで観て欲しいと思います。 |
ラブストーリーの要素はなく、日々戦う母娘の厳しい現実が描かれているので、ロマンチックなムードにはならないと思いますが、逆にそういうムードが苦手なカップルには、良いと思います。人間ドラマとして見応えがあり、各キャラクターの心情は、観る側に想像させる部分も多いので、語り合いたくなるはずです。そんな会話のなかで、相性も占えるのではないでしょうか。 |
キッズ向けの作品ではありませんが、6歳の少女ムーニーの視点で描かれているので、子ども達は子ども達で大人とは違った視点で楽しめるように思います。とても社会的なテーマを扱ってはいますが、物語としてはシンプルなので、小学校高学年以上なら充分理解できると思います。大人も子どもも一生懸命生きているんだと思えるストーリーなので、親子で観るのもアリですよ。 |
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2018.4.25 TEXT by Myson