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『白河夜船』 2015年4月25日より全国公開 ©2015よしもとばなな/『白河夜船』製作委員会 |
『白河夜船』 |
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不倫をしている寺子は、親友を亡くしたショックと、不倫相手の岩永の愛は本物なのか考え出すと不安でいっぱいになり、一人で過ごす時間はほとんど寝ているような状態。いつも不倫相手の岩永からの電話を心待ちにしており、彼の電話で目覚め、彼と会う約束をして出かけるくらいしか、用事がないような毎日を過ごしています。でも、やがて彼女はあることがきっかけで生活を変えていきます。この変化、一見恋愛とは無関係に見えるのですが…。 |
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本作では“眠り”が非常に重要なキーワードになっていて、あらゆる事柄に“眠り”が絡んできます。寺子が眠ってばかりというだけではなく、亡くなった親友の職業が“添い寝屋”だったり、不倫相手の岩永の妻は病院で意識不明で眠り続けています。こういった背景はありつつも、寺子の恋愛は不倫であることに違いはないので普通の恋愛よりも不安が大きいのは当然のことでしょう。不安を紛らわせるために眠ってばかりいるのかも知れません。でもそれと同時に起きているわずかな時間のほとんどは不倫相手のために使われているように描かれています。単純に考えてそういう生活なら自然に彼のことばかりで頭がいっぱいになるという悪循環にはまるのは当たり前です。ただ“眠り続ける”(岩永の妻と同じような状況になってみる)というところで、岩永を理解しようとしている、何かしらの感情を共有しようとしているのかも知れません。とは言え、彼女が彼の自分に対する気持ちが愛なのか不安に思っているのは、彼女自身が彼に依存している、もしくはお互いに依存していると、どこかで自覚しているからなのではないでしょうか。 |
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TEXT by Myson