映画に隠された恋愛哲学とヒント集33

1969年、ベトナム戦争が終盤に差し掛かった頃、キム・ジンピョンは、軍人としてエリートの道を進むべく、上官の娘と結婚し、軍の教育隊長を務めていました。そんなある日、ジンビョンは、軍官舎に引っ越してきた部下の妻チョン・ガフンの謎めいた雰囲気に一目で激しく惹かれ、あることをきっかけに2人は急接近し、やがて深い関係になっていきます。でも、不倫関係にある2人が正式に結ばれるはずはなく…。

戦場で体験した苦難がトラウマになっているのか、ジンビョンは秘かに薬を常用しています。家では妻に子作りをせがまれ、普通の生活をこなそうと努力はしていますが、彼はただそこにいるだけで、“生きている”ようには見えません。そこへ同じく孤独感を漂わせるガフンが現れ、どこか似たもの同士の2人は自然にお互いに引き寄せられていくのですが、感情に任せて求め合う時期を過ぎる頃、徐々に2人の価値観の違いが見えてきます。
のちにガフンも夫とは愛で結ばれているような関係ではないことが明らかになってくるのですが、それでも夫を選ぶべきだと思う事情が彼女を束縛しています。一方ジンピョンは、生きている心地を久々に味わわせてくれたガフンを手放すまいとどんどん彼女にのめり込んでいきます。ざっくりと2人の価値観を表現するなら、現実的な生き方＝生活を優先的に考える女と、理想の生き方＝人生を優先的に考える男で、違いが出てきます。もちろん個人差はあるとはいえ、女は物事を現実的に考える生き物、男は本能的に行動する生き物なので、“生きていく”という概念がそもそも違うのかも知れません。動物的に考えると、もしかしたら子孫繁栄という意味では、男は子孫を残したいと思わせる異性により強く惹かれ、女は生存率の高い異性に付く方が堅実と考えるのかなと思いました。激しく燃える恋愛も、現実の生活と並行していますから、この辺の考え方次第で最終的に成就するか、破局になるか、絶対的にどこかで分岐点を迎えるのは避けられないですね。