映画に隠された恋愛哲学とヒント集41

18歳になった途端、目覚める度に外見が変わってしまう主人公のウジン。その変化は、男、女、老人、子ども、外国人…とさまざまで、身体の機能さえ、その時の人物の状態に変化してしまいます。中身だけは本人のまま、外見は別人になるので、彼が同日人物かどうかを判別するのは至難の業です。
そんな彼は恋愛をすることすら諦めていましたが、遂に1人の女性に恋してしまいます。でも、一度眠ってしまうと容姿が変わってしまう彼は、寝ないように我慢するしかありませんが、それも限界がやってきます。真相を彼女に打ち明けたところで、彼女はそれを受け止められるのかというのが、このストーリーの最大のテーマになっています。

人間を評価するとき、「内面が重要」とはよく言われますが、完全にそう言い切れないと思わせられるのが、本作のストーリー。現実的にはあり得ない設定ですが、「内面が重要」という問題を極端な設定で見せてくれます。性別や国籍、年齢などが変わってしまうという設定を少し抽象的な意味合いに置きかえてみましょう。女性でも男性っぽい一面があったり、大人でも子どもっぽい一面があったり、人間の内面にはいくつもの人格があると思いますが、それを具現化したキャラクターとして、本作の主人公を観てみると、私たちの日常でも置きかえられます。同じ相手と付き合っていても、付き合いが続いていくうちに新しい一面に出会うことはあるはずです。こう考えると、「内面だって美しいだけではないのでは？」という見方もできます。
だからと言って、『ビューティー・インサイド』というタイトルの本作に異議を唱えているわけではありません。私の解釈では、内面だって、外見だって、日々変わるけれど、相手のそういう変化も含めて愛せるかが重要なのではということです。つまり、一般的な解釈で言う美しさのことではなく、たとえ醜い一面でも愛する人のことなら美しいと思えるのかどうかということなのではないでしょうか。
少々話が複雑になってしまいましたが、結局のところ、外見重視で相手を選ぶ人、内面重視で相手を選ぶ人を問わず、相手のどんな一面も愛せるなら、それで良いのではないでしょうか？外見で選んでいたとしても、相手の内面の醜さも美しいと思えるなら、それも愛なのかも知れません。