ミン:
夏帆さんは本格的なアクションやハードな暴力シーンにも挑まれていますが、演じてみていかがでしたか。
夏帆さん:
アクションはかなり大変でした。強い女性の設定で、刀を使って銃を使って、しかも今までに見たことのない動きをするんですよ。特に山田との対決シーンは、このドラマのクライマックスの一つでもあるし、すごく大事にしたいシーンではあったけど、なかなか練習する時間もなくて…。
満島真之介さん:
時間がないなかで、長いアクションシーンを演じなきゃいけないし、撮影は全く進んでいかないし。とても、大変だったよね。男と女でアクションをすることは僕らにとっても初めてなのに、手合わせをする時間もほとんどなくて。僕が空いている時間は、夏帆ちゃんのシーンを撮影しているとか、すれ違いが多かったね。
夏帆さん:
そうそう。しかも、撮影しながら動きを付けていくことが多くて。大変なシーンほど脚本に詳細が書かれていなくて、ひと言“山田とK、戦う”みたいな感じ(笑)。毎日、現場で何が起きるのかわからなかったんです。
ミン:
すごい!かなり手探りの状態での撮影だったのですね。
満島真之介さん:
前日までどこを撮るかも決まってなくて、現場で作っていった感じです。園さんも、僕らが実際に動いているときの顔とか体つきからインスピレーションを得て言葉が浮かんだり、カットが浮かんだりっていうことの繰り返し。そこに臨機応変に、かつパワフルに対応するためには、常に身体も心もフル稼働の状態でいないと。だからこそ、皆が密に作品に参加しているんです。
夏帆さん:
気合いを入れてスタンバっていても呼ばれない日もあったし(笑)。ほとんどスタジオでの撮影だったから、時間感覚もわからなくなるし。作品自体がどこに向かうのかもわからないまま、監督もキャストもスタッフもギリギリの状態で撮影していたので、撮影現場の空気がなんか異様でした。
満島真之介さん:
皆ギリギリだから、何か一つ崩れたら全部が崩れる感じ。まるで、ジェンガ。ほんと、ジェンガレベル(笑)!
ミン:
ジェンガレベル(笑)。
満島真之介さん:
でも僕は裏方から園組に入っているから、「この現場の空気、久しぶりにきた!」っていう感じでした。すごく気も張っているし疲れているけど、爛々(らんらん)としてきちゃって(笑)。でも、皆は大変だっただろうなぁ。
夏帆さん:
後半のアクションが始まってからは、スタッフもキャストも皆おかしくなっていたよね。もう、ナチュラルハイ。今思えば、普通の精神状態じゃなかったなって(笑)。
満島真之介さん:
でも、園さんの映画が好きな人達が集まっているから、熱気がすごくて、タイトな撮影の中みんな覚醒状態になっているし、何が起きてもおかしくない空気感が現場に充満していました。それがマイナスにならず、全部作品に映っているからすごい。やはり、園さんは唯一無二の存在だって改めて思いましたよ。エキストラさんにもガンガン、アクションさせちゃうし(笑)。
ミン:
現場の熱気が伝わってきますね(笑)。夏帆さんはルーマニアでのロケにも行かれていましたけど、実際のヴァンパイア伝説の地を見て、演じるうえで意識的に変化したことがあればお聞かせください。
夏帆さん:
そもそも、この作品がルーマニアの撮影からスタートしたんです。手探りの状態で、いきなりのルーマニア。日本人スタッフはほとんどいないし、「私、どうしてルーマニアにいるんだろう?」って混乱していました(笑)。
満島真之介さん:
普通はなかなか行かないよ、ルーマニアには(笑)。でも、ヴァンパイアっていう日本の文化にないものに挑戦するワクワク感と不安が相まって、その時にしかできない芝居と作品が出来たんじゃないかな。
夏帆さん:
そう。ロケ地になったブラン城や、サリーナ・トゥルダっていう岩塩坑だった場所も実際にすごくステキだったけど、実際に出来上がった画を観たら、ものすごく良くて!あの場所でしか撮れなかった映像になったと思います。ほんとうに、園マジックだなぁって。
ミン:
ルーマニアのシーンは神秘的で荘厳な印象を受けました。東京のホテルのセットとはかなり雰囲気が違っていましたね(笑)。
満島真之介さん:
ルーマニアの画があるから、この作品にすごく説得力があるんですよ。現地まで行って撮っている画があるというのは素晴らしいし、そこにはヴァンパイア伝説と東京との繋がりが描かれる。この作品には欠かせないことだったなと。「ルーマニアに負けない強い世界観を東京でも作らないと!」と思っていました。実際に撮影現場は観ていないから、映像を観て改めて「すごい!」って思ったし。
夏帆さん:
ルーマニアのシーンに限らず、ただ無我夢中でやっていて、こんな作品ができるとは思ってもみなかったです。出来上がった作品は想像を超えていて、本当にビックリしました。まるで、魔法にかかったみたい!
ミン:
ルーマニア人が観ても、日本人が観ても、そのほかの国の人が観ても、新しいヴァンパイア作品になったのではないでしょうか。
夏帆さん:
全く新しい角度でヴァンパイア伝説を作れたと思いますよ!これまでにない作品です!
満島真之介さん:
パラレルワールドに呑み込まれていたんじゃないかと思うくらい、すべてが奇跡的なタイミングで進行していました。そのなかで、世界に負けない作品を作りたかった。日本ではあまり見られない形のエンタテインメント作品になったと思います。とにかく、まず、観てください(笑)!
夏帆さん:
どれだけ現場が大変でも、作品が良ければすべて忘れてしまうんですよね。園さんってやっぱりすごい!いろいろ説明するより、とにかく観てって感じです。ぜひぜひ、ご覧くださいね!
2017.5.15 取材&TEXT by min
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2017年6月16日 全9話Amazonプライム・ビデオにて見放題独占配信スタート
総監督・脚本:園子温
出演:夏帆/満島真之介/冨手麻妙/神楽坂恵/安達祐実
22歳の誕生日を迎えるマナミは、謎の吸血鬼達に付け狙われていた。強大な力を持つKは彼女を怒涛の戦いの中で救おうとする。そんななか、若い男女ばかりが“ホテル・レクイエム”に招待される。そこには山田という謎の男と、奇怪な女帝とエリザベート・バートリが住み、ホテルを取り仕切っている。招待された人々はホテル内で山田が主催する全国合コン大会に参加する若い男女。突如、山田が明日世界は滅び、このホテル内にいる人間だけが助かる道が残されていると告げる。ホテルの下には広大な地下空間が広がり、人間はそこで愛を営み、人類を繁栄させ、女帝と山田ら吸血鬼コルビン族から永遠に食らわれ続けるしか存続の道がないのだと…。そこへ、マナミを奪取しようとするKがコルビン族を滅亡させるべく乗り込んでくる。かくして、人類そして吸血鬼たちの存亡をかけた戦いが始まった…。
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