今回は、多くの作品にひっぱりだこの毎熊克哉さんを取材させて頂きました。毎度、とてもリアルな演技に驚かされますが、いつもどんな役作りをしているのか、俳優としてどんなスタンスを意識されているのか、お聞きしました。
PROFILE
石岡一也役:毎熊克哉(まいぐまかつや)
1987年3月28日生まれ、広島県出身。初主演作『ケンとカズ』(16)で、第71回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞、第31回高崎映画祭最優秀新進男優賞を受賞するなど、大きな評価を得る。今年映画公開作に『北の桜守』、『去年の冬、きみと別れ』、『素敵なダイナマイトスキャンダル』、『万引き家族』、『空飛ぶタイヤ』、『純平、考え直せ』、主演『私の奴隷になりなさい第2章 ご主人様と呼ばせてください』、主演『私の奴隷になりなさい第3章 おまえ次第』、『止められるか、俺たちを』等があり、今冬には『真っ赤な星』、『新宿パンチ』が公開を控えている。本年の映画公開作品は13本あり、今最も勢いのある俳優の一人である。
マイソン:
最近いろいろな作品を拝見する度に、「(毎熊さんが)こっちにもあっちにも出てる!」と思うことがよくあります。これまで多くの作品を演じてこられましたが、どんなアプローチで役作りをしていますか?
毎熊克哉さん:
実際に撮影現場に行ってからわかることもあるので、その時のために、このくらいまでにしておこうという感じはあります。
マイソン:
最初は作り過ぎないということですか?
毎熊克哉さん:
そうですね。例えば、靴を履いて部屋にあがるのか、脱いであがるのかもわからないし、どういう場所でっていうのも行ってみないとわからなかったり、相手がどういう風に思っているかもわからないので、むしろそこを楽しみにしています。
マイソン:
確かに、演出や共演者の方の演技などすべて合わさって、作られていきますものね。どの作品を観ても、すごく自然でリアルな演技に思うのですが、役作りのために、普段していることはありますか?
毎熊克哉さん:
いや〜、ありがとうございます。理想は、生活から何となく探るっていうのが良いなと思っていて、衣装が1ヶ月前にわかるんだったら、そのキャラクターが着ていそうな服を着て歩いたり。役だったり状況によって、どういう風にできるかが変わってくるので、その時々で、という感じです。
マイソン:
今回は悪人の世界に入っているけど、中身はそうではなくて、葛藤している役でした。過去の役で極悪な役もやっていたと思うんですけど、そういう点での違いや、演じる難しさ、おもしろさはどういうところにありますか?
毎熊克哉さん:
本当の悪っていうのが難しいなと思っていて、悪でも善でも人としての柔らかい部分を先に見つけておくというか、今のところはそういうところから探しています。なぜ悪なのか、逆になぜ悪にいききらないのかっていうのがあると思うんです。100%悪っていうのは、僕はまだやったことがないんですけど、100%悪っていうのは、本人にとっては悪じゃないってことで、それを他者から見たら完全に悪っていう役はやってみたいです。でも、それにはまた違う難しさがあって、完璧な善人をやるくらい難しいんだろうなと思います。
マイソン:
完璧な悪、完璧な善。どちらも難しそうですね。今回の役だと、ここは理解できるなって思うところはありましたか?
毎熊克哉さん:
今回は、そもそもヒットマンって呼ばれる人が、どんな風に生活しているかを知らないし、あんまり現実味がない職業じゃないですか。そこは難しいなと思いました。自分がどこで生まれて、母親がいてとか、自分の過去を話すシーンがあるんですけど、そこが頼りでしたね。チラ見せって言うんですかね(笑)。こういうキャラクターはたぶん底が見えないほうがおもしろいと思うので、「母親がいたんだ。親父の話もしているけど、兄弟はいないのかな?」とかって、勝手に考えてもらうくらいのほうが良いだろうなと。そのシーンが唯一自分のことを語るシーンなので、そこからヒントを得たというか、「じゃあ、彼は本当は何が欲しかったんだろう?」とか、「なぜたまたま見かけて知り合った子どもをそこまで想うんだろう?」という理由付けも、そこを頼りに考えました。
マイソン:
今のチラ見せのお話で思ったんですが、俳優さんもSNSやメディアでどこまでプライベートや素顔を見せるのかって部分は、大切ですよね。
毎熊克哉さん:
確かに難しいですよね。SNSってすごく人柄が出ちゃうじゃないですか。だから僕は、宣伝や、「雨降ったな」くらいで、あまり発言しないんですけど(笑)。
マイソン:
それは毎熊さん的に“こういう俳優のスタンスでいたい”というのがあるからですか?
毎熊克哉さん:
僕は役者としていろいろな役をやりたいので、毎熊という僕自身のイメージが邪魔をするなら、やっぱりそれはあまり見せないほうが良いなと思います。それは役をちゃんとその役として見てもらいたいというだけなんですけど。
マイソン:
では、役者としての今後について質問です。海外の映画に出られる方や、海外の監督が日本人をキャスティングして撮る機会が増えたように思うのですが、今後海外進出したいと思いますか?
毎熊克哉さん:
ずっとその気持ちはあるんですけど、その前に英語を勉強しろってことなので(苦笑)。でもたぶん合作とか、今よりもっと増えていくと思うので、それまでにちゃんと英語を勉強しなきゃなと思います。でも、海外に日本人の役者として行きたい気持ちと、純日本作品で海外の映画と勝負したい気持ちと、両方あります。
マイソン:
どちらも楽しみにしています!それでは最後に、本作で女子に注目して欲しいポイントを教えてください。
毎熊克哉さん:
甲本雅裕さんが演じた刑事が言う「またお前やくざか、懲りないな」みたいな台詞があるんです。僕の演じた石岡という幸せにはなれないであろう相手を好きになってしまう、宮地真緒さんが演じる美咲という女性がいて、その「わかってはいるけど…」みたいな歯痒いところがポイントかなと思います。
マイソン:
わかっちゃいるけど、同じような人を好きになって苦労するみたいな(笑)。“女子あるある”ですね。ありがとうございました!
2018年9月15日取材&TEXT by Myson
2018年10月27日(土)〜11月2日(金)池袋シネマ・ロサにて限定公開
2018年11月7日(水)DVD発売
監督:森岡利行
出演:宮地真緒/毎熊克哉/山田奈保/柴田明良/荒井雄斗/朝加真由美/甲本雅裕
配給:アルゴ・ピクチャーズ
1人息子のためなら何でもやってきた、シングルマザーの桑原美咲は、ある日、石岡一也という男と出会う。美咲が働くスナックに定期的に来るようになった石岡は、毎回美咲を使命し、彼女の“仕事”部屋にくるが、窓から外を覗き続けるだけで、美咲を抱こうとはしない。美咲は、自分のことも全く話さない石岡に興味を持ち始めるが…。
公式サイト 映画批評&デート向き映画判定
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