全世界待望の“ファンタスティック・ビースト”シリーズ最新作『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』の劇場公開に合わせ、関連本が発売されます。これに先立ち、“ハリー・ポッター”シリーズ、“ファンタスティック・ビースト”の映画、関連本のグラフィックデザインを担当してきたクリエイティブ・チーム、MinaLimaのミラフォラ・ミナさんとエドゥアルド・リマさんが来日!インタビューをさせて頂きました。
PROFILE
MinaLima(ミナリマ)
ミラフォラ・ミナとエドゥアルド・リマにより2009年にロンドンに設立されたグラフィックデザインスタジオ。映画“ハリー・ポッター”や“ファンタスティック・ビースト”シリーズのグラフィックデザインを担当。“ハリー・ポッター”シリーズでは、“忍びの地図”や“日刊預言者新聞”などのデザインを手がけた。また、両シリーズの関連本でもブックデザインを担当している。
マイソン:
小道具やグラフィックデザインを手掛ける際、原作以外で、発想の源は何ですか?
ミラフォラ・ミナさん:
100万ドルの質問です。
マイソン:
まさに!!
エドゥアルド・リマさん:
すべてのものからインスピレーションを得るようにしています。例えば、今回日本に来て、道路にあるマンホールの写真を撮りましたし、いろいろな看板の数字や文字なども本当におもしろいと思っています。我々のようなクリエイティブな仕事をしている人間としては、自分達でもムカつくくらい、本当にすべてがおもしろく感じられます。ただこういう映画の場合は、過去の時代に戻って、何が実際に使われていたのか、何を正しいものとして参考にするのか、しっかりとしたリサーチも大切です。例えば、タイポグラフィーやテクスチャー、模様などもすべて調べるようにしています。なので道を歩いているだけで大忙しなんです。写真を撮りたくて、いろいろなところで止まってしまうんです。
ミラフォラ・ミナさん:
なぜかと言うと、やっぱり今後5年間でどんなものをデザインするかわからないし、その意味では何が使えるものなのかわからない。ですので、常にいろいろなアイデアを交錯させて、デザインを作るようにしています。
マイソン:
この物語の世界はファンタジーですが、観ている側はリアリティを感じないと物語に入っていけないということもあると思います。ファンタジーと現実のバランスはどんな風に取っているのでしょうか?
お2人:
とても素晴らしい質問ですね。
ミラフォラ・ミナさん:
例えば、映画の“ハリー・ポッター”のデザインを始めた時を振り返ると、J.K.ローリングの本の中では、すべて実際に起きているように現実的だったんです。主人公の男の子ハリーは7年間本当に学校に通っていましたし、現実の世界にも存在する手紙を受け取るというところから始まります。ですので、扱われているすべてが本当に現実の世界にあるものでした。なので、そういった同じようなアプローチをデザインにおいてもおこないました。新聞を例にとってみると、形式や新聞を作るシステムとか、そういったものはすべて本当の新聞になぞらえて作りました。ただ魔法界に合わせて少しだけ変えるんです。同様に、本もできるだけ普通の本に似せて親しみがわくようにするけれど、よく見てみるとそれがファンタジーのものであるとわかるようにしています。
マイソン:
今回映画の関連本というところで、監督のデイビッド・イェーツ、脚本のJ.K.ローリングはどのように、どの程度関わっているのでしょうか?
ミラフォラ・ミナさん:
J.K.ローリングやデイビッド・イェーツは、この本に関してだけ言うと、最終的な承認を行うという時点で関わっています。ただ映画制作においてすべての要素を深く話し合っているので、しっかりコミュニケーションをとった上で、書籍に入れ込んでいます。そういったところはこの本の有利なところだと思いますし、ほかの映画タイアップ本とは全然違うところだと思います。こういった出版物においては、映画のコンセプトアーティストであるダーモット・パワーも、 映画関連本に関わっていますが、出版業界において映画のデザインを手掛けた人が最終的に書籍のデザインも行うという、両端にいることはなかなかないことなので、それは素晴らしいことなのではないでしょうか。
エドゥアルド・リマさん:
我々は映画制作にあたり、すべてのデザイン素材に接しているし、作ったりもしています。そういう意味では、普段からデイビッド・イェーツとはすべてのことにおいて深くコミュニケーションをとっています。また、時にはJ.K.ローリングとも実際にコミュニケーションをとって、より詳細について聞くこともあります。ですので、この本にあるデザインはすべて映画で関わってきたものが入っている、とても親しみのある内容となっています。
マイソン:
世界観がすごくゴージャスだし、ファンタジーの世界を描いているので、映画にも関連本にも重厚感がありますよね。ちょっと生々しい質問なのですが、予算が限られるなか 、お客さんの手に届く価格の範囲内で高いクオリティを実現するため、どんな工夫をされているのでしょうか?
ミラフォラ・ミナさん:
その件に関しては、私達は本当にラッキーだったと言えます。初めて私達が本を出版した のは、ハーパーコリンズ(出版社)からだったんです。ハーパーコリンズから「“ハリー・ポッター”の本を作れる?」って聞かれて、「もちろんです」と簡単に答えたんですが、 とにかくとてもコストがかかったと思います。商業的にはむしろ利益が出なかったんじゃないかと思うんですが、ハーパーコリンズはその件に関してとても寛容でした。私達は「こういう挿入物を入れたい」とか「金の加工をしたい」「エンボス加工をしたい」といったことをいろいろ言いましたが、ハーパーコリンズは「オーケー、やってみよう」と、全部応えてくれました。ですので、デザインとしてのゴージャスさ、リッチさというものを保つことができましたし、欧米圏では大手の出版社になるので、その資金力によって、こうしたことができたんだと思います。なので、本当にこれは“幸せな結婚”だったと言えるんじゃないでしょうか。その意味で私達はとても甘やかされているというか、映画のデザインをやっていたということで、そのこだわりをすべて書籍に反映させることができたと思います。
マイソン:
では、この関連本の制作で一番苦労した部分、こだわった部分を教えてください。
エドゥアルド・リマさん:
この本には、本当にいろいろなコンテンツを盛り込んで、いろいろなことを読者に見せたいと思っていたんです。ものすごくコアなファンの方だと10回も映画を観たりするから、すべてを把握するだろうと思いますが、初めて映画を観た時には物語やキャラクターに集中するので、細かい部分を見落としてしまうと思うんです。この本の何が良いのかというと、ディテールが入っていることです。最も大変でこだわったことは、映画の衣装デザインや建物なども含め、どれだけ細かいことをこの本に入れられるのかということ。そしてそれがファンの方に見て頂けるのかということに、とても集中しました。ただ、見せちゃいけないものもあったんです。
ミラフォラ・ミナさん:
本当に時間との戦いで、この映画の撮影が終わる前に本の作成を始めたので、中にはまだ変わっていく部分もあったんです。だから映画を作りながら何を本に入れて良いか、何を取らないといけないのか、そうしたことが常に変わっていくなかでこの本を作ったので、その意味では難しかったです。
エドゥアルド・リマさん:
ただ本当にこの本を私達は愛しているんです。これは愛の賜物だと思っているので、読者の方にも一生持っていて欲しいと思います。
マイソン:
最後に、これから公開される新作映画『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』でお2人が手掛けたもので、ここに注目して欲しいという点を教えてください。
エドゥアルド・リマさん:
新しい世界、新しい魔法の世界に行くところを観て頂きたいです。サーカスや 、フランスの魔法省も出てくるんですけど、そういった部分をぜひご覧頂きたいと思います。
ミラフォラ・ミナさん:
私達はスチュアート・クレイグ(映画の美術監督)とも非常に緊密に働いていて、彼が作った世界観、そこに自分達がデザインしたものが輝くように、まさに相乗効果があるようになっています。なので、我々としては、新しい魔法の世界を観て欲しいと思います。ファンの方は、もちろん”ハリー・ポッター” の世界、ホグワーツの学校に戻るというのもとても楽しめるんじゃないかと思います。
お2人:
ぜひ新しい魔法の世界を楽しんでもらいたいと思います。
マイソン:
ありがとうございます!
2018年10月19日取材&TEXT by Myson
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「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 魔法のアーカイブ」
2018年11月22日発売/4,000円(税別)
大型本ハードカバー、マグネット留め、脱着可能の付属品付き/160ページ・オールカラー
ハーパーコリンズ
ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 魔法のアーカイブ (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)
映画“ハリー・ポッター”シリーズ、“ファンタスティック・ビースト”シリーズのグラフィックデザインを手掛けたクリエイティブ・チーム“MinaLima”が ブックデザインを担当。映画に登場する小道具などが、取り外し可能なレプリカとなって付録されている。
「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 レンズと光の魔法― ― メイキング・ブック」
2018年11月22日発売/2,200円(税別)
大型本ハードカバー、ジャケット付き/160ページ・オールカラー
ハーパーコリンズ
ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 レンズと光の魔法――メイキング・ブック (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)
豪華なイラストや写真に加えて、キャストやスタッフへのインタビュー、映画のストーリーが紹介され、このシリーズ最新作がどのように製作されたかの全貌がわかる、映画メイキング本。
「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 アートワークのすべて」
2018年11月22日発売/5,500円(税別)
大型本ハードカバー、ジャケット付き/264ページ・オールカラー
ハーパーコリンズ
ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 アートワークのすべて (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)
アカデミー賞受賞の美術監督スチュアート・クレイグが率いる美術部門とは、いったいどんな世界なのか—。映画デザインの過程で制作された数百に及ぶ絵画やコンセプトスケッチ、複雑な模型、ストーリーボード、絵コンテ、マットペインティングを掲載。デザイナー達の深い見識がコメントとともに明らかにされている。
ハーパーコリンズ公式サイト
『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』
2018年11月23日より全国公開
監督:デイビッド・イェーツ
出演:エディ・レッドメイン/ジョニー・デップ/ジュード・ロウ/エズラ・ミラー/キャサリン・ウォーターストン/ダン・フォグラー/アリソン・スドル
配給:ワーナー・ブラザース映画
ある日、魔法動物学者ニュートは魔法界と人間界を脅かす“黒い魔法使い”グリンデルバルドが逃げ出したことを知る。ニュートはホグワーツの恩師ダンブルドア先生から彼を追うことを託され、仲間や魔法動物達とともにパリへ…。
公式サイト
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