今回は『箱入り息子の恋』の市井監督にインタビュー!本作の撮影秘話や、小説を作った過程、そして監督ご自身について語って頂きました。現在は映画界で活躍されていますが、実は過去にいろいろなことを経験されて今に至るようです。
1976年、富山県生まれ。柄本明主宰の劇団東京乾電池を経てENBUゼミナールに入学し映画製作を学ぶ。その卒業後、自主映画『隼(はやぶさ)』が2006年の第28回ぴあフィルムフェスティバルで、準グランプリと技術賞を受賞。長編2作目の『無防備』は2008年の第30回ぴあフィルムフェスティバルにおいてグランプリと技術賞、Gyao賞を受賞、同年に開催された第13回釜山映画祭のコンペティション部門でグランプリを受賞。同作は翌年のベルリン国際映画祭フォーラム部門にも正式出品された。今日本映画界で最も期待される若手監督の一人である。
2013年12月4日リリース(レンタル同時)
監督・脚本:市井昌秀
出演:星野源/夏帆/平泉成/森山良子/大杉漣/穂のか/ノ俊太郎/竹内都子/古舘寛治/黒木瞳
ポニーキャニオン
天雫健太郎は内気で愛想のない性格で、自宅と職場を行き来するだけの生活を送っていた。両親はそんな彼を心配し、本人の変わりに“代理見合い”に参加することを決意。そこで今井家の一人娘の奈穂子とお見合いするチャンスを掴んでくるが…。
©2013「箱入り息子の恋」製作委員会
公式サイト
関連記事:
■女子104人が回答!「理想のムコ像はどんな人?」アンケート
シャミ:
健太郎と奈穂子のキャスティングは具体的にどのように決まっていったのでしょうか?
市井監督:
プロデューサーと一緒に決めていきました。星野さんに関しては彼が歌う歌詞が、日常の些細なものをすくい取っていることが自分の目指す映画と似ている点、そして風貌や佇まいが健太郎と合致していると思いました。奈穂子は盲目だからといっていじけているとか弱いイメージを払拭したかったんです。だからその障害というものを受け入れた上でも普通の恋愛がしたいというちゃんとした意志を持っている人にしたくて、夏帆さんだったらそういうところが出せると思いました。
シャミ:
初々しいカップルの物語でありつつ、それぞれの家族の物語でもありましたが、作っていくにあたり何か意識されたことはありますか?
市井監督:
撮影中はそれぞれのキャラクターのいろいろな感情をしっかりと汲み取りたいという思いがずっとありました。健太郎の母親が毒づく場面がありますが、そのような心の痛みやシリアスなシーンをより際立たせるために、全編通してユーモアを散りばめました。ほかに意識したことはある1シーンでは笑っている観客もいれば、隣では泣いている観客がいるかも知れないというどっちとも受け取れるシーンを意図的に作ったところがあります。
シャミ:
健太郎のキャラクターに監督ご自身が共感するところや、もし健太郎みたいな人が実際に自分の周りにいたとしたら監督個人としてはどう思われますか?
市井監督:
健太郎というキャラクターには僕自身が投影されていますし、もし実際に周りにいたら友だちになっていると思いますよ。原案の健太郎はジメジメした雰囲気だったのですが、健太郎が自分自身を持っていることや、だんだんと殻が外れていきいろいろと溜まっていたものを吐き出して変貌していくキャラクターにしたことで、僕自身もより彼に共感できるようになりました。それに健太郎を星野さんが演じたことによってただ気持ち悪いわけではなく、良いさじ加減の魅力的な人物になったと思います。
シャミ:
この作品に出てくる“代理見合い”について監督はどう思いますか?
市井監督:
お見合い自体がアジア独特の文化なのに、それを親が代理でというのは本当に日本だけなんでしょうね。僕自身は“代理見合い”肯定派です。結果当人同士がちゃんと一歩踏み出せるのであれば出会い方は何でもありだと思います。
シャミ:
脚本を先に書かれ小説は奥様と共同執筆されているようですが、お二人で話し合いをされながら書いたのでしょうか?
市井監督:
そうです。実は僕だけ単身赴任のような形で東京にいるので、小説を書いたときは妻とメールでやり取りしながら作り上げていきました。それぞれパートは決めていて、僕がある程度構成をして“ここでこういう情報が現れるからこういう伏線で”とか、全体を30個くらいに分けてそこから妻がベースとなる文章を書きました。それを見てさらに僕が推敲し文章を足していきました。そのやり取りをメールでずっと続け、最終的に妻と会って作業したのは締切り直前だけでしたね。
シャミ:
奥様の女性としての意見と監督の男性としての意見とで何か違ったところや良かったところはありましたか?
市井監督:
妻の奈穂子の描き方はすごく繊細で、僕が映画を撮っていたときには気づかなかったような細かい部分を描いてくれました。映像だと観てもらう方に想像を働かせてもらっていたところが、文字にして奈穂子の心情を書いてもらうと男の僕としては非常にドキッとしてしまうところが多かったです。
シャミ:
昔から監督になりたいという夢があったのでしょうか?
市井監督:
僕はもともと芸人“髭男爵”のメンバーだったのですが、映画は芸人のネタの題材にするためと趣味程度に観ているくらいでした。“髭男爵”を脱退して、そこから「映画に出たい」と思ってまずは劇団に入りました。劇団では1年間の研究生をしていましたが、本劇団員には選ばれませんでした。でもそこでようやく自分が映画に出るには自分で映画を作るしかないんだと思って、今の道に入りました。
シャミ:
監督をやっていて一番嬉しい瞬間や楽しい瞬間はどういうときですか?
市井監督:
お客さんに見せるときももちろん嬉しいのですがそれは当然なので、監督をしているときで考えるとクランクアップのときですね。脚本を書き終えたとか、編集を終えて完成とか、実は映画ってどのタイミングで喜んだら良いのかがいまいちわからないんですよね。撮影現場では50〜60人もいるのにいざ完成したときは編集の方と2人きりだったりするので喜ぶタイミングが難しいんです(笑)。
シャミ:
今後はどういう作品を撮りたいと思いますか?
市井監督:
もっとユーモアをどんどん出していきたいと思っていますが、ユーモアを全く出さないシリアスなものをやることもあるかも知れません。でも感情が揺さぶられる映画を常に目指したいです。
シャミ:
最後に本作の見どころとオススメポイントを教えてください。
市井監督:
実は僕も出てます!ぜひ見つけてみてください(笑)!あとは2人の最初のキスシーンで2回キスしているのはアドリブなのでその辺りも注目して観てください。
2013.10.23 取材&TEXT by Shamy