週刊少年サンデーにて絶賛連載中の漫画を映画化した本作は、北海道の農業高校を舞台に酪農と青春を描いています。今回は、高校生ながらも母と幼い妹たち、そして家業を守るために奮闘する男子高校生で、物語のキーマンとも言える駒場一郎役を演じた市川知宏さんにインタビュー。
1991年9月6日生まれ、東京都出身。身長185p。2008年「第21回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを受賞。2009年にドラマ『カイドク』でデビュー後、さまざまなジャンルの映画やドラマに出演。2010年にはドラマ『クローンベイビー』で初主演を果たす。これまでの映画出演作は『書道ガールズ!!わたしたちの甲子園』『恋するナポリタン〜世界で一番おいしい愛され方』『桜蘭高校ホスト部』『銀の匙 Silver Spoon』。そのほか、主演作『好きっていいなよ。』が2014年7月12日公開。
2014年3月7日(土)より全国公開
監督:吉田恵輔
出演:中島健人/広瀬アリス/市川知宏
配給:東宝
進学校に通っていたが挫折してしまった八軒(はちけん)勇吾は、逃げるようにして大蝦夷農業高校に入学。そこに通うのは酪農家の子どもたちがほとんどで同級生たちは将来の夢や目標を明確に持っていた。劣等感を感じつつ実習や部活に励む八軒だったが、これまでの常識を覆されるような日々のなかで悩んだり戸惑いながらも、だんだんと自分らしさを発揮していく。だがようやくこの生活を楽しめるようになってきたと思った頃、八軒に難題が突きつけられる。
公式サイト 映画批評&デート向き映画判定 イイ男セレクション/市川知宏
©2014映画「銀の匙 Silver Spoon」製作委員会
©荒川弘/小学館
マイソン:
まず、この芸能界に入ったきっかけを教えてください。
市川さん:
高校生のときにコンビニで友だちと立ち読みしていたら、JUNONを読んでいた友だちが“ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト”の募集記事を見つけたんです。それで僕に冗談で「受けろよ」って言ってきて、僕は恥ずかしいからと断ったら、「じゃあクラス全員でやろうぜ」となり、男子校でしたが思い出にもなるしすごく楽しそうだなと思って、クラスの皆に「やろうぜ」って言ったんです。でも全然皆やってくれなくて(笑)。で言い出しっぺのグループだった僕ら3人だけがノリで応募しました。それで気づいたら賞を頂いて、事務所に入ってデビューっていうのがきっかけです。
マイソン:
始めは応募する気はなかったけれど、審査を突破するうちに興味は出てきましたか?
市川さん:
仕事に興味が出るというよりは負けたくないと思うようになりました。ベスト40とか30で落ちるのは一番悔しいから、ここまで来たら絶対ベスト10まで残りたいなと。次に10人まで残れたら今度は絶対賞を欲しいなと、芸能界というよりは賞を獲りたいという思いが強かったです。
マイソン:
それでグランプリを獲っちゃうなんてすごいですね!
マイソン:
今回の作品は、ほとんどが酪農家の子どもたちというなかに進学校に通っていた主人公の八軒(はちけん)が入ってきて、他の生徒は将来を見据えているけれど、八軒だけが何も決まっていないという設定でした。市川さんは、今まで自分が入ると思っていなかった芸能界に入られましたが、実際本作で酪農家になろうと将来の進路を決めている駒場というキャラクターを演じてみてどうでしたか?
市川さん:
最初は芸能界に興味がなかったので「やりたい」っていう思いが周りの人よりも絶対に少なかったんですよ。だから最初はドラマなどに出演させてもらっても何をどう頑張ったら良いのかもわからなくて。お芝居のレッスンも受けてはいたんですが、それも上手く出来ずに「キツいなこの世界」ってすごく思いました。それでも経験を重ねていくうちに「このシーンのときこうすれば良かったな」とか「このシーンはちょっと上手くできたな」って思うシーンもだんだん増えてきて、「次はこうしたい、こうしよう」っていうのが芽生えてきました。本当にスローペースでしたけど、だんだんそういう思いになってきました。
マイソン:
じゃあおもしろくなってきたという感じですか?
市川さん:
そうですね。ファンの方に「○○観ました」とか、「頑張ってください」と言われるとそれがすごく励みになるし、周りにも応援してくれる人がいたりすると「頑張んなきゃ」って思います。だから楽しいと思えるようになったのは結構あとからで、最近ようやくですね。
マイソン:
今回の役と自分が似てるなという部分、全然違うなって思う部分はありましたか?
市川さん:
今回僕が演じた駒場一郎は、僕自身とは遠い部分の方が多い気がするんです。駒場は口数は少ないけれど、実は人一倍熱くて優くて人情深い人だから、その生き方がかっこ良いなと思いました。酪農に対してもすごく真剣だし、強い信念を持って取り組んでいるから、自分と照らし合わせるというよりは憧れの方が強かったです。こういう男ってかっこ良いなと思いながら、台本とか原作を読んでいましたね。
マイソン:
絶対に女子にモテるキャラクターですよね(笑)。
市川さん:
かっこ良いですよね。だからああいう男になりたいなって今でも結構思っています。
マイソン:
今回の役作りのために牛の世話をしたり実体験もしたのでしょうか?
市川さん:
しました。その経験は作品にすごく生きたというか、本当に数日間なんですけど、酪農の厳しさや辛さを知ることができました。実際に酪農を体験して、普段スーパーとかに並んでいる牛乳とかがこういう工程で並んでいるんだなと身をもって知ることができて、本当にやって良かったです。
マイソン:
前半で鶏を捕まえるシーンがありましたが、実際はかなり難しいですよね?
市川さん:
あれも結構練習しました。駒場は役柄としてそういうことに慣れているはずなので、最初の酪農体験がなかったらあのシーンはどうなっていたかなって思います。
マイソン:
じゃあ結構今回の役柄を演じたり、実際に酪農体験をしたことで価値観が変わりましたか?
市川さん:
すごく変わりました。豚の屠殺(とさつ)のシーンは、実際に目の前でさばかれるのを見て、食のありがたみを感じました。今でもスーパーとかに並んでいる肉を見ると、そのことを思い出しちゃいます。
マイソン:
普段そんなことまで考えもしませんが、この映画を観て改めて考えさせられました。食べれなくなったりということはなかったですか?
マイソン:
今はどちらかというと不景気で若い方の就職が難しい状況だと思うのですが、本作の酪農家に育った生徒たちはある程度将来の進路が決めやすい状況で恵まれているなと思う反面、逆に八軒のようにまだ何も見つけられていないけれど選択肢があるというのも悪くはないと思います。どちらの立場も良い部分と大変な部分があると思うんですが、ご自身は選べるとしたらどっちが良いですか?
市川さん:
僕はやることがある方が恵まれているって今は思いますね。やっぱり何かやることがある人の方が魅力が溢れてくるというか、何かに必死でやっている人の方が見ていてかっこ良いなって思います。選択肢があるのも良いなって思いますが、何か具体的に取り組んでいる人の方が早い段階で経験を積めるじゃないですか。その時間差で言うと、決まっている方が結果恵まれているなって思いますね。
マイソン:
まだその時点で自分でやりたいかは別として、いろいろな経験が早くできる分、成長できるということですね?
市川さん:
そうですね。考えている時間より取り組んでいる時間の方が有効な気がします。それが失敗でもその失敗は次に生かせるじゃないですか。でも何もしなかったらその失敗すらしないから、次に生かせない。何かやれることがあるならやっちゃった方が良いなって僕は思います。
マイソン:
では最後に映画好き女子に向けて、本作の見どころを一言お願いします。
市川さん:
やっぱり観てくれる人の大半は八軒と同じように酪農をやったことがない人だと思います。なので、八軒目線で彼が自分とは全然違うアキや駒場と接することでどんどん成長する姿を観て、「自分も頑張ろう」って思ってもらえればすごく嬉しいです。あとは食の有り難みなども考えさせられる作品なので、そういう点で何か感じてもらえたら嬉しいです。駒場の離農という大きな出来事があってもくじけない姿勢とか酪農にかける思い、離農が決まってもお母さんに「俺はやれる気がするぜ」と言うシーンは注目してもらいたいですね。
市川さん御自身は「役柄の駒場とは遠い部分が多い」とおっしゃっていましたが、駒場のようにとてもまっすぐで熱い方という印象でした!そんな市川さんが壁にぶつかったときによく読むのが『ニーチェの言葉』という本だそうです。それを読んで寝てスッキリして「また頑張ろう」とすぐに切り替えられるという前向きで熱い市川さんの印象にピッタリの今回の駒場というキャラクター。とてもかっこいいので女子の皆さんがキュンとすること間違いなしです!
2014.1.29 取材&TEXT by Myson