今回は『婚前特急』でスクリーンデビューを果たし、海外でも特集が組まれるなど国内外から注目を集める前田弘二監督にインタビュー。劇場公開2作目となる本作にちなみ、仕事や恋愛に流されていってしまう人や、フィクションのおもしろさについて語って頂きました!
PROFILE
1978年、鹿児島県生まれ。独学で自主映画を制作し、2005年に短編映画『女』『鵜野』がひろしま映像展でグランプリと演技賞を受賞。2006年には『古奈子は男選びが悪い』が第10回水戸短編映像祭でグランプリを受賞。2009年にはドイツ、フランクフルトで開催された日本映画祭“Nippon Connection2009”で、【Koji Maeda Special】と題された特集が組まれるなど国内外で注目を集めている。2011年『婚前特急』で劇場公開デビューを果たし、その高い評価から日本の数々の新人監督賞を受賞した。
2014年12月5日ブルーレイ&DVDリリース(レンタル同時)
監督:前田弘二
出演:榮倉奈々/高梨臨/瀬戸康史/加瀬亮/宇野祥平/中村ゆり/池松壮亮/上原美佐/吉永淳/佐藤みゆき/安田顕/鶴見辰吾
ポニーキャニオン
出版社で働く女性編集者みのりは、成り行きで友人のハワイ挙式の二次会セッティングを引き受ることに。仕事のストレスでイライラ、ふと寄りかかった人はダメ男でグッタリ、さらにどんなに働いても昇進も昇給もない。ならばいっそ取材にかこつけて会社の経費でハワイに飛んでしまえ!ということでハワイへ。みのりは現地で出会ったハワイ在住の茜と意気投合し、彼女に取材のコーディネーターを依頼。二次会の準備をしながら茜と2人で美味しいものを食べたり、ゴージャスなパーティに参加する毎日を過ごすが…。
公式サイト 映画批評&デート向き映画判定
©2014「わたしのハワイの歩きかた」製作委員会
シャミ:
今回はハワイロケをされていますが、現地での撮影はいかがでしたか?ハワイで撮影するのと日本で撮影するのとでは違いはありましたか?
前田監督:
ハワイは素敵な場所が多いので、まずはどの場所を選ぶのかが大変でした。ワイキキのような街もあれば、大自然もある、あとはお金持ちがいる地域もあるので、いろいろな切り口からハワイを見せていけたらと思いました。でもハワイはアメリカなので、いろいろなルールがしっかりとあるので、そのやり方に合わせていかないといけないのが結構ハードでしたね。
シャミ:
ありがとうございます。ではキャラクターについてお聞きしたいのですが、みのりや茜、ほかにもたくさんの女性キャラクターが登場しましたが、女性を演出する上で気を付けたことなどはありますか?
前田監督:
男女で違う面もいっぱいあるんですけど、女性だからこうとか男性だからこうしたっていうのはないです。結局は人によりますよね。それぞれがより魅力的なキャラクターになるよう意識していました。
シャミ:
勉と知哉はそれぞれ仕事に対する姿勢に違いがありましたが、監督ご自身の仕事観と通ずる部分はありますか?
前田監督:
2人がそれぞれ抱えている問題はどちらとも共感できます。でも2人に限らず登場人物みんなに当てはまるんだと思います。例えば、みのりみたいに現状不満なときもあるでしょうし(笑)、成功させるために何でもやってしまう勉の感覚や、いろなんことを否定し続けた結果自分が何者でもなくなってしまった知哉の感覚もわかります。そう思うときは誰にでもあるんじゃないかなって。茜がずっと違う可能性を求めて続けて、もっとほかにいるんじゃないかっていう感覚もわからなくもないです。
シャミ:
確かにそうですね。それぞれのキャラクターが最初は、仕事も恋愛もなんとなくも流されているように見えたのですが、だんだんと答えを見つけていく姿が良いなって思いました。でも世の中にはそのままただ流されてしまう人たちもいると思うんですけど、そういう人たちについてはどう思いますか?
前田監督:
もしかしたら僕も流されているかも知れません(笑)。例えば、みのりが田嶋と恋愛をしていたのかっていうと、微妙じゃないですか。仕事で認められなくて、後輩に「みのりさんがいなかったら仕事が回りませんよ」って慰められて、なんとなく流れでくっついてしまう。でもハワイに行ってそのことを知哉に話してそれをまた慰められて、結局また同じことを繰り返してしまう。そこがみのりの流されている部分なんですよ。だからみのりみたいに自分は自由に生きているって思っているけど、実はどこがで流されてしまっているという人がきっとたくさんいるんだと思います。そうところをこの映画に盛り込んでいけたら良いなって思っていました。
シャミ:
お金とかグリーンカード目的で結婚したいという女性も登場していたのですが、相手の条件ばかりにとらわれる女性をどう思いますか?
前田監督:
正直友達になれる自信はありません(笑)。でもそこは難しいところで、映画としてその人物を観るとすごく楽しいしんです。普段生きてて、言っちゃいけないこと言ったりだとか、やっちゃいけないことをやったりだとか、映画の中で自由に動き回る登場人物の姿にどこかスカッとしますし、全部ひっくるめて可愛くみえます。
シャミ:
じゃあ現実的にいるかいないかというより、フィクションだからこそ描けるおもしろいキャラクターということですか?
前田監督:
共感できるように意識されて作られただけの子だと必ずそのキャラクターは良い子になってしまいますよね。それだとコメディとして話が弾けないんですよ。映画によっては理想的な人物が登場することもありますが、この映画の場合はそういう感じだとおもしろくないかなって。弾けたバカンスというか「遊び倒そう!」みたいなノリを楽しんでもらいたいなと思いました。ちょっと常識外なことをするキャラクターばかりなんですけど、そういうところを描けるのはフィクションの面白さですね。「行ってしまえ!」みたいな気持ちでハワイに行って、そこでさらに問題児が集まって予測がつかないことを巻き起こすっていうのがわくわくします。もちろん、みのりがやけっぱちでハワイに行くのは、仕事を頑張ってるのに認めてもらえないとか、根っこには日頃の不満をいっぱい抱えているからですが。
シャミ:
そういうところを描く方が監督としても作っていて楽しいですか?
前田監督:
みのりが勉に「二番煎じ、三番煎じの仕事続けてさ、なんとか生活できるからまあいいかってなりたいの!」とまくしたてるシーンがあるのですが、勉に「もっと自分のこと考えた方が良いよ」って言い返されて何も言えなくなったり。僕も撮っててドキッときました。
シャミ:
では最後にトーキョー女子映画部のユーザーに向けて本作のオススメコメントをお願いします。
前田監督:
みのりの気持ちに乗っかってじゃないですけど、ストレス発散として観て、スカッとしてもらいたいですね。あとはハワイのいろいろな景色とか空気感で爽快な気持ちになってくれたらと思います。ぜひ観てください。
2014.11.10 取材&TEXT by Shamy