シリーズ累計発行部数100万部を突破したスパイ・サスペンス小説『ジョーカー・ゲーム』の人気エピソードを厳選し、ストーリーを再構築して映画化した本作は、外国人キャスト、海外スタッフも参加、国内だけでなく、インドネシアのバタム島での撮影も行い、エキゾチックな世界観も見どころとなっています。今回は、そんな本作でメガホンを執った入江悠監督にインタビュー!
PROFILE
1979年11月25日生まれ、神奈川県出身。日本大学藝術学部映画学科在学中の作品から映画祭での注目を集める。2009年、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアターコンペティション部門で『SR サイタマノラッパー』がグランプリを受賞。第38回モントリオール・ヌーヴォ国際映画祭で招待上映されるほか、ミニシアター系の劇場で数々の記録を更新。『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』で高崎映画祭若手監督グランプリ受賞、2010年に第50回日本映画監督協会新人賞を受賞。ほか、これまでの監督作は『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』『日々ロック』など。
1月31日より全国公開
監督:入江悠
出演:亀梨和也 深田恭子
小澤征悦 小出恵介 山本浩司 渋川清彦 田口浩正 光石研 嶋田久作
伊勢谷友介
配給:東宝
舞台は第二次世界大戦前夜。軍の訓練中に上官の命に背いた1人の青年は、極刑が執行される直前に謎の男から救いの手を差し伸べられ、交換条件に男が設立した秘密組織“D機関”の一員としてスパイになることを要求される。彼は過酷で奇妙な訓練を経て、“嘉藤(かとう)”という偽名で世界を揺るがす機密文書“ブラックノート”を奪取するという極秘のミッションに就くのだが…。
公式サイト 映画批評&デート向き映画判定
© 2015「ジョーカー・ゲーム」製作委員会
マイソン:
ご自身のオリジナル脚本で撮る場合と、ほかの方が脚本を担当された場合とで、それぞれのおもしろみはどういったところにありますか?
入江監督:
自分で脚本を書く場合は、自分の得意なこと、自分の撮りたいことを書くんですけど、ほかの方が書いた脚本の場合は自分の発想にはないものが出てくるので、それをどうやって料理しようかっていう楽しみが多いですね。
マイソン:
今回だとどの辺のシーンがそのポイントに当てはまりますか?
入江監督:
亀梨くんと深田さんのラブシーンというか、牛舎のなかでイチャイチャするシーンとかは、自分だったら書けないなって思います。ああいう男女のやり取りって僕は照れちゃってなかなか書けないんですけど、渡辺雄介さんの脚本にはあったので、これをどうやって撮ろうかって考えました。
マイソン:
これまでは日常を描いた作品の方が多かったと思いますが、今回のスパイもののような非日常を描く上で楽しかったこと、逆に大変だったことはどんなところですか?
入江監督:
楽しいことの方が多いんですけど、俳優さんが大変ですかね。例えば伊勢谷さんの役は、スパイ組織のトップに立つ人としてすごくグローバルな視点を持っていないといけないですし、ただ者ではないっていうか、そういう役を演じるのは難しいと思うんですよね。伊勢谷さんだからこそできた部分があって、そういう意味ではキャスティングが結構大きいです。日常的な題材だとそれこそ素人の方でも良いというか、『SR サイタマノラッパー』とか、本当に当時売れていないような俳優でやって、それこそ素人のおじさんおばさんとかにも出てもらったんですけど、やっぱりこういうちょっと非日常に突入していく題材だとそれなりのスキルを持った俳優さんでないとできませんよね。
マイソン:
今回、海外ロケをされたり、台詞も何カ国語か出てきましたが、俳優さんはどのくらい準備されたのでしょうか?
入江監督:
一番多かったのは亀梨くんですね。中国語と英語のセリフが結構あったので、先生も付いて相当練習してもらいました。ただ亀梨くんに関しては語学以外にも訓練することがいっぱいあったので、直前はやることがいっぱいで大変だと言っていました。
マイソン:
物語は事実じゃないにしても第二次世界大戦っていう背景もあるし、スパイについての事前調査とか、どの辺まで事実を取り入れて、どこからがフィクションっていうバランスはどうやって取られたんですか?
入江監督:
基本的には全部調べられることは調べようと思いました。もちろん当時の車、衣装とか全て完璧に映像で再現するのは難しいんですけど、知らないと嘘は付けないなと思って、脚本ができていよいよ撮影に入る段階、半年前くらいからずっと調べていました。
マイソン:
訓練のシーンなどは実際のスパイの訓練を参考にされているんですか?
入江監督:
そうですね。実際にああいうことをしていますし、もっと膨大な訓練をしているはずなんですけど、映画ではその一部だけを切り取って見せています。
マイソン:
本作に限らずスパイ映画では絶対に女性のハニートラップがありますが、実際のスパイの訓練のなかにそういうことに注意しろっていうのは入っていないのかなっていつも思うんですが(笑)。
入江監督:
入ってますよ。逆に自分がハニートラップをかける側の勉強もします。
マイソン:
なるほど!
入江監督:
昭和の戦時中に実在した陸軍中野学校っていう組織だと、男性が女装する訓練とかもありますからね。ひたすら思いつくことは全部やっているんですよね。
マイソン:
おもしろいですね!街で亀梨さんが変身していくシーンはクスっと笑える変装もありましたね。
入江監督:
その辺はかなり楽しみながらやりました。リアルにやるところとちょっと笑いの要素もあって楽しく見えるところが、この映画ならではなのかなって思います。
マイソン:
アクションシーンを観ていて、亀梨さんの運動能力の高さがうかがえましたが、今回ご一緒されて俳優さんとして感心された部分とか、普段見ている彼と印象が変わったところはありましたか?
入江監督:
勉強熱心だっていうのはすごく感じました。今回はスパイとして、語学から始まって、いろいろとやることがあったんですが、吸収するのに本当に努力を惜しまないというか、誰よりも勉強熱心ですごい吸収力でした。アクションとかも現場に行って、実際の街並のなかで「やっぱりこういう風にしよう」と変更してもすぐ対応できて、ちゃんと準備をしてきているんですよね。役になるための努力に関しては本当に尊敬に値します。
マイソン:
監督が映画監督を目指すきっかけになった映画、幼い頃に観て衝撃を受けた映画はありますか?
入江監督:
子どものときに観てすごいなって思ったのは『ターミネーター2』です。おじさんに連れられて映画館で観て、すごく興奮した記憶があります。
マイソン:
洋画から影響を受けられて、今回もちょっと洋画っぽい雰囲気があったりしますが、今後は洋画も作りたいですか?
入江監督:
やっぱりハリウッド映画を撮りたいっていうのはありますね。大きくてすごく遠い夢ですけど、未だにハリウッド映画ってすごいなって思うし、どんどん進化していますしね。もちろん日本映画も好きなので邦画も撮りたいですけど、海外で撮りたいっていうのは大きいです。向こうのスタッフって、「もっとおもしろいもの作ろうぜ」とか、「こんなもんで良いのか!」っていうことをダイレクトに表現してくるので、すごく鍛えられるというか、違う文化でも撮りたいなって思います。
マイソン:
楽しみですね!では、最後に映画好き女子に向けて本作の見どころをお願いします。
入江監督:
「亀梨くん史上、一番かっこ良い亀梨くん」、そして日本映画のなかで観たことがないくらいかっこ良いヒーローを作ろうと思って撮ったので、ぜひかっこ良い主人公を観に来て欲しいなって思います。
マイソン:
伊勢谷さんもかっこ良いですしね。
入江監督:
そうですね。紅一点の深田さん以外はみんな男で、本当に男の色気が溢れた映画にしたいなって思っていたので。海外の俳優チームも個性派揃いですし。
マイソン:
じゃあ男目線では男のかっこ良さを、女子目線では男の色気をということですね!
入江監督:
見つけて頂けたら嬉しいなって思います。
2015.1.8 取材&TEXT by Myson