今回は、実在した老舗映画館 “大黒座”を舞台にした映画『シネマの天使』に出演の藤原令子さん、本郷奏多さんにインタビューさせて頂きました。シネコン世代を代表して本作に出演したというお二人に、名画座の時代からシネコンが増えた現代の移り変わりについてどう感じているのか聞いてみました。
PROFILE
藤原令子
1994年8月16日、岡山県倉敷市生まれ。2010年に24時間テレビスペシャルドラマ『みぽりんのえくぼ』に出演し女優デビュー。その後、多くの映画、TVドラマ、CMなどに出演。主な出演作に、映画『今日、恋をはじめます』『ももいろそらを』、TVドラマ『金田一少年の事件簿N(neo)』『アリスの棘』『MOZU』『デスノート』などがある。映画『シネマの天使』には、物語の舞台に近い倉敷市出身ということで、時川英之監督より主人公の明日香役に抜擢され、映画初主演を飾った。
本郷奏多
1990年11月15日、宮城県生まれ。2002年の映画『リターナー』で俳優デビューを果たす。その後、映画やドラマで活躍し、2007年の映画『HINOKIO』で初主演を飾る。そのほか主な出演作に、映画『テニスの王子様』『GANTZ』『進撃の巨人』、TVドラマ『なぞの転校生』『弱くても勝てます〜青志先生とへっぽこ高校球児の野望〜』『アカギ』などがある。映画『シネマの天使』では、主人公の幼馴染みで映画監督を目指すアキラ役を好演。
シャミ:
本作は、映画を愛する人たちの思いがたくさん詰まった作品ですが、お二人は俳優としてこの映画に関わる上で、どんな思いで演じましたか?
藤原令子さん:
私は監督に「藤原さんのそのままの感覚でお芝居をして」と言われていたので、本当にそのままシネコン世代の若者代表として明日香を演じました。私自身も撮影に入った頃は明日香と同じように、「皆、どうして大黒座が終わることにこんなに必死になっているんだろう?」と感じていたので、彼女の気持ちがよくわかりました。でも撮影が進むに連れ、私も明日香と一緒に大黒座に対する気持ちが変化していきました。
シャミ:
では、明日香を演じてみてご自身のなかで一番大きく影響を受けたのはどんなところですか?
藤原令子さん:
やはり大黒座が本物の場所であったことが、私に一番影響したと思います。実際に大黒座に立って、皆さんが壁に書いた大黒座へのメッセージを見たり、いろいろな方にお話を聞いたことが一番私自身の変化に繋がりました。大黒座は本当にもうなくなってしまいましたが(2014年8月に閉館)、この映画に出演してあの場所で演技ができたことは、本当に良かったと感じています。
シャミ:
本郷さんは、映画を撮りたいという夢を持つアキラに共感できた部分はありましたか?
本郷奏多さん:
実はあまり共感した部分はないんです(笑)。僕の場合は、何かしたいと思ったらそれに対してちゃんと考えて勉強をして、すぐに行動に移すタイプなんです。でもアキラの場合は真逆のタイプで、なかなか映画を撮らないので「そんなに考えていないで、早く映画を撮りなよ!」って思っていました(笑)。
シャミ:
本当に真逆なんですね(笑)。そういうご自身とは正反対のキャラクターを演じることは難しくありませんでしたか?
本郷奏多さん:
確かに反対の性格のキャラクターですが、特にやりづらさは感じていません。僕としては、ゆとり世代を代表する若者キャラクターとしてアキラを演じました。
シャミ:
昔は大黒座のような名画座がたくさんありましたが、今はシネコンがたくさん増え、またインターネットを介していろいろな端末で映画を楽しめる時代へと変化してきました。お二人はそういった映画や映画館の時代の移り変わりについてどう感じていますか?
藤原令子さん:
名画座がたくさんあった時代と、シネコンがたくさんある現代とでどっちが良いのかは、わかりません。今はすごく便利になったことで、映画を観る機会が増えた人も多いと思います。でも今の人達には、昔の人達みたいに映画を映画館で観ようという情熱があるのかな?とも思います。私は、今回の映画を通して、本来映画は今よりももっと愛されていたと感じました。私たち役者からすると、昔のように情熱を持って映画を観てくださる方が多かった時代の方が良かったのかなって思います。
シャミ:
なるほど〜。やはり今回の映画に出演する前と後とでは、映画や映画館に対する価値観は変わりましたか?
藤原令子さん:
全然違います。家から映画館が遠かったこともあり、家で映画を観ることの方が多かったんです。でも今回の映画に出演してからは、なるべく映画館で映画を観たいなって思いました。
シャミ:
ありがとうございます。本郷さんはいかがですか?
本郷奏多さん:
僕自身は合理主義なので、DVDやインターネットで映画が観られるのはすごく良いことだと思いますし、映画はたくさんの方の目に触れる機会が多い方が絶対に良いと思います。でも映画館で映画を観てもらうことの一番のメリットは、ながら観をされないことだと思います。それに役者としては、映画館で映画を観てもらえることで、細かいところまで目を放さずに観て頂けるのが嬉しいですね。もしかすると今は、そうやって映画を細かいところまで楽しむという意識がちょっとずつ薄れている傾向にあるのかも知れませんね。映画に出演する側の立場としては、それは寂しいことです。でもプロデューサー的な立場の人だと、映画をできるだけ多くの方に観てもらえるほうが良いと思うので、本当に作り手の立場によっても、映画をどう観てもらいたいのかが違うと思います。
シャミ:
では本郷さんは、今回出演してみて映画や映画館に対する価値観が変わった部分はありますか?
本郷奏多さん:
やっぱり映画館ってすごく愛されていたものなんだなっていうのを肌で感じられて、僕のなかにも響いた部分がありました。そういう意味では、本当に良い映画になったと思っていますし、皆さんにも響くところがあると思います。
2015年10月13日取材&TEXT by Shamy
2015年10月31日広島先行公開、11月7日より全国公開
監督:時川英之
出演:藤原令子/本郷奏多/阿藤快/岡崎二朗/安井順平/及川奈央/小林克也(声の出演)/ミッキー・カーチス/石田えり
配給:東京テアトル
老舗映画館の大黒座が閉館することになった。そこで働き始めたばかりの新入社員の明日香は、なぜお客さんや従業員達が大黒座の閉館を名残惜しむのかがピンときていなかった。そんなある夜、館内を見回っていた明日香は謎の老人と出会う。そしてついに大黒座の閉館日、スクリーンに最後の映画が映し出されると…。
公式サイト 映画批評&デート向き映画判定
イイ男セレクション/本郷奏多
©2015 シネマの天使製作委員会