映画のお仕事は、監督・女優以外にも数え切れないほどの種類があります。プロデューサー、照明、音響、衣装、メイク、宣伝、劇場営業…。映画を作る現場から、映画をユーザーに届けるところまで、さまざまな現場で働く女性にお会いする機会があれば、お話を聞いて、現場の状況などを掲載できればと思います。
★【お蔵出し映画祭】とは?
日本映画界では年間に約400 本もの映画が公開されています。しかしその一方で、諸事情により”お蔵入り”となってしまった劇場公開されていない映画も多々存在します。そんな劇場未公開映画の中から優れた作品を発掘するのが【お蔵出し映画祭】です。 なお今年(2013年)は9月21日〜23日の期間に開催されます!
第3回目となる本映画祭には今回は計31本の作品が届き現在選考を行っています。コンペティション部門のほかに、未DVD 化のなかなか観るチャンスのない過去の名作や地元にちなんだ作品などが特別上映されます。
ぜひこの機会にお蔵入りしてしまった名作が日の目を見る瞬間を見届けてみてはいかがでしょう?
【お蔵出し映画祭2013】
開催期間:
2013年9月21日(土)〜23日(月・祝)
会場:
シネマ尾道、シネマモード(福山)他
主催: お蔵出し映画祭実行委員会
公式サイトはこちら
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今回は壮絶な実話が描かれた『しあわせカモン』で母親の芙美江役を演じた鈴木砂羽さんにインタビュー!劇中では明るく元気でかわいらしい一面や薬物中毒になってしまい苦しむという多面的な女性を見事に演じています。今回はシリアスな撮影シーンでの裏話や今後演じてみたい役柄についてなど語って頂きました。
『愛の新世界』『帝都物語外伝』『極道の妻たち 赫い絆』『日本一短い「母」への手紙』『東京日和』『セカンドチャンス』『スペーストラベラーズ』『すずらん』『カラフル』『ウォーターボーイズ』『連弾』『昭和歌謡大全集』『火火』『ジャンプ』『いつか読書する日』『愛してよ』『スクラップヘブン』『力道山』『LOFT ロフト』『赤い文化住宅の初子』『憑神』『サイドカーに犬』『遠くの空に消えた』『HERO』『青空のルーレット』『観察』『オリヲン座からの招待状』『ペルソナ』『子猫の涙』『相棒〜劇場版〜』『闇の子供たち』『同窓会』『劔岳 点の記』 『ぼくとママの黄色い自転車』『なくもんか』『ホテルチェルシー』『スープオペラ』『ゴースト』『毎日かあさん』『わさお』『夢売る二人』
静岡県浜松市出身。1994年『愛の新世界』主演で映画デビューし、ブルーリボン新人賞、キネマ旬報新人賞など多くの映画賞を受賞。その後も映画、ドラマ、舞台などで活躍中。主な映画出演作は『遠くの空に消えた』『憑神』『相棒—劇場版—』『わさお』『夢売るふたり』、ドラマNHK「だんだん」「江〜姫たちの戦国〜」「ビターシュガー」NTV「トッカン」EX「おトメさん」TBS「夫のカノジョ」など。
マイソン:
この役のどの辺を一番おもしろく感じてこの役を演じたいと思ったのでしょうか?
鈴木砂羽さん:
このお母さんは普通のお母さんではなくて、パワフルでしなやかでファンキーなところがあるお母さんでした。そういう役柄を演じてみたいなと素直に思いました。
マイソン:
芙美江さんという女性はかわいい母親だけど、息子の恋人のような存在にも見えるなと思いました。この役を演じる上で心掛けたことはありますか?
鈴木砂羽さん:
1人の女性を演じるにあたり1つの感情なんてあり得ないので、いろんな表情や感情をカラフルに見せていく演技を常に心掛けています。もちろん母親の顔もあるんですけど、恋人に見えるときもあるし、子どもに見えるときもあるしっていう扶美江さんを演じたいと思ったので、実際にそう見えたのかと思います。
私の友だちで息子さんがいるお母さんを見ていると、抱っこしている息子が「ママ、ママ、ママ」と言っている姿を目の当たりにしたら、男の子の最初の恋人はお母さんなんだなと思いました。一度母と息子という関係を築くとやはり離れがたいものだと思うので、そういう部分を今回の演技に入れたいなと思いました。
マイソン:
女性として扶美江に共感するところはありますか?
鈴木砂羽さん:
やはり息子を一途に好きなところです。私も息子が生まれたらたぶん大事にしてかわいくてしょうがないんじゃないかなと思います。そういうところも想像しながら今回の演技に少し入れました。
マイソン:
息子が「お薬、お薬」と言っていたシーンが印象的で、子どもなりに考えてお母さんを何とかしてあげたいという思いがすごく「お薬」という言葉に表れていたように思います。そのシーンは現場でこういう表現をしようとか何かありましたか?
鈴木砂羽さん:
「お薬、お薬!」って息子が一生懸命に言っていて、その手前で私はギャーギャー言いながら暴れていたので、現場では「これは酷いね」と実はみんなでゲラゲラ笑っていたんです。本当に修羅場のシーンだったのですが、そういう極限状態を演じていると、役者さんたちもみんなおかしくなってきちゃって笑えてしまったんだと思います。
マイソン:
普段本を読んだり映画を観たときにこの女性を演じてみたいと思うことはありますか?また共感する女性キャラクターはどんな人が多いですか?
鈴木砂羽さん:
それはその都度かも知れないですね。恋愛に没頭しているときは恋愛の映画を撮りたいなって思ったり、撮ってもらいたいなって思いました。この先母親になったらお母さん役をやりたいってもっと思うと思います。あと最近は母親と娘の関係をよく考えることがあって、60〜70代くらいの母と娘の話で娘役をやってみたいなと思います。以前バラエティ番組に出演したときに親離れについて話す機会があったんです。そのときに「私はなかなか親離れの時期が難しくて、結婚を期にやっとお母さんから少し卒業できたと思う」と話しました。そしたらものすごく反響があって、私の話に共感するという方がたくさんいらっしゃいました。そのときにやっぱり母と娘というのは誰にとっても永遠にテーマなんだなって思いました。母親って自分にとって何だろうとか、娘って私にとって何だろうとか考えている方が結構いらっしゃると思うんですよね。だから今後はそういうテーマに取り組んでいけたらなと思います。
マイソン:
では今回母親役を演じてみてお母さんの側の視点で何かわかったことはありましたか?
鈴木砂羽さん:
いや私には母親目線は全然わかりませんでした。けど息子は母親にとってやっぱり特別なんじゃないかなと思います。娘とは全然違うものってお母さんのなかでは分類されているんだと思います。
マイソン:
この物語のお母さんは若くして亡くなられているのですがもし短い人生だとわかっていたら何か絶対にやっておきたいことはありますか?
鈴木砂羽さん:
ないんですよね〜。そういうところが愚かなんです。その日その日を一生懸命に生きるとか考えずに、時間は永遠にあると思っているところがあるので疲れていたら「休みの日を1日寝て過ごしても良いや、それが体に良いことだ」と思うんです。けどもし本当に命があまりないって聞いたら寝ている場合じゃないぞとなって、あそこに行きたい、これも見たい、これも食べたいって思うかも知れません。けど日々過ごしているといつも「いいや、1日くらい」って思っちゃうんですよね(笑)。例え47年間しか生きられなくても、疲れたなら寝れば良いと私は思うので、無理に何かしようとはしないですね。タイミングによって見られるものは見られるし、見られないものは見られないし、チャンスがある人にはあるし、ない人にはないし。けどチャンスがあるってことはそれだけ努力の貯金をしていたからこそ今こういう風にいられるということなのでありがたいと思います。
マイソン:
なんだか砂羽さんらしいですね!やはり女優というお仕事が好きだから毎日を楽しく過ごせるのだと思いますか?
鈴木砂羽さん:
女優に限らず何かしら表現をするという仕事が楽しいです。私が思ったことを声にしたり形にしたり、感情を表すことが私のお仕事の使命で、生きていく上での使命だと思います。それが潰えない限りは時間を有効に使いたいなとは思うんですけど、疲れたらやっぱり休みたくて、その辺は自分に甘いんですよね(笑)。
マイソン:
表現するというところで監督をやってみたいと思いますか?
鈴木砂羽さん:
それは常日頃考えます。自分が思っていることをかたちにするにはただ自分が1個の駒ではなく、自分がそうさせる側になったらどうなるのかなと最近よく考えます。おもしろいことを考えたときに自分がこうしたいあぁしたいと指示を出すとどうなるのかなと考えたりすることもあります。
2013年8月1日取材
2013年9月11日(水)ブルーレイ&DVDリリース
(9月4日よりレンタル)
しあわせカモン メモリアル版 (2枚組) 【Blu-ray】
監督:中村大哉
出演:鈴木砂羽/石垣佑磨/今井雅之/沢田亜矢子/大和田伸也/高橋賢人/高橋至恩/三浦誠己/浅野和之/大石吾朗/風祭ゆき/丹波義隆
発売元:TCエンタテインメント
2009年岩手県で先行上映され1万4千人もの観客を動員し“お蔵出し映画祭2011”でグランプリを受賞。故郷の岩手を中心にカリスマ的人気を誇るミュージシャン松本哲也の母親との半生が描かれた実話で、本作では母親役を鈴木砂羽が演じ、息子の哲也役を石垣佑磨が演じている。
©2012 TCエンタテインメント