映画のお仕事は、監督・女優以外にも数え切れないほどの種類があります。プロデューサー、照明、音響、衣装、メイク、宣伝、劇場営業…。映画を作る現場から、映画をユーザーに届けるところまで、さまざまな現場で働く女性にお会いする機会があれば、お話を聞いて、現場の状況などを掲載できればと思います。
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日本と台湾合作の自転車ロードムービー『南風』主演、黒川芽以さんにインタビューさせて頂きました。この撮影が終わってクロスバイクを買ったという黒川さん。私たちも観たら自転車に乗って旅に出たくなるようなさわやかな映画です。今回ほとんど台湾での撮影だったそうですが、台湾の撮影はどうだったのでしょうか?
『グミ・チョコレート・パイン』『山のあなた 徳市の恋』『ボーイズ・オン・ザ・ラン』『僕たちは世界を変えることができない。』『ガール』『横道世之介』『ぼくたちの家族』『KILLERS』『ねこにみかん』『福福荘の福ちゃん』『ドライブイン蒲生』など。
1987年5月13日生まれ、東京都出身。1993年、6歳のときにCMデビュー。以降、多くの映画、ドラマ、舞台で活躍。
マイソン:
台湾での撮影は、日本と違って大変なことはありましたか?
黒川芽以さん:
もちろんです(笑)!かなり大変でした。こういう取材でよく「苦労した点はありますか?」って聞かれますが、「大変でした」って言うのは初めてっていうくらい、今までで3本の指に入るくらい大変でした。
マイソン:
どういったところが大変でしたか?
黒川芽以さん:
今回は監督やカメラマンさんは日本人でしたが、日本人の共演者が少なく、ゴウ役の郭智博さんとの撮影は数日だけで役者っていう部門ではほぼ一人だったので、約2週間の撮影ほとんどが孤独でした。トントン役のテレサちゃんとユウ役のコウさんの2人は以前共演したことがあって既に仲が良く、2人が台湾語で楽しそうにしゃべっていて、私は2人が何を話しているかわからないっていう状況が映画のなかの藍子そのままでした(笑)。今回ほとんど順撮り(ストーリーの流れと同じ順番で撮影すること)だったので、リアル台湾旅っていう感じでしたが、どんどん疲れていく様子もそのまま顔とか映像からにじみ出ています。でもそういうリアルなところが逆に気に入っています。
マイソン:
実際にどれくらい自転車を漕いで移動したんですか?体力的にはどうでしたか?
黒川芽以さん:
撮影は、ホテル3ヵ所くらい回って、実際に行くルートを辿って撮影しました。もちろん全部のルートを自転車で走ったわけではありませんが、いろんなアングルで撮ったので共演者は自転車と言ってもいいくらい、結構走るときは走りましたね。あと最初の方で、バイクだらけの道路を「え!ここ行くんですか?」と思いつつ本当に現地の方にまみれてママチャリで渡るシーンがあるのですが、あそこを渡る日本人ってそうそういないので、現地の方はみんなちょっと引いていたと思います。あのゲリラ感は相当おもしろい画になっていると思います。
マイソン:
景色がとてもキレイで、食べ物も美味しそうでしたが、ここは一番良かったというところはありますか?
黒川芽以さん:
そんなに空き時間はなかったのですが、マンゴーのかき氷が本当に美味しくて、見つけたら即食べてました(笑)。
マイソン:
台湾では当たり前に売っているものなんですか?
黒川芽以さん:
結構あるんですよ。フレッシュジュースのお店や、かき氷屋さん、マッサージ屋さんがとにかくいっぱいあって、マッサージは日本の半額くらいでたっぷりやってくれます。台湾に行ったらマンゴーかき氷を食べてマッサージですね(笑)。それがかなりオススメですね。
マイソン:
どこに入ってもそんなに外れないですか?
黒川芽以さん:
プライベートで海外に行ったりもするんですが、混んでるところや地元の人がよく行っているようなお店をなるべく選ぶようにしています。マッサージだとホテルに近いところで日本語表記のお店が結構あるので、言葉を話せなくても安心して受けられます。
マイソン:
コツを掴まれてますね!
黒川芽以さん:
そうですね。藍子じゃないですが、一人でも強く生きねばと思いながら撮影していたので。
マイソン:
そうですよね。劇中では台湾の方と英語混じりで会話されていましたが、現場では共演者の方とはどうやって会話していたんですか?
黒川芽以さん:
もうこの映画のままなんですよ。2人は英語が話せるし、テレサちゃんは日本語にも興味があるようで、大学で日本語をとっているらしいです。なので“かわいい”とかもともと単語を少しだけ知っていて、急にアドリブを入れたり、向こうの方は結構自由なんですよね(笑)。そこもだいぶ度肝を抜かれました。お互いに言葉がわからない芝居だから、一応ある程度合わせないと、1個フレーズが間に増えただけで順番が違っちゃいます。だからセリフを覚えるときもすごく難しくて、何と読むのかわからない状態でセリフを聞いて次は自分の番だっていう感じなんですが、遠慮なくアドリブを入れてくるので、そこもかなりトントンらしかったなって思います(笑)。でもそれが逆におもしろいということで使った部分もあって、もとの台本よりも日本語が多くなったのはテレサちゃんだったからこそっていうのがあります。
マイソン:
恋も仕事も上手くいかずに悩んでいるキャラクターでしたが、ご自身が似ているなと思った部分、逆に全く違うなっていう部分、キャラクターに一番共感できた部分を教えてください。
黒川芽以さん:
撮影に入る前に監督とこの年代の気持ちとかも話したので余計に等身大に近づけてくれたんだと思いますが、なんだか似過ぎちゃって怖かったですね。逆に似ていないところってどこなんだろうっていうくらいです。でも、台湾に行って現場に入ってからの空気感は「これはこのまま使えるな」って思いました。台湾で一人で過ごす時間とかも誰かに相談できるわけでもなく、もうこれを利用しようってすぐに思って、それで夜に台湾の街を歩いたりして、こういう時間が藍子にもあったんだろうなって思いながら過ごしていましたね。
マイソン:
普段は自分と違う役の方が役作りがしやすいとか、そういうことはありますか?
黒川芽以さん:
自分が経験してきたこととか、自分の人格みたいなものは奥の方にしまったとしても、どこかで出ちゃうときってあると思うんです。だからその場の空気感とかを全部吸い取って、内から出ちゃうものを出すっていう、特に今回はそれで良いんだろうなって思えました。どっちがやりやすいのかわかりませんが、全く別のものになってくるとそれはそれでおもしろいですよね。どんな風に変われるのか、どこまで自分とは違うキャラクターになりきれるのかっていうチャレンジがおもしろいと思います。
マイソン:
今回トントンがモデルに憧れて夢を追いかけるというキャラクターでしたが、夢を持っている方、芸能界に入りたい、女優になりたいっていう方たちにアドバイスをお願いします。
黒川芽以さん:
もし夢があるんだったらそれはぜひ追い続けて欲しいです。やりたいことがわからないのが一番辛いと思うんです。夢があるだけまだ良いというか。だからもし夢がないとか、やりたいことが見つからない場合は、なるべく人と関わっていろいろな人と話をしてみたら良いと思います。どこでどのタイミングで自分が「やってみたい」って思うかわからないので、必死に夢を探すというより何かが見つかるかも知れないくらいの気持ちで行動してみて欲しいです。芸能界の仕事を夢見ている人、特に女の子に対してですが、例えば会社でもし何か商品を作ってダメ出しされてもそれは商品に対してなので1クッション挟まりますが、私たちの仕事は全部自分にダイレクトにきちゃうので、そこが精神的に結構大変なんです。それでも負けないぞという人たちが残っている世界なのでかなり覚悟が必要ですが、私はこの仕事が本当に大好きです。定年がないので辞めるも続けるも自分次第なので、ぜひ頑張って欲しいなって思います。…すごく真面目に話しちゃいました(笑)。
マイソン:
ありがとうございます!では最後に一言、本作の女子目線での楽しみ方をお願いします。
黒川芽以さん:
やっぱり舞台が台湾なのでマッサージがあったり、美味しいものがあったり女子全開じゃないですか(笑)。これからどんどん台湾人気は上昇すると思いますし、そういうビューティー目線でも観られると思います。主人公が恋人とか仕事とか自分の周りにあった全てを一度失くした状態で始まるロードムービーで、何か迷っていたり、失って気づくものってやっぱりあったりもするので、モヤモヤしているときに観るのも良いし、普通のテンションのときに観ても「キレイだな、楽しいな、旅してみたいな」って思える映画でもあります。観るときの状態によって感じ方がいろいろあると思うので、今観てもらって、5、6年後にもう1回観てもらって、その感じ方の違いも楽しんで欲しいです。自分でもそう思っていて、これをまた何年後かに観るのを楽しみにしています。
2014年6月20日取材
2014年7月12日よりシネマート新宿ほか全国順次公開
監督:萩生田宏治
出演:黒川芽以/テレサ・チー/郭智博/コウ・ガ
配給:ビターズ・エンド
台湾に雑誌の取材でやってきた藍子。自転車で台北から台湾中部の日月潭まで向かい、最後にインタビューをする予定だが、ガイドを頼もうとアテにしていた現地に住む日本人の先輩は妊娠中。たまたま自転車屋の娘トントンが名乗り出て、仕方なく彼女にガイドをしてもらうことに。台湾語がわからずトントンや現地の人たちとの会話に苦労していた藍子だったが、彼らとの交流を通して自分を見つめ直していく。
500kmに渡る台湾サイクリングロケでは、ノスタルジックな雰囲気が人気の「九彬(キューフン)」、台湾のベニス「淡水(タンシュエ)」、台湾三大観光地のひとつで風光明媚な景色が楽しめる湖「日月潭(リーユエタン)」。サイクリストの聖地と言われる愛媛県しまなみ海道などが登場。
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