映画のお仕事は、監督・女優以外にも数え切れないほどの種類があります。プロデューサー、照明、音響、衣装、メイク、宣伝、劇場営業…。映画を作る現場から、映画をユーザーに届けるところまで、さまざまな現場で働く女性にお会いする機会があれば、お話を聞いて、現場の状況などを掲載できればと思います。
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<PROFILE>
1972年8月24日、アメリカ生まれ。脚本、製作、監督、インディペンデント映画の配給を手掛けている。これまで14年以上(2015年現在)映画製作と宣伝に携わり、1999年に「DVAメディア+マーケティング」を設立。 2008年のヒップ・ホップドキュメンタリー『This Is The Life』で長編映画監督デビューし、本作はトロント国際映画祭、ロサンゼルス映画祭、シアトル国際映画祭で観客賞を受賞。2010年には、映画『I Will Follow』で、脚本、製作、監督を担当し、アフリカン・アメリカン映画批評家協会賞の脚本賞を受賞。2012年の『Middle of Nowhere』では、サンダンス映画祭の監督賞や、インディペンデント・スピリット賞のジョン・カサヴェテス賞、アフリカン・アメリカン映画批評家協会賞の脚本賞・音楽賞・インディペンデント映画賞などを受賞。また2013年には、プラダとタッグを組み『The door』と『Say Yes』の監督を担当した。そして2014年に、マーティン・ルーサー・キングJr.の実話を描いた『グローリー/明日への行進』の監督と製作総指揮を担当。
シャミ:
キング牧師の物語は、今まで映画化されてこなかったのですが、今回初めての映画化で監督することとなりプレッシャーはありましたか? また、本作を通して伝えたかったことはどんなことですか?
エヴァ・デュヴァネイ監督:
誰も作ったことがなかった作品ですし、プレッシャーはないと言ったらウソになりますね。でも誰も作ったことがないからこそ、比べる対象がない分、オープンに作ることができました。皆さんにはこの物語を通して、キング牧師がどんな人物であったか、公民権運動が何だったかということに理解を深めてもらえたら嬉しいです。キング牧師というと、どうしても“I have a dream”の名演説にばかり注目してしまい、それだけだと思っている方が多いんです。でも本当はすごく魅力的な人物で、戦略家であり革新的なことをする人間だったわけです。そういった彼の人間性を皆さんに知ってもらえたら良いなと思いました。
シャミ:
キング牧師の物語を描くにあたり、今回はなぜ“ワシントン大行進”ではなく、“セルマの行進”についての物語にしたのでしょうか?何か意図したことはありますか?
エヴァ・デュヴァネイ監督:
実は個人的な選択で“セルマの行進”にフォーカスしたいと思いました。“セルマの行進”の頃のキング牧師は、スピーチを行いノーベル平和賞を受賞して一番力を得ていた時期でした。それだけ力を得ていた当時のキング牧師なら、本当は引退して本を書くことも、政治家になることも、何でもできたはずなんです。でもそこで彼が模索しながら何をしたかという物語を描きたいと思いました。
シャミ:
映画にも描かれていたように、必死の思いで獲得した選挙権だと思いますが、現代のアメリカでも一般の方の政治意識は昔と変わらないままなのでしょうか?
エヴァ・デュヴァネイ監督:
すごくその関心が強いときもあれば弱いときもあります。例えば、オバマ大統領が就任したときや、“9.11”が起きた頃は、政治的な活動がかなり活発だったし、政治に参加しようという意識も強かったんです。それに未だに警察官による差別的な暴行事件が起きてしまうこともあり、警察組織を見直そうという意識はすごく高まっています。ただ残念なことに、そうやって何かきっかけがないと政治意識が高まらないようです。
シャミ:
では、映画の舞台となる1960年代と今とで、人種差別問題の中核となる課題は変わったと思いますか?
エヴァ・デュヴァネイ監督:
1960年代は、アフリカ系アメリカ人は迫害されていて、自由に選挙に参加することができませんでしたが、今は状況が変わって迫害の恐怖なしに選挙に参加することができます。さらにいろいろな法律が変わり、大統領もアフリカ系アメリカ人が務めるようになりました。でも人種差別の根本的な問題というのは、やはり法律だけでは解決できないんです。人の心で解決するべきことなので、まだまだ時間がかかると感じています。
シャミ:
最後にトーキョー女子映画部のユーザーに向けて、本作のオススメコメントをお願いします。
エヴァ・デュヴァネイ監督:
公民権運動というと、男性が活躍したイメージがあるかも知れませんが、実は女性も男性と同じように戦略を立てて実行したり、女性も公民権運動の中核として関わっていたことを知ってもらえたらと思います。ただ男性を支援する立場だったのではなく、当時も前向きで進歩的な女性がたくさんいたんです。この映画にもいろいろなキャラクターの女性が登場しますが、公民権運動を中心となって動かしていた女性たちを観て、何か皆さんもインスピレーションを受けてもらえたら嬉しいです。
2015年6月10日取材&TEXT by Shamy
2015年6月19日より全国順次公開
監督:エヴァ・デュヴァネイ
出演:デヴィッド・オイェロウォ/トム・ウィルキンソン/ティム・ロス/オプラ・ウィンフリー
配給:ギャガ
1964年にノーベル平和賞を受賞したキング牧師。だが法律が変わってもまだ人種差別は続いていた。そんな現実を変えるべくキング牧師は、1965年に黒人の選挙権を求める525人の同志と共に、アラバマ州セルマからモンゴメリーまで80キロのデモ行進を始める。しかし、途中で白人の州警察と民兵隊が待ち構え、黒人たちが次々殴り倒されてしまう。その様子をニュースで知り衝撃を受けた全国の人々は…。
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