映画のお仕事は、監督・女優以外にも数え切れないほどの種類があります。プロデューサー、照明、音響、衣装、メイク、宣伝、劇場営業…。映画を作る現場から、映画をユーザーに届けるところまで、さまざまな現場で働く女性にお会いする機会があれば、お話を聞いて、現場の状況などを掲載できればと思います。
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ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症した女性と、夢に挫折した女子大生のかけがえのない友情物語が描かれた映画『サヨナラの代わりに』。今回は主演ヒラリー・スワンクさんにインタビューさせて頂きました。女優という仕事について「すべての映画が私の人生を変えてくれます。それが役者であることの一番の贈り物です」と語るヒラリーに“アカデミー賞受賞女優”と呼ばれることや、役づくりでいつもしていることを聞いてみました!本作のケイトも強い女性でしたが、ヒラリーさん自身もすごくパワフルでカッコ良かったです。
ツイートシャミ:
本作はALSという病気をテーマにした作品でありながらも、悲しくて辛い部分だけが描かれているのではなく、最後は清々しい気持ちにさせてくれる本当に素敵な作品でした。
ヒラリー・スワンクさん:
そうやって感じて頂けたことがすごく嬉しいです。多くの人がALSをテーマにした映画って聞くと、「誰かが亡くなる悲しいお話なんだろうな」と想像する方が多いので、この映画を観るとすごく驚かれるんです。この作品は、死について描かれた物語ではありません。ケイト(ヒラリー・スワンク)とベック(エミー・ロッサム)の2人が出会ったことにより、お互いが本当の自分を見つけていく物語なんです。
シャミ:
病気というテーマがありながらも、重く描かずに敢えて前向きな視点から描かれていましたよね。本作を観る人たちへはどんな影響を期待していますか?
ヒラリー・スワンクさん:
この映画は、愛と友情について描かれたすごくパワフルな作品で、観る人にいろいろなことを考えさせてくれるんです。ケイトとベックの友情のきっかけになるのはALSですが、この物語は生きることに喜びを感じるお話なので、人のことを偏見で見ない、広く大きな気持ちで人と接する、そして勇気を持って自ら立ち上がること、そういったたくさんのことを皆さんに感じとってもらえたら嬉しいです。
シャミ:
ALS患者であるケイトの役はすごく難しそうでしたが、今回はどういった役づくりをしたのでしょうか?またほかの作品でも共通してやっている役づくりはありますか?
ヒラリー・スワンクさん:
役づくりには、最低4週間は必要としています。いつも必ずやるのは、自分が演じるキャラクターがどうやって歩くのかを理解することです。周りの人を見ているとみんな歩き方が違って、絶対に同じ歩き方の人はいませんよね。だから自分のキャラクターがどう歩くのかを考えるんです。でもそれは物理的にということではなくて、その人がどういう気持ちで歩くのかを考えるということです。今回のケイトの場合も歩き方を見つけたのですが、彼女の場合は病気で歩けなくなってしまいました。だから歩き方ではなく、ほかの形で彼女を表現しなければならなくて、私にとってはとても大きな挑戦でした。公認介護士の方に指導頂き、ALS患者がどう体が動かなくなるのか、声が出なくなってしまうのかなど、いろいろなことを教えてもらって演じました。それから、ALSの患者さんにもお会いして、皆さんから個人的なお話をたくさん聞かせて頂いたんです。だからこの映画はフィクションですが、その患者さんたちのお話を伺ってケイトを演じているので、私にとってはリアルストーリーなんです。
シャミ:
今回の役もすごく特徴的で素晴らしいキャラクターでしたが、普段はどんなポイントで出演作を選んでいますか?
ヒラリー・スワンクさん:
特に探すわけではなくて、住む家を見つけるときみたいな感覚なんです。例えば、キッチンは重要よね、暖炉も必要、やっぱりお庭も欲しいっていうイメージがあったとしても、いざその家に足を踏み入れてエネルギーを感じるときに「ここに住みたい!」って思いますよね。その感覚と同じように役を選ぶときも「これだ!」って思う瞬間があるんです。
シャミ:
“アカデミー賞受賞女優”という箔がつくことの良いところと、あまり良くないと思うことを教えてください。
ヒラリー・スワンクさん:
“アカデミー賞受賞女優”と言ってもらえることは、とっても光栄なことです。その役に対して賞を頂けるということは、自分自身が賞を産んだような感覚になります。受賞者と呼ばれることに対しては、特別ネガティブなことはありませんが、自分自身にかけるプレッシャーは大きくなりました。失敗しても良いから挑戦することや、試行錯誤をすることが許せなくなってしまったんです。だから私は、別にアカデミー賞を受賞するために演技をしているわけではなく、あくまでその作品のストーリーを綴るために演じているんだって思うようにしたり、周りが「ヒラリー、大丈夫!?」って思うような失敗をしても良いんだって、常に自分に言い聞かせています。
2015年10月20日取材&TEXT by Shamy
2015年11月7日より全国公開
監督:ジョージ・C・ウルフ
出演:ヒラリー・スワンク/エミー・ロッサム/ジョシュ・デュアメル
配給:キノフィルムズ
公式サイト 映画批評/デート向き映画判定
来日記念イベント取材リポート
ケイトが初めて身体に異変を感じたのは、35歳の誕生日パーティーのときだった。やがて難病ALSと診断され、1年半後には車椅子生活となり、人生のすべてが変わってしまった。皆が患者扱いし疲れ果てたケイトは、夫の反対を押し切り、患者ではなく友人として話を聞いてくれそうな、女子大生のベックを介護人として雇うことを決意。しかし、ベックは言葉遣いが荒く、料理もまともにできず、完璧主義のケイトとはなかなか上手くいかなかった。そんなある日、夫の浮気が発覚し…。
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