映画のお仕事は、監督・女優以外にも数え切れないほどの種類があります。プロデューサー、照明、音響、衣装、メイク、宣伝、劇場営業…。映画を作る現場から、映画をユーザーに届けるところまで、さまざまな現場で働く女性にお会いする機会があれば、お話を聞いて、現場の状況などを掲載できればと思います。
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今回はE-girlsとしても活躍中、『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』でヒロイン朝海役を演じた石井杏奈さんにインタビューさせて頂きました。本作は、福島で被災し神戸で避難生活を送る主人公が、あることをきっかけに福島に戻り故郷の現状を知っていくという難しいテーマを扱った物語。インタビューでは、本作に出演して被災者の方々や福島に対する考えで変わった点や、E-girlsと女優のお仕事の違いについて聞いてみました!映画のなかでは、普通の高校生を演じた石井さんですが、実際にお会いすると「まさにE-girls!」という感じのとてもキュートな方でした。
ツイートシャミ:
本作は、震災という難しいテーマを扱った作品でしたが、演じるにあたって気を付けたことはありますか?
石井杏奈さん:
私が被災者の方々に共感してもらえるお芝居をできるのかという点が、一番心配な部分でした。やはり私自身が実際に震災を経験していないので、福島の方々の気持ちをどうしても100%理解することはできないんですよね。でも今回はドキュメンタリーっぽく撮る作品ということで、よりリアリティのある演技をして皆さんに少しでも共感してもらいたかったので、福島の方々への取材はなるべくたくさんさせて頂きました。
シャミ:
被災者の方々と実際にお話されたり、本作への出演を機にご自身のなかで変わったことはありますか?
石井杏奈さん:
福島の印象が変わりました。現地に行く前は被災者の方に何を聞いて良いのか、どうしたら傷つけないのかとか、かける言葉に迷っていました。それに震災から3年(撮影当時)が経っていたので、現地の状況が少しは変わっていると想像していました。でも実際に行ってみると、3年経っても全く変わっていないのが現状で、目の前の光景を見たときは言葉が出ませんでした。被災者の方々とお会いしたときは、「当時はこういうことがあって、ここに逃げたんだよ」とか「こういうことがあってすごく大変だったんだよ」と、積極的に当時のお話をしてくださり、私が心配したり不安に思っていること自体がダメなんだと気付かされました。お話していると被災者の方々の伝えたいという気持ちの強さがすごく伝わってきたので、その思いを乗せて私が演じないといけないと思いました。そうやって自分自身を奮い立たせることができたのは、福島の方々のおかげだと思っています。
シャミ:
やはり想像しているのと、実際に現地に行くのとでは大きく違うんですね。石井さんが演じた朝海は、福島で被災し、その後神戸で避難生活を送り、阪神淡路大震災のときに生まれた“しあわせ運べるように”の歌を学校で歌うことになりますが、歌うことにすごく抵抗していました。そんな朝海の複雑な気持ちについて、石井さんご自身はどう捉えていますか?
石井杏奈さん:
取材をさせて頂いたときに、福島で被災した後に東京の親戚の家に行っていたという方がいたのですが、その方が「自分が福島出身だということを東京では言いたくなかった。福島出身だと言ったら、同情されたり慰められたりするし、相手は善意があって言うのかも知れないけど、こっちはそんなに良い気がしないんだよ」と話していたのがすごく印象に残っています。だからきっと朝海も神戸の子達に自分が福島から来たということを言っていなかったと思いますし、もし話していたとしてもやはり同情されたり慰められたくないと感じていたと思います。それに朝海の場合は、福島の現状を理解したくなくて逃げて神戸に来てしまっていたので、福島を思い出したくないという思いもあったのかも知れません。だからこそ“しあわせ運べるように”を歌うことになったときに、朝海は「こんな歌を歌えない」と言ったんだと思います。
シャミ:
なるほど〜。この作品には、ほかにも印象的な歌が登場するシーンがありましたが、石井さんはこの作品において歌がどんな役割を果たしていると思いますか?
石井杏奈さん:
歌はどんな力にも変わるものだと思います。私自身、E-girlsとして活動させて頂いているので、歌の力のすごさは今までの経験からもたくさん感じてきました。誰かを感動させたり、笑顔にしたり、苦しみから救ったりできるのは、やっぱり歌ならではの力だと思います。この作品を通して新たに感じたのは、歌えるようになるまでにこんなに大変な思いをしたり、いろいろなことを経験してやっと歌が歌えるようになるということは、本当にすごいことでたくさんのパワーが詰まっているんだなと思い、改めて歌を大切にしないといけないと感じました。
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シャミ:
石井さんはE-girlsのメンバーとして活躍されていますが、人に歌を聞いてもらったりダンスをするときに一番意識したり、気を付けていることはありますか?
石井杏奈さん:
とにかく楽しむようにしています。自分が楽しんでやらない限りお客さんは絶対に楽しくないし、逆に自分が心から楽しんでいれば、相手も心から楽しんでもらえると思っています。私がお客さんだったとしても、つまらなさそうに踊っている人を見るより、本当に笑顔で踊っている人を見たいと思いますし、笑顔の人を見ると、すごく笑顔になれるんです。それはきっとE-girlsのメンバー全員が、同じ気持ちだと思います。ライブ中にすごくテンションが上がっているときに、たまに偶然ほかのメンバーと目が合うことがあるのですが、そのときにお互いニコニコしていて、それを見て笑顔になってしまうこともあるんです(笑)。でも本当に楽しいので自然と笑顔になれます。
シャミ:
E-girlsだとほかのメンバーと一緒にパフォーマンスをして、女優さんのお仕事のときは石井さんがお一人で現場に入っていると思うのですが、やりづらいところや、やりやすいところはありますか?
石井杏奈さん:
大人数から一人になるということで、最初は緊張していましたが、やっていくうちに緊張していること自体がもったいないと感じ、その時間に自分が頑張れば演技がもっと良くなるんじゃないかって思うようになりました。それに最近は、一人のお仕事でも、E-girlsやLDH(所属事務所)の看板を背負っていると意識するようになり、一人の仕事でもすごく楽しむことができるようになりました。
シャミ:
逆に女優のお仕事がE-girlsに生きたと感じる部分はありますか?
石井杏奈さん:
やはりE-girlsに貢献したいという思いで女優のお仕事をしているので、もしE-girlsをあまり知らない方が、私の出演する作品を観て「この子は誰だろう?」「E-girlsって何だろう?」と興味を持ってもらえたら嬉しいです。私自身がE-girlsを知ってもらうきっかけになり、E-girls自体にパワーを付けられたら良いなと思っています。
シャミ:
では最後に、これから本作を観る方に向けてオススメコメントをお願いします。
石井杏奈さん:
この映画は福島の現状を知ることができ、今当たり前に生活していることの大切さを知ることができる作品です。いろいろな感情を持てることや、普通に何でもできることがどんなに幸せなことかを感じてもらえたらと思います。ぜひご覧ください。
2015年12月11日取材&TEXT by Shamy
2016年1月23日より全国順次公開
監督:井上剛
出演:石井杏奈/渡辺大知/木下百花/柾木玲弥/前田航基/津田寛治/二階堂和美/皆川猿時/ともさかりえ/南果歩/中村獅童
配給:トランスフォーマー
神戸の女子高に通う朝海のもとに、故郷福島に留まる同級生から、立入制限区域になっている母校の校庭に埋めたタイムカプセルを取りに行かないかというメールが届く。同じ誘いを受けた同級生2人と、ひょんなことから朝海達に同行することとなった教師と共に福島を目指す。長い道のりを経てたどり着いた地で朝海達が見たものとは…?
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