映画のお仕事は、監督・女優以外にも数え切れないほどの種類があります。プロデューサー、照明、音響、衣装、メイク、宣伝、劇場営業…。映画を作る現場から、映画をユーザーに届けるところまで、さまざまな現場で働く女性にお会いする機会があれば、お話を聞いて、現場の状況などを掲載できればと思います。
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今回は、新宿ピカデリーが立ち上げたPiccadilly Prime Labelとして3月5日より劇場公開される『これが私の人生設計』にちなんで、松竹マルチプレックスシアターズ劇場宣伝室・室長の鈴木巧(すずきたくみ)さん、番組編成部の岡田愛由(おかだまなゆ)さん、新宿ピカデリー・マネージャーの伊藤旦子(いとうあさこ)さんにお話を伺いました。女性に心地良い空間や、女性向けメニューを揃えたコンセッションなど、女性に人気の映画館として知られる新宿ピカデリー。今回Piccadilly Prime Labelを立ち上げた意図はどんなところにあったでしょうか?
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マイソン:
Piccadilly Prime Label発足の経緯と、オススメ作品を選ぶ際のポイントを教えてください。
岡田愛由さん:
私は、Piccadilly Prime Labelの作品選定をやっている番組編成室に所属しています。新宿ピカデリーという劇場が元々女性向けに作られていて、作品としても製作国を問わずいろいろな国の良質な作品を扱ってきたなかで、他の近隣劇場との差別化ということでこのレーベルを発足しました。作品選定のコンセプトとしては、女性が女性を誘って来やすい映画ということ、その映画を観ると人生のヒントが見つかるとか、心が満たされてキラキラした気持ちになれるという点です。そういう作品を集めて女性に喜んで頂きたいと思っています。
マイソン:
今回『これが私の人生設計』を選定したポイントはどんなところですか?
岡田愛由さん:
本当に元気をもらえる作品で、自分の夢に向かって芯を持っている女性を描いていて素敵だなと、素直に共感できて、これはまさにPiccadilly Prime Labelの作品だなって思いました。
伊藤旦子さん:
私はPiccadilly Prime Labelの作品と決まってから観たので、オススメポイントとして言うと、主人公の女性が過去の成功もリセットして、自分の本当にやりたいこと、自分の道を新たに切り開いていくところにすごく刺激をもらえます。成功を掴むためにもがいている過程を見ているとすごく元気も勇気ももらえるので、同じ働く女性はもちろん、そうでない方も、元気な気持ちで劇場を後にしてもらえると思います。
鈴木巧さん:
元気になるし、笑えるし、どれを観ようかなと迷っている方に迷わずおすすめできる作品です。私は可愛い女の子やかっこいい男性が出演している事、チラシのビジュアルや洋服・メイクから映画を選ぶ事もあるのですが、この映画は、ビジュアルもカラフルでかわいいですし、主人公の女性が物語が進むにつれて洋服もオシャレに、どんどん素敵にキレイになっていく、その過程がとてもおもしろいです。出ている男優もカッコ良いですよ。
マイソン:
イケメンが登場するシーンとか、笑えるシーンも結構あって、イタリアのノリが楽しい映画ですよね。では次に、主人公が建築業で成功を目指すのと同様に、映画に携わる仕事に憧れている女性もいると思いますが、皆さんのそれぞれのお仕事について教えてください。
伊藤旦子さん(新宿ピカデリー・マネージャー):
劇場の運営が仕事です。お客様に最初から最後まで快適に、楽しい気持ちで映画を観て帰って頂く、そのためにどうしたら良いのかを日々考えています。たとえばお客様から見えるところに立っているのは基本的にアルバイト・スタッフなので、きちんと接客できているか、清掃がしっかりできているか等を見て、できていなかったら注意したり指導したりします。また新宿ピカデリーでは舞台挨拶等のイベントも多いので、映画配給会社さんと当日の進行について一緒に考えていくという仕事もあります。作品に直接関わるというよりも、いかに楽しい映画館を作っていくかというのが仕事です。
マイソン:
観る環境が快適じゃないと映画も楽しめないですもんね。では次は番組編成についてお願いします。
岡田愛由さん(番組編成):
「番組編成」の名前の通り、どういった作品を上映するのかを決めるのが仕事です。あと、各劇場のタイムスケジュール(何時から何を上映するか)を組むという仕事があります。作品によっては映画配給会社さんに宣伝会議を開いて頂くので、劇場スタッフから「最近のお客様はこういう傾向がある」という情報などを得て、興行側だからこそできる意見を述べるというのも仕事です。
マイソン:
映画会社さんや宣伝会社さんに、「こういう宣伝をして欲しい」というリクエストをされることもあるんですか?
岡田愛由さん:
ありますね。宣伝方針を聞いて、こちらはSMT(松竹マルチプレックスシアターズ)として持っているホームページやメルマガで告知にご協力できることがあれば提案することもあります。あとは映画のターゲットについて相談することもあります。
マイソン:
一つ気になったのが、公開から長く経ってだんだん動員数も落ちついてきた場合に、判断は現場か編成側かどちらが決めるんですか?お答えにくい質問を好奇心だけで聞いちゃって、すみません(笑)。
一同:ハハハハ(笑)。
岡田愛由さん:
私達番組編成担当と劇場の支配人で、週末のお客様動員や反応を見て相談し、お客様に観て頂きやすい時間や上映回数を決めます。ただ、スクリーン数や上映できる回数は決まっているので、ご年配に好まれる作品ならお昼までの方が観に行きやすいというご意見が多いから午前中に上映時間を設定する等、いかにお客様の生活スタイルやニーズに合った時間や回数を設定できるのか?最大限の努力をしています。
マイソン:
逆に満席になって入れなかったときとか、お客様が予想よりも多いときの判断もありますよね。
岡田愛由さん:
そうですね。宣伝がこのくらい出ているので、世間ではこれくらい盛り上がってるとか、そういうことを確認する意味でも宣伝会議をやって頂いてます。あとは劇場毎のカラーもあるので、アニメが強いところは大きい邦画作品があったとしてもアニメにキャパシティを割くとか、逆も然りなんですが、期待値が高い作品を見極めながら、いろいろな劇場の特色を踏まえて決めています。
マイソン:
なるほど。鈴木さんのお仕事はどんなことをするのでしょうか?
鈴木巧さん(劇場宣伝室・室長):
劇場宣伝という名前のとおりで、いかに劇場が素晴らしいかを届けるお仕事をしています。今映画館がたくさんある中で、我々の映画館を気に入って頂くのが仕事です。
マイソン:
劇場そのものの宣伝をされるということなんですね。では、最後に全国にいろいろなチェーンがあるなかで、工夫していることはありますか?
鈴木巧さん:
「映画館は何で選びますか?」と聞くと、「家から近い」という理由が上位に来ます。そんな中でいかに我々の映画館を気に入って頂けるか?は永遠の課題です。新宿ピカデリーであれば他にはないラグジュアリーな空間で映画をお楽しみ頂ける「プラチナルームやプラチナシート」があるのでその紹介をしたり、イベントや試写会の構築、その情報発信もしています。
また、小さいお子様がいるママさんたちに向けた上映会「ほっとママシネマ」(ママ1人につき補助席がついて1200円)を実施し、普段映画をなかなか観られないママにも映画を身近に感じて頂ける施策も行っています 。
マイソン:
常に変化が求められますもんね。あと、個人的には劇場の作品ラインナップは気になります。この映画がおもしろそうだなと思う映画の上映館を調べたら、「またこの劇場だ」という感じで、「この劇場の編成の方ときっと気が合うな」と思うこともあります(笑)。なので、Piccadilly Prime Labelの今後のラインナップも楽しみです。
岡田愛由さん:
Piccadilly Prime Labelが理想とするところはまさにそういうところで、「新宿ピカデリーに来れば、こういう作品をやってるんだ。また来たいな」と思って頂くのが劇場にとっては一番大事なところです。
鈴木巧さん:
「駅から近いから」という立地だけでなく、Piccadilly Prime Labelをやっているからということで、新宿ピカデリーがお気に入りの映画館になってくれたら、本望です。
2016年2月23日取材&TEXT by Myson
2016年3月5日より新宿ピカデリーほかにて全国公開
監督:リッカルド・ミラーニ
出演:パオラ・コルテッレージ/ラウル・ボヴァ/マルコ・ボッチ/コラード・フォーチューナ
配給:シンカ
建築家として世界各国を飛び回っていたセレーナは、新たな一歩を踏み出そうと今までの華やかなキャリアを捨てて、故郷のローマに戻ってきた。だが、イタリアの建築業界は男性が中心で、女性は相手にされず、なかなか職に就けないセレーナは、レストランでアルバイトをしながら貯金をしていた。そんなある日、公営住宅のリフォーム建築家の公募を見つけたセレーナは、ゲイの友人を身代わりに自分はアシスタントとしてアイデアを売り込み成功。だが、身代わりにも限界があり、徐々にほころびが出始め…。
©2014 italian international film s.r.l
ジャンル・製作国にとらわれることなく、女性に向けた良質でバラエティに富んだ作品を上映する、新宿ピカデリーオリジナルのラインナップ編成。20〜30代の女性スタッフたちが番組編成、劇場宣伝を手掛け、女性ならではの視点から、「アナタの心に輝きを。」をモットーに、観客の期待に応える作品を紹介するとともに、新しい映画館の楽しみ方を提案。
今後のラインナップ
『これが私の人生設計』2016年3月5日(土)公開
『素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店』2016年5月28日(土)公開
『二重生活』2016年6月25日(土)公開
『The Idol(原題)』2016年9月24日(土)公開
『Julieta(原題)』2016年秋公開予定
『Freehel(原題)』2016年秋公開予定