映画のお仕事は、監督・女優以外にも数え切れないほどの種類があります。プロデューサー、照明、音響、衣装、メイク、宣伝、劇場営業…。映画を作る現場から、映画をユーザーに届けるところまで、さまざまな現場で働く女性にお会いする機会があれば、お話を聞いて、現場の状況などを掲載できればと思います。
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2006年に連続ドラマとしてスタートした本シリーズが10年を迎え『アンフェア the end』でついに完結。今回はその佐藤嗣麻子監督にインタビューさせて頂き、本シリーズに10年携わった感想や、雪平夏見(篠原涼子)の恋愛について直撃しました。ハードボイルド作品ということで、監督自身にもクールなイメージがあったのですが、実際にお会いするととてもチャーミングで楽しい監督で、女子トークが炸裂してしまいました(笑)。
シャミ:
『アンフェア』シリーズは、テレビドラマの放送が始まって10年が経つということですが、最初の頃はここまで続くと予想されていましたか?
佐藤嗣麻子監督:
連ドラの11話だけで終わりだと思っていたので、まさかこんなに続くとは予想していませんでした。もし続くとわかっていたら、ドラマの最後で安藤(瑛太)が死んでしまう設定にしていなかったかも知れません(笑)。でも安藤が死んでいなかったら、安藤自体がここまで人気のキャラクターにならなかったと思うので、結果的には死んで良かったのかなと思います。
シャミ:
10年間同じシリーズに携わって、良かったことはどんなことですか?
佐藤嗣麻子監督:
良かったのは、ドラマの4話目以降と映画は全部オリジナルで脚本を書かせてもらったことですね。オリジナルでこういうハードボイルドの作品を好きに書かせてもらえることはあまりありませんし、私は中学生の頃からハードボイルド小説をよく読んでいたほど大好きだったので、自分で書けたことはとても嬉しかったです。
シャミ:
昔から大好きなジャンルだったんですね。ハードボイルドを撮る女性監督はあまりいないような気がするので、そういう作品を書ける監督が本当にカッコ良いなと思います。
佐藤嗣麻子監督:
海外には結構いますが、日本だとハードボイルドを撮る女性ってほとんどいないかも知れませんね。
シャミ:
ハードボイルドのおもしろさはどんなところですか?
佐藤嗣麻子監督:
騙し合うところや、拳銃を扱うアクションシーンがあるところですね。このシリーズの撮影もすごく楽しかったです。
シャミ:
雪平(篠原涼子)の母として、女としての一面が観られたのが同性として共感できて嬉しかったです。監督は雪平のどんなところを一番見せたいと思っていたのでしょうか?
佐藤嗣麻子監督:
やはり女性から見て違和感のない女性であることを一番大切にしたいと思っていました。
シャミ:
女性監督が描いたからこそああいう雪平の一面が見られたのかなと思いました。
佐藤嗣麻子監督:
そうですね、映画もドラマも製作者は圧倒的に男性が多いので、女性が主役の場合でも男性が作っていることが多いんです。そうすると男性が憧れている女性や、男性にとって都合の良い女性として描かれてしまうんですよね。特にリアクションにすごく表れているように思うのですが、女の人ってこんな反応しないのにって思うことがよくあります(笑)。ただ男性キャラを女性監督が描く場合でも同じことは言えます。今回は女性の主役を女性である私が撮ったからこそ共感してくださった方が多かったんだと思います。
シャミ:
監督は雪平という人物のどんなところが好きですか?
佐藤嗣麻子監督:
気楽でサバサバしているのが良いですよね。鬱陶しい人だと面倒くさいなって思うので(笑)。
シャミ:
確かにそうですよね。でも恋愛面に関してはちょっと不器用な印象でした。もし事件がない状態で雪平が恋愛をしたらどんな恋愛をするのかも気になります(笑)。
佐藤嗣麻子監督:
雪平は、事件がないと恋愛しないんですよ(笑)。彼女自身、人殺しなので、同じように人を殺したことがある人じゃないと分かり合えないんだと思います。だから佐藤和夫(香川照之)とは別れたんです。
シャミ:
なるほど〜。切ないですね(悲)!
シャミ:
シリーズがここまで続いて、今回の『〜the end』から参加されたキャストもいましたが、新しいキャストが撮影に入られた時はどんな雰囲気だったのでしょうか?
佐藤嗣麻子監督:
新しく入った方々は皆さん緊張していましたね(笑)。永山さんに関しては、15歳くらいのときにお兄さん(瑛太)が出演していたドラマ版を観ていたと言っていました。だから雪平がすごく憧れの女性という感じらしく、現場にいると「あの雪平さんが目の前にいる!」という気がして緊張したと話していました。
シャミ:
ドラマのときは雪平の相方を瑛太さんが演じ、本作では永山絢斗さんが相方として出演していました、最後に永山さんをキャスティングしたことはたまたまだったんですか?
佐藤嗣麻子監督:
最初は全然違う人をキャスティングしようと思っていたんですが、いろいろ探っているうちに、やっぱり永山さんが良いんじゃないかと思い今回の形になりました。
シャミ:
瑛太さん永山さんご兄弟がこのシリーズに揃って参加しているのは、観ていてすごく嬉しかったです。瑛太さん、永山さん以外にも、雪平の相方役には山田孝之さんもいて、毎度雪平は年下の男性とコンビを組んでいましたが、これにも何か理由がありますか?
佐藤嗣麻子監督:
篠原さんは、年下と組んでいるときの方が活き活きしている感じがするんですよ。この作品は、基本的には雪平より年上の男性ばかりなので(笑)、新しく登場する人は年下じゃないとあまりにも平均年齢が高くなってしまうと思ったので、なるべく若い人を入れたいと思いました。
シャミ:
篠原さんとは本作の撮影に入るにあたり、改めて役について話し合いなどされましたか?
佐藤嗣麻子監督:
こういう感じのことをやりたいという話はしました。例えば、篠原さんから今回は雪平と一条(佐藤浩市)がガッツリやり取りするシーンが欲しいという要望を頂いたので、その意見は取り入れています。
シャミ:
雪平と一条の微妙な関係については今回どうなるんだろうって結構気になっていたのですが、この2人の恋愛について監督は客観的に見てどう思いますか?
佐藤嗣麻子監督:
大変ですよね(笑)。私だったらこんなのは嫌です。映画だから成り立つのであって、実生活でこんなのはたまったもんじゃありません(笑)。
シャミ:
雪平の人生は本当に壮絶ですよね。できれば体験したくありません(苦笑)。脚本を書いているときと、監督をしているときとで作業が違うと思うのですが、両方を兼任することの良さはどんなところですか?
佐藤嗣麻子監督:
私の場合、監督だけでも、脚本だけでも飽きるので、両方をミックスしながらやるのが良いです。連ドラだと脚本だけを担当することが多いのですが、書いて渡して、また次の脚本を書くと繰り返しているとすごくストレスが溜まるんです。逆に監督だけをやっていると、「この脚本の意味はどういうことだろう?」と思って、伏線などを気にして変えるに変えられないこともあるので、それはそれでストレスが溜まるんです。だから自分で両方をやることが一番健康的だなと思います。
シャミ:
それぞれ違うお仕事ですが、両方をやることでストレスをため込まないサイクルができているんですね。
佐藤嗣麻子監督:
やっぱり全体を作っているのが監督で、骨組みを作っているのが脚本なので、作品全体の責任は監督にあると思っています。監督をやっていると、良いところも悪いところも私のせいですって言えるので、その方が気楽なんですよ。
シャミ:
なるほど〜、全責任を負うことの方が気楽とはすごくカッコ良いですね!監督の旦那様(山崎貴監督)も映画監督のお仕事をされていますが、ご夫婦で同じ仕事をしていることのデメリットとメリットはありますか?
佐藤嗣麻子監督:
デメリットは、お互いの作品のことを批評し合うとことですね(苦笑)。昔、お互いの作品を批評し合って大げんかしたことがあるので、それからはお互いの作品のことはなるべく言わないようにしています。でも言わなければ言わないで、不自然に黙っているのが嫌なときもあるんですよね(笑)。メリットは、彼が今何をやっていて、どういう風に忙しいのかがわかることです。ロケに行っていて家に帰ってこられない時でも、今はどうして大変なのかを理解できるのが良いことだと思います。
シャミ:
では最後にトーキョー女子映画部のユーザーに向けて一言本作のオススメコメントをお願いします。
佐藤嗣麻子監督:
ブルーレイ&DVDにしか付いていない超ネタバレのコメンタリーがおもしろいと太鼓判を頂いているので、二度目以降の方はそこをぜひ楽しんで頂きたいです。あとは10年かけてやっと完結したシリーズなので、海外ドラマを観るような感覚で最初から最後まで一気観して欲しいです。そして女子には雪平のカッコ良さはもちろん、雪平の逆ハーレム状態を自分に置き換えて、どれが自分の好みの男性かというのを選びながら楽しんでもらえればと思います。
2016年2月24日取材&TEXT by Shamy
2016年3月2日ブルーレイ&DVDリリース、レンタル開始
監督・脚本:佐藤嗣麻子
出演:篠原涼子/永山絢斗/阿部サダヲ/吉田鋼太郎/加藤雅也/向井地美音/AKIRA/寺島進/佐藤浩市
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雪平夏見は有能な刑事だった父の死の真相を探るため、警視庁捜査一課の刑事になり、父が警察内部の不正に迫っていたことを知る。大きな代償を払いながらその不正を示す機密データを入手した雪平は、父の無念を晴らす機会を伺っていた。そんななかある連続殺人事件が発生し、その容疑をかけられた津島直紀は雪平を取調官に指名し、とある話を持ちかけ…。
©2015関西テレビ放送/フジテレビジョン/ジャパン・ミュージックエンターテインメント/東宝/共同テレビジョン
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