TOP > 映画界で働く女TOP > 映画界で働く女性にインタビュー&取材ラインナップ > HERE
2014年カンヌ国際映画祭正式出品をはじめ、各国の映画祭で絶賛された『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』のマリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督を取材しました。貧困層が多く通うパリ郊外の高校を舞台に、落ちこぼれクラスの生徒達が歴史教師アンヌ・ゲゲンの情熱で次第に変化していく姿を描いた本作。映画の原案者であり、共同脚本とメインキャストを務めたアハメッド・ドゥラメとの出会いや、撮影当時のエピソードなどを伺いました。
<PROFILE>
コロンビア・ピクチャーズのDevelopment Excutive、ハリウッド・リポーターの国際版編集長を務めたあと、制作会社Trinacaでエクセキューティブプロデューサーに就任。1998年に制作会社LOMA NASHAを共同で立ち上げ、着想、脚本執筆、公開時のマーケティングなどの、プロジェクトを通した展開戦略に尽力している。2001年、さらにVENDREDI FILMを共同で立ち上げ、この2つの制作会社で12本の長編映画を制作。2012年に監督第1作『MA PREMIERE FOIS』が公開され、同年に監督第2作『BOWLING』も公開された。本作は長編監督作品3作目となる。また、プロデューサー、配給、テレビの映画編成担当者、エージェント、ジャーナリストなど、映画業界の女性達からなるCERCLE FEMININ DU CINEMA FRANCAIS (フランス映画の女性サークル)の設立者でもある。
ミン:
本作の企画は、マリック役のアハメッドさんが自らの高校時代の経験を映画化すべく、監督にメールを送ったことがきっかけでスタートしたそうですね。メールを受け取った時の印象をお聞かせください。
マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督:
最初に心を動かされたのは、アハメッドの勇気です。彼は当時まだ18歳でしたが、自ら行動を起こして、年上の人間にコンタクトを取ったことに感心しました。そこで、実際に会って話してみることにしたのです。
ミン:
実際に彼と話して、すぐに映画化の企画を進めようと思われたのですか?
マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督:
そうです。問題児として扱われてきた生徒達が一人の教師と出会い、コンクールの課題を見事にやりきって、親や地域や国からも賞賛される存在へと変わっていく。その変化や成長のストーリーに感銘を受けて、ぜひ映画化したいと思いました。
ミン:
映画化の意向をアハメッドさんに伝えた時、彼はどんな反応をしましたか?
マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督:
彼は、自分が書いた脚本にアドバイスをもらえるのかな?くらいに考えていたようです。なので、私が「共同で脚本を書かない?」と提案すると驚いていました。さらに、俳優として出演できるなどとは夢にも思っていなかったようですね。
ミン:
彼は映画監督志望だそうですが、以前から俳優としても活動していたそうですね。
マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督:
はい。しかし、今回が彼にとって初めての大きな役だったと言えるでしょうね。セザール賞有望男優賞にもノミネートされて、俳優としても一つ成長したと思います。
ミン:
アウシュヴィッツの生き証人であるレオン・ズィゲルさんが語る悲惨な経験は、深く心に刺さりました。あのシーンを境に生徒達の心も大きく変化しますが、監督ご自身は、どんな気持ちで撮影されていたのでしょうか?
マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督:
ズィゲルさんには撮影前も何度もお会いしてお話を伺いましたが、彼は会う度に違う話をしてくれましたし、常に情熱をもって話してくれました。その度に涙が止まらなくなってしてしまうので、撮影の時もティッシュペーパーを箱ごと用意しておきました。
ミン:
ゲゲン先生役のアリアンヌ・アスカリッドさんについてもお聞かせください。監督の目から見て、アリアンヌさんはどのように役に向かわれていましたか?
マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督:
彼女はバイタリティに溢れた素晴らしい女優であると同時に、問題意識をもった市民でもあります。そういった意味でこの役は彼女にぴったりでした。しかし、そんな彼女も撮影初日は苦心していたようでした。先生という職業は1日で成れるものではありません。ですが、撮影が進むにつれて生徒達とも心を通わせて、本当の先生のようになっていきました。
ミン:
ゲゲン先生のモデルとなった、アンヌ・アングレスさんは本作をご覧になりましたか?
マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督:
はい。すごく感動してくださって、「ありがとう」と言ってくれました。何よりもアハメッドが成功したことに誇りを感じたようです。すごく謙虚な方で、「あなたの成し遂げたことは素晴らしい」と言っても「いえいえ、素晴らしかったのは生徒達で、私は小さな役割をしただけです」とおっしゃるんです。私の方がアングレスさんに「ありがとう」と言いたい気持ちです。
ミン:
映画のゲゲン先生と同様にすてきな方ですね。最後に、トーキョー女子映画部の読者にメッセージをいただけませんか?
マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督:
もちろん、喜んで。フランスでは、映画人も映画ファンも女性が大変多いんです。日本もきっとそうだと思います。女性は映画の将来を背負っている存在です。皆さんもどんどん映画を観てください!もちろん、私を信じて本作もご覧くださいね!
2016年6月29日取材&TEXT by min
2016年8月6日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町、角川シネマ新宿ほかにて全国順次公開
監督・脚本:マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール
共同脚本:アハメッド・ドゥラメ
出演:アリアンヌ・アスカリッド/アハメッド・ドゥラメ/ノエミ・メルラ
配給:シンカ
貧困層が暮らすパリ郊外のレオン・ブルム高校の新学期。さまざまな人種の生徒達が集められた落ちこぼれクラスに、厳格な歴史教師アンヌ・ゲゲンが赴任してくる。情熱的なアンヌ先生は、生徒達を全国歴史コンクールに参加するように促すが、「アウシュヴィッツ」という難しいテーマに彼らは反発する。ある日、アンヌ先生は、強制収容所の生存者を授業に招待する。生き証人の悲惨な状況を知った生徒達は、この日を境に変わっていく…。
©2014 LOMA NASHA FILMS - VENDREDI FILM - TF1 DROITS AUDIOVISUELS - UGC IMAGES -FRANCE 2 CINEMA - ORANGE STUDIO