映画のお仕事は、監督・女優以外にも数え切れないほどの種類があります。プロデューサー、照明、音響、衣装、メイク、宣伝、劇場営業…。映画を作る現場から、映画をユーザーに届けるところまで、さまざまな現場で働く女性にお会いする機会があれば、お話を聞いて、現場の状況などを掲載できればと思います。
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今回は、20年ぶりに再結成しようとする元アイドルグループの物語『ピンカートンに会いにいく』で、20年後のメンバー達を演じた皆さんと座談会をやらせて頂きました。終始笑いが絶えない楽しい座談会でしたが、俳優さんとしてのお仕事については深いお話もたくさん聞けました。
<PROFILE>
内田慈
1983年3月12日生まれ。神奈川県出身。日本大学芸術学部文芸学科中退後、演劇活動を開始し、橋口亮輔監督『ぐるりのこと。』(2008)で映画デビュー。映画出演作は『ロストパラダイス・イン・トーキョー』『恋の罪』『ヒミズ』『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴りやまないっ』『鍵泥棒のメソッド』『きみはいい子』『恋人たち』『下衆の愛』『葛城事件』『恋愛綺譚集』『神と人との間』など多数。
松本若菜
1984年2月25日生まれ。鳥取県出身。2007年『仮面ライダー電王』で女優デビュー。2009年には『腐女子彼女。』で映画初主演を飾る。石川慶監督の『愚行録』にて今年度ヨコハマ映画祭助演女優賞を受賞。その他の映画出演作には、『ペコロスの母に会いに行く』『駆込み女と駆出し男』『ディアーディアー』『GONINサーガ』『無伴奏』『ケアニン〜あなたでよかった〜』『結婚』などがある。
山田真歩
1981年9月29日生まれ。東京都出身。『人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女』(2009)で映画デビューし、『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』で主演に抜擢。2015年公開の『アレノ』で第30回高崎映画祭最優秀主演女優賞を受賞。近年の映画出演作は、『ヒメアノ〜ル』『だれかの木琴』『永い言い訳』『アズミ・ハルコは行方不明』『島々清しゃ』『ポエトリーエンジェル』『ひかりのたび』『菊とギロチン』『愛の病』など。
水野小論
1981年5月25日生まれ、東京都出身。日本大学芸術学部演劇学科入学を機に、舞台演技を学び、在学中から串田和美、佐藤信の舞台に出演。CNナレーターとしても活動していた。大学卒業後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、長塚圭史、G2、ロバート・アラン・アッカーマン、溝口真希子などの演出作品に多数出演。2008年、ナイロン100℃の作品に参加し、後に劇団員となる。主な映画出演作は『クヒオ大佐』『ゼンタイ』『紙の月』『恋人たち』『東京ウィンドオーケストラ』など。
岩野未知
1977年10月17日生まれ。愛知県出身。俳優養成所を卒業後、2015年に演劇ユニット“ハツビロコウ”を結成し、出演、制作を担当。その他、森光子主演「雪まろげ」や、演劇集団“砂地”、演劇企画集団“THEガジラ”などの作品にも参加している。主な映画出演作は、『自由戀愛』『恋人たち』など。
マイソン:
皆さんは、20年ぶりにやりたいことはありますか?
山田真歩さん:
15歳くらいってことだよね、一番多感な時期だ。
岩野未知さん:
私は自分で男の子に告白したことがなくて…。
一同:え〜!そういうこと?いいね〜。
山田真歩さん:
私もない!
岩野未知さん:
古いけど、学校の下駄箱にラブレターとか入れたい!あと、バレンタインでお菓子を作ってみたい。皆はやったことある?
山田真歩さん:
ある〜。毎年作ってたよね?
水野小論さん:
小学校の時とかたくさん作って配ってたよ。そういうのが好きな学校で、皆やってた。私はライブやイベントとかにお友達と複数人で行ったりしたいな。
山田真歩さん:
グループデート?わかるわかる!映画の『タイタニック』を男バス(男子バスケ部)、女バス(女子バスケ部)のグループデートで4人くらいで行こうってことになってたのに、当日14人になっちゃって。集団で『タイタニック』を観て、修学旅行みたいになっちゃった。今は、そんなことしないじゃん?1人で観に行くことが多いし。
水野小論さん:
(映画を集団で観る機会は今)ない、ない、ない。
内田慈さん:
私は、自分的になんですけど、中学校くらいまでは頭も良くて、運動神経が良かったんですよ(笑)。一度方法を聞いたらできちゃうみたいな感じだったので、そこで怠けちゃって。脳が退化して、身体もそこで努力しなかったのが今のベースになってるから、あの時に戻ってもう一回頑張りたい!(笑) 最近、一つのことを話してても、忘れる度合いがひどくなってきてるわけ。誰に話したのか、どこまで話したのか、覚えてないってことがよくあるから、他の人が覚えてると、基盤となる記憶力とかを、皆は中学生の時に頑張って鍛えたんだなと思っちゃう。
山田真歩さん:
そう?全然関係ないよ。私もすごい忘れちゃうもん。私がいるから大丈夫。
一同:ハハハハハ!
内田慈さん:
完成披露試写会でサプライズライブをするために、年末年始に3回くらい集まったんですよ。いつも同じ場所だったんですけど、(山田真歩さんが)毎回結構新鮮に迷うんですよ。
山田真歩さん:
スマホじゃないから、手書きの地図を持っていってて。毎日が新しいんだよ(笑)。
岩野未知さん:
名言出た!
一同:ハハハハハ!
松本若菜さん:
私も慈さんに似てるかな。お正月に、高校サッカーとか駅伝とか、テレビで観てると、学生のときにあんなに熱く燃えて皆で団結するような、いわゆる青春っていうのをしてなかったなあと思って。何かに熱くなるのって、大人になってからだと恥ずかしいけど、今回撮影自体で青春をさせてもらって、すごく嬉しかったです。
内田慈さん:
そう言われてみれば、中学生の頃に怠けた理由がもう一つあって、一生懸命やるのがダサいと思ってた。コギャルとかが流行ってる時期でもあって、一生懸命に取り組むより、チャラチャラしてるほうがカッコ良いと思ってたかも。大人になってからは、この仕事が自分の人生のなかで唯一一生懸命やってることだし、この作品もそうだね。恥ずかしいことを一生懸命やれて良かった。
一同:ふむふむ。
マイソン:
芸能界はサバイバルが激しいと思いますが、俳優さんのお仕事をやっていて、“これだから、ずっとやめられないな”と思う魅力的な部分と、逆に“もうやだー!”と思う大変な部分はどんなところですか?
山田真歩さん:
なんかもう、その話題だったら、2、3時間は話すよね。
一同:ハハハハハ!うん、うん。
岩野未知さん:
お酒がいるね(笑)。
松本若菜さん:
私は大変だと思うことは毎回ですよ。作品に入ったら、自分から生み出すものばっかりじゃないですか。それが苦しくてたまらないんですよ。だから早く終わらないかなとか、逃げ出したいと思うんですけど、終わり頃になると、「終わっちゃうんだ…」って毎回寂しくなります。毎回その繰り返しだけど、できあがった作品を観て、感慨深くなって、「また、この組に戻ってきたい」と思えることもあるので、私の場合は、大変だと思う部分と魅力的に思う部分が表裏一体なんでしょうね。
内田慈さん:
私は単純に楽しいというのもありますけど、なぜ楽しいかと考えると、私は自分の気持ちを言葉にするのが結構苦手なんですね。学生時代は、相手と噛み合わないことが多かったんですけど、(芝居のなかにある)一つのセリフを読んでいると、言うほうにも、聞くほうにも、人にはこんな思いがあるんだなというのを感じます。人の気持ちってすごく複雑だけど、それをギュッと深く考えられるのが芝居をやることだったりして、そこがすごくおもしろいですね。自分の発見にもなるし、友達、家族のことを考えるきっかけにもなります。仕事だけを優先していた時期もあるんですけど、普通に生きている人間を演じるのに、自分の家族を大事にしてないって、ダメじゃないですか。たぶん、自分の家族を大事にし始めてから、芝居も楽しくなってきて。自分の人生と芝居をやるっていうことが、繋がっているからすごくおもしろいんです。
マイソン:
深いですね〜。
内田慈さん:
あと大変な事って何だろう?例えば舞台だと、うまくいろいろなことがパ〜ンと見つかる日があるんです。でもそれを追っていくと、急に腐ってしまうんですよね。だから、いつも更新しなければいけない、いつも新鮮にやらなければいけないっていう時は、「これをやり続けるのか〜」としんどくなることもあります。
山田真歩さん:
終わりがないじゃん。正解もないし、ノルマもないし。
一同:そう、そう!
山田真歩さん:
私は最初会社に務めてたんですけど、タイムカードがあるじゃないですか。それをやめて自由になったときに、どうすれば良いかわからなくなって。区切りもないし、オフなのにオフじゃないみたいな感覚で、そこが辛いとこだなって。自分で一日どうしようって、日常からどんどん離れていっちゃう感覚を自分で繋ぎ止めなければいけないと思って、憂鬱になっちゃうんです。だから日常に自分を繋ぎ止めておく、杭を打つのが大変です。魅力は、今回の作品みたいに、本当におもしろいものを作ろうと思っている人達に出会えた時に、やっぱりやってて良かったと思います。他にもいっぱいあるけどね。
内田慈さん:
しかも頂いたタイミングで心をしっかり動かして、そういう意味では結果を出さないといけないし。
山田真歩さん:
もらった役によって、自分の人生も変わっていくじゃん。タクシーの運転手さんみたいに、札幌行けって言われたら札幌に行くとか、お客さんがどこに行くかわからないけど、(役者も)役をもらったら、一緒についていかないといけないから。
一同:なるほど〜。
水野小論さん:
でも、札幌行けって言われたから札幌に行ったのに、青森に行ったほうが褒められたりするときもあるじゃん。
一同:
ある〜〜〜〜!
マイソン:
なるほど〜。役者さんって本当に大変ですね。水野さんは逆にどんなところに魅力を感じますか?
水野小論さん:
スポーツなどとは違って、若くなくてもできるってことですよね。あと、有名無名にこだわる方もいますけど、無名だろうが自分がやろうと思えばできるので、他の職業にはあまりないことだと思います。
岩野未知さん:
あと初期費用が要らない。身一つで良いし、全部ここ(頭)だよね。一生懸命本を読んだり、映画を観たりして、インプットするけど、それをどうやってアウトプットするかは私次第。そこが難しい部分ではあるけれど。今回、ヒステリックなお母さんの役で、普段の私とは真逆なタイプなんです。私は怒ると黙るタイプなんですけど、今回のような役をすると、ちょっと楽しいって思います。私にもこんなところがあるんだと思うと、日常もちょっと豊かになったり。いつもだったらここで黙るけど、ちょっと怒ってみたら、いつもより早く解決したりね(笑)。
山田真歩さん:
自分の選択肢も増えるよね。
岩野未知さん:
そうそう。
松本若菜さん:
役からもらえるものはあるよね〜。
マイソン:
皆さん、貴重なお話をありがとうございます。では最後に、内田さんが代表で一言お願いします。
内田慈さん:
キャッチコピーには、“崖っぷちアラフォー女子”って入ってますけど、崖っぷちっていうのは、35歳の女性だからっていうのではなく、皆が持ってる感情だと思うんですよね。そこには老若男女が共感できると思いますし、それぞれ一生懸命役に向かって、その役の悩みが等身大に描かれているので、自分に似ている人を見つけられるかも知れません。明日への活力になる映画だと思います。
一同:(拍手パチパチパチ)ありがとうございました!
2018年1月10日取材&TEXT by Myson
2018年1月20日より全国順次公開
監督・脚本:坂下雄一郎
出演:内田 慈/松本若菜/山田真歩/水野小論/岩野未知/田村健太郎/小川あん/岡本夏美/柴田杏花/芋生 悠/鈴木まはな
公式サイト 映画批評/デート向き映画判定
完成披露舞台挨拶取材リポート&ユーザーアンケート特集
ブレイク寸前で解散した伝説の5人組アイドル“ピンカートン”に、20年ぶりに再結成の話が舞い込んできた。リーダーだった優子は、解散後も芸能活動を続けていたが、仕事に恵まれず売れない役者のまま。所属事務所からはクビを宣告されてピンチに追い込まれたが、ピンカートン再結成に再起をかけて動き出す。だが、メンバーが簡単に話にのるはずもなく…。
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