映画のお仕事は、監督・女優以外にも数え切れないほどの種類があります。プロデューサー、照明、音響、衣装、メイク、宣伝、劇場営業…。映画を作る現場から、映画をユーザーに届けるところまで、さまざまな現場で働く女性にお会いする機会があれば、お話を聞いて、現場の状況などを掲載できればと思います。
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今回は、押見修造の人気コミックを映画化した『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』で主演を務めた、南さん、蒔田さんに取材させて頂きました。若くして、過去の作品でも難役を演じてきたお2人は、今回の難役も見事に演じていらっしゃいますので、ぜひご注目ください!
<PROFILE>
大島志乃 役:南沙良
2002年6月11日生まれ、神奈川県出身。第18回nicolaモデルオーディションでグランプリを受賞し、現在も雑誌「nicola」専属モデルとして活躍中。2017年、『幼な子われらに生まれ』(三島有紀子監督)で女優デビューを果たし、複雑な役どころながら好演。その演技力を認められ、報知映画賞、ブルーリボン賞新人賞にノミネートされる。また、伝説的ロックバンド、レベッカの17年ぶりの新曲「恋に堕ちたら」のMV(行定勲監督)に主演したことでも注目を集める。初主演作となる『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』では、難役を見事に演じている。
岡崎加代 役:蒔田彩珠(まきたあじゅ)
2002年8月7日生まれ、神奈川県出身。2012年、是枝裕和監督が手掛けたTVドラマ『ゴーイング マイ ホーム』で好演、注目を集める。映画『三度目の殺人』(2017)では福山雅治が演じた主人公、重盛の娘役に抜擢され、高い演技力で印象を残した。その他、ドラマ『重版出来!』(2016)、『五年目のひとり』(2016)、『みをつくし料理帖』(2017)、『anone』(2018)や、積水ハウス、日清フーズのCMにも出演。2018年公開の映画出演作には、『友罪』(瀬々敬久監督)、『猫は抱くもの』(犬童一心監督)がある。初主演作となる『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』では、ギターを猛特訓し、役作りに挑んでいる。
マイソン:
まずは、原作を読んだ時の印象を教えてください。
南沙良さん:
原作はオーディションを受けるときに初めて読ませていただきました。自分が志乃に重なる部分がすごく多くて共感できるなと思いながら読んでいました。
蒔田彩珠さん:
私も加代役が決定してから読んだので、加代の目線で読みました。本当にリアルで、主人公達と同年代の私達が読むと苦しくなったり、こういう気持ちってあるよなぁと思うところが多い作品だったので、演じてみたいと強く思いました。
マイソン:
原作者の押見修造さんの実体験を基に描かれた作品だとお伺いしているんですが、押見さんとはお話しされる機会はありましたか?
南沙良さん:
撮影の間にお話させていただく機会はあまり無かったですね。
蒔田彩珠さん:
お会いしたのは撮影前で、オーディションの時と、本読みの時…。それと最後の文化祭シーンに来てくださいましたね。
マイソン:
今作のように、物語を作られた方の存在って、プレッシャーに感じますか?
蒔田彩珠さん:
プレッシャーというか、実体験を元にされていると聞いていたので、押見さんの気持ちとか原作ファンの方達に失礼のないように演じたいなって思いましたね。
マイソン:
南さんはどうですか?
南沙良さん:
私はもともと押見先生の他の作品もすごく読んでいて大好きだったので、お会いさせていただく時はとても緊張しましたね(笑)。
蒔田彩珠さん:
オーディションの時に押見さんがいらっしゃったんですけど、押見さんの作品のことになると沙良ちゃんの話が止まらなくて。すごく好きなんだなって伝わってきました(笑)。
マイソン:
押見さんも、そんな南さんの様子を見て、喜んでらっしゃったんじゃないですか?
南沙良さん:
そうですね。私は、喜びと緊張が入り混じって大変でした(笑)。
マイソン:
でも会うことができて良かったですね!あと、路上ライブのシーンが印象的でしたが、演じてみていかがでしたか?
南沙良さん:
加代がギターを弾いて、志乃が歌ってっていうシーンは、何だかすごく一体感を感じたというか、「一緒になった!」っていう気持ちがありました。
マイソン:
撮影とは言え、路上ですごく声を張って歌っていましたが、どんな気持ちでしたか?
お2人:
緊張しました(笑)。
蒔田彩珠さん:
駅前のシーンが最初の路上ライブ撮影だったんです。
マイソン:
それは緊張しますね(笑)。
蒔田彩珠さん:
普通の駅前で、人がいるので…、緊張しました(笑)。
マイソン:
今後ご自身達で、路上ライブをやってみたいとか?
蒔田彩珠さん:
どうする??
南沙良さん:
いや、大丈夫かな〜(笑)。
蒔田彩珠さん:
あれっ(笑)!
マイソン:
ハハハハ(笑)。あと、蒔田さんは音痴というキャラクター設定でしたが、音痴に歌うって逆に難しいですよね?
蒔田彩珠さん:
“あの素晴しい愛をもう一度”以外の曲は、本当に知らなくて。元々の曲を耳に入れずに、知らない曲を知らないまま歌っているので、自然に音痴になれるっていうところはありました(笑)。
マイソン:
なるほど。南さんもすごく難しそうな役柄でしたが、どんな風に役作りをしましたか?
南沙良さん:
実際に吃音がある方にお話を聞いたり、動画を見たりしました。私は原作を読むまで吃音についてあまり知らなかったので、まず吃音というものの理解から始めました。
マイソン:
監督からはどんなアドバイスがありましたか?
南沙良さん:
吃音というよりは、志乃が思ったこと、感じたこと、加代から受けたこと、菊地から受けたことを、素直に出すことをすごく大切にしてほしいと言われました。
マイソン:
そうだったんですね。蒔田さんはギターを練習したと思うんですけど、どれくらい前から、どれくらいの期間をかけたんですか?
蒔田彩珠さん:
4ヶ月前くらいです。
マイソン:
すごい!
蒔田彩珠さん:
大変でした(笑)。まずコードを覚えるのが大変でしたし、指も痛くなっちゃって。でも、監督達と加代のギターを選びに行って、「じゃあ加代のギターはコレだ!」って決まった時からは、もっと加代の音楽に対する愛情を大切にしたいなと思って頑張りました。
マイソン:
では最後に、主人公達のように、友達との関係や学校で悩んでいる人達に向けて、メッセージをお願いします。
南沙良さん:
私にとって、自分のイヤな部分だったり、自分の真っ白じゃない濁っている部分を見つけるきっかけを与えてくれた、そしてそれを返す場所を見つけてくれた作品です。なので、そういうきっかけを皆さんにもぜひ見つけていただければなと思っています。
マイソン:
ありがとうございます。蒔田さんはいかがですか?
蒔田彩珠さん:
私達と同年代の方達が観ても、「こういうことってあるよな」とか、感情移入できると思いますし、大人の方達が観ても、「自分達にもこういう時代があったなあ」とか「これからも頑張りたいな」って、感じてもらえるんじゃないかなと思います。新しいことに挑戦したいと思っている方達の背中を押してくれる作品だと思いますので、いろいろな方に観て頂ければ嬉しいです。
マイソン:
ありがとうございました!
2018年初夏 取材&TEXT by Myson
2018年7月14日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督:湯浅弘章
出演:南沙良/蒔田彩珠/萩原利久
配給:ビターズ・エンド
入学式の日の自己紹介で、自分の名前を言うのにも苦労した志乃は、上手く言葉を話せないことで孤立してしまっていた。だが、同じクラスの加代とひょんなことから友達になり、加代にもコンプレックスがあることを知る。音痴だけれど人一倍音楽が好きな加代は、志乃が歌えることを知り、2人でバンドを組んで文化祭に出ようと持ちかける。
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