誰にでも歴史があり、ルーツがあり、それがその後の人生を形成していきます。でも自分の歴史やルーツをあなたが好きではなかったら?今回は自分の歴史やルーツに囚われ苦しむ主人公たちの物語をご紹介します。
ツイートプロミスト・ランド
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<スティーヴのルーツ> |
シェールガスの採掘権を買う仕事で会社のシェアの拡大に大いに貢献してきたスティーヴは昇格寸前。野心に燃え、ハングリー精神で確実に昇進してきた彼はあるときまで自分のやり方を疑っていなかったはずです。ところが、農場以外は何もないマッキンリーという町にやってきた彼の前に大きな困難が立ちはだかります。最初は今までの経験でやり過ごせると思っているスティーヴでしたが、町の人の反応で自分のルーツとも向き合うことになります。スティーヴの言い分は「なぜ皆、満足できない現状にいながら変えようと努力しないのか?」ということ。これはこれでごもっともです。彼自身、将来性を感じられない町で育ち、そこを出て自分の道を切り開いたという自負があるのだと思います。でも、マッキンリーの町の人たちの言い分を聞き、スティーヴは、地元を愛する人たちの考え方も徐々に理解していきます。さらに自分が信じていた世界にも、別の側面があることを知り、彼の考え方にバランスが生まれてきます。今まで好きになれなかった世界にも愛すべき部分があるし、今まで好きだった世界にも暗闇がある場合も。何事にもいろいろな側面があり、それを知っているのと知らないのとでは大違いで、それを知った上で選択したなら、これから歩む道がどうなっていようと納得して進めるのだと思います。 |
フランキー&アリス
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<フランキーのルーツ> |
解離性同一性障害についてまだあまり研究が進んでいなかった時代の実話を映画化した本作。黒人ストリッパーのフランキーには、IQが非常に高い天才少女の人格と、黒人差別主義の白人女性という人格、計3つの人格があります。異なる人格が出てくるときには、効き手も違うし、たばこを吸う吸わないなどの嗜好性、視力や学力さえも異なり、話し方ももちろん違います。医師は日常で突如変わる彼女の態度やしぐさなどからこの病に気付くのですが、治療するにはなぜこの人格が出てきてしまうのかを知る必要があります。フランキーにとって害を及ぼす人格はアリスと言われる白人女性。彼女のなかでなぜアリスが強い力を持ち始めたのかは、フランキーの辛い過去にありました。それは単純に黒人として迫害されてきたという理由だけではありません。黒人であったがために起こってしまったある過去について、彼女自身が大きな責任を感じており、それに関わった人物についての思いを消せずにいたことが、ずっと彼女を苦しめていたのです。彼女に何の罪もありませんが、差別をしてきた人間だけでなく、彼女のルーツも彼女自身を苦しめてきました。自分で自分を苦しめるのが一番辛いことですね。ある意味自分を守ろうとしてこういう病にかかってしまう部分もあるのかも知れませんが、自分で自分を守りきれない場合もあって、誰かの助けが必要だと気付くのが解決の第一歩だと思います。 |
自分のルーツや過去は変えられません。でも、それに縛られて生きていくかどうかは自分で選択できます。それは捨てるということではなく、まず受け入れるということが必要なんだなと思います。受け入れ、そして理解する。そうでなければ、何と戦っていいのかわかりません。自分が愛せないルーツや過去と向き合うためには、知っているふりをしたり、つもりでいたり、逃げていてはいけないんですね。
2014.9.8 TEXT by Myson