叶うかわからない夢を追いかけるには、忍耐が必要。進歩しているように思えても、ときに不安になったり、夢が叶ったとしたらそのときどうなるのかも本人ですら想像できない場合もあります。そこで今回は、夢を追う主人公たちを例に、夢を叶えるまでの過程について客観的に観察したいと思います。
ツイートシェフ 三ツ星フードトラック始めました
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<カールが気付いたこと> |
根っからの職人であるカールは仕事一筋で、息子を愛しながらもどこか自分の世界には入れないように境界線を引いていました。そんなある日、彼が務めていた一流レストランに辛口批評家がやってくることになり、カールは自分の創造力を発揮した料理で勝負したいと願いつつも、常連客にお馴染みの料理を出すのが一番だとするオーナーの意見に従い、案の定、批評家に料理をこき下ろされます。本来の自分を出せないまま、ひどい批評を書かれたカールは、オーナーと衝突し結局レストランを辞めることになりますが、このトラブルを聞きつけた他のレストランが彼を雇うはずもありません。でも、そんな窮地に立たされたときに、彼に本当のチャンスがやってきます。 彼は元妻の勧めもあり、フードトラックから再スタートすることにしますが、友人や幼い息子まで手伝い、軌道に乗り始めます。“今どきの子”である息子は、SNSの使い方などに長けていて、彼の広報により、フードトラックはだんだんと話題になっていくのですが、いよいよ次のステージに上がるところで息子との過ごし方を考え直すことにもなるのです。自分の夢を叶えるときに大事なのは、まず「どういう風に叶えたいか」ということ。彼の場合は一流レストランでシェフを務めるだけでは不十分だったということに気付けたのがまず幸運でした。そして家族との関係も見直すことになったのがもう一つの幸運でした。「夢を叶えるためにはこうするしかない」という思い込みはつきものですが、良かれと思って犠牲にしていることは逆に自分の幸せを遠ざけているだけかも知れません。本作を観るとそれが実感できます。夢を追うために犠牲にしていることは自己満足やただの願掛けにしかなっていないのかも。夢が叶うのに不幸になっては意味がない。犠牲にしたくないものも、ちゃんと自分で知っておいたほうが良いですね。 |
幕が上がる
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<さおりたちが気付いたこと> |
年に一度しか行われない演劇の大会。新しく赴任してきた演劇経験のある先生は、ただものではない雰囲気で、生徒達はこの先生についていけば大会出場も夢ではないと信じ始めます。でも、同時に受験生である彼女たちに、練習などで多くの時間を費やすことを勧めるのは、先生の立場からして難しいところ。そこで「先生は皆と大会に行きたいけれど、皆の将来に責任は取れない」と本音をぶつけ、大会出場を目指すかどうかは、生徒達の覚悟、判断に委ねられます。しばらく考えた末に本気で大会を目指すことを決意した彼女たちは、必死で練習に励みます。 たかが高校生の夢と思いきや、学生時代にしか実現できない夢であり、受験を控えていることを考えると将来にも影響があります。目の前の目標は大会出場でも、その先の未来には女優になること、作家になること、いろいろな夢を持っています。そんな彼女たちは最初は見えなかったゴールが、練習するうちに徐々に見えてきて、自分たちがかなり進歩したことを実感していきます。同時にこれだけ進歩しても、最後にどこに行き着くかはわからない不安も抱えています。これが劇中にも出てくる宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のストーリーになぞらえて語られるのですが、夢を追う人にとって、どんなに前に進んでもどこへも行き着かない、つまりゴールというゴールはないという不安が描かれています。それでも、さおりたちは、今夢を追える場所にいることが重要だと気付きます。夢を追ううちに、夢の形も変わっていくし、ゴールもその都度変わっていく可能性もあります。でも、好きなことに打ち込める、好きなことを実現するために行動できる環境にいられることが、まず夢が叶っていることと言えるのかも知れません。 |
私も常に夢を追いかけてきた立場なので、今回取り上げた映画の主人公たちの心境はすごく身近なものに感じました。ワクワクも不安も夢を追うにはつきもの。でも、自分が何を目指しているのか、何のためにそれを叶えたいのか、夢が叶うときにどんな自分でありたいかが具体的に自覚できるようになればなるほど、不安の対処の仕方もうまくなっていくような気がします。
2015.3.9 TEXT by Myson