一見残酷な出来事に遭遇して絶望を味わっても、そこで逃げずに現実を直視すれば、希望の光が差し込んでくることもあります。今回は、そんな体験をする主人公の映画をご紹介します。
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<就職活動は本当の自分と向き合う儀式> |
一流企業に就職することを良しとする風潮はいつの時代も変わらないし、内定をいち早くもらうことも、就職活動に苦労している人達からしたら、とても重要なことだと思います。でも、万人にとって、それが良い事なのかと言われれば、絶対にそうではないはず。内定をもらったら勝ちという価値観も、きっと就職活動中だけのことでしょう。本作では、就職活動をする大学生達の葛藤が描かれており、普通に就職活動をして内定をもらう人もいれば、就職活動という行為を否定することで現実逃避する人もいるし、真面目に就職活動をしていてもうまくいかない人も登場します。そして、隠れてはけ口を作りますが、いつかそれもばれてしまい、就職活動以前に人間として失格したような気分に陥る様も描かれています。それは本当に屈辱的な体験となりますが、逃げ場を失うことで、自分の本心に向き合うことになります。就職試験に受かるためではなく、自分はどうしたいのかが重要。結局、就職できてもすぐに辞める人がいるのは、本当の自分に向き合わずにただ内定をもらうことが目的になっているからではないでしょうか。就職試験になかなか受からない理由にもいろいろあるはず。それはあなたがダメな人だからではなく、他の道があるからなのかも。少し発想を転換して、本当に自分が進みたい道を進む勇気を、本作はくれると思います。 |
永い言い訳
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<もう会えない人からのメッセージ> |
主人公の衣笠幸夫は、最初体裁ばかりを気にして、自分を取り繕うことばかりに必死になっている中身のない人間に見えます。彼は妻の死を聞いても涙を流せませんでしたが、同じ事故で妻を失った陽一と出会い、彼とその子ども達と交流するなかで、徐々に家族の温もりを“実感できる”ようになります。そんな幸夫にとって、妻の事故死は悲劇ではあっても、本当に彼にとって残酷だった出来事は、妻の書き残しを見つけてしまったこと。妻の携帯に保存されていた下書きのメッセージには、彼にとってとても残酷な言葉がありました。でも、その言葉が妻の真意だったかどうか、もう確かめることはできません。皮肉にも答えが簡単に得られなくなるほど、人は一生懸命答えを見つけ出そうともがきます。その時こそ、気付いていないふりをしていた事に目を向けるチャンス。ちゃんと向き合えば、何らかの答えが見つかるはず。大切な人が必死に語りかけていた言葉が、聞こえてくると思います。 |
誰の心にだって、“認めたくない自分”はいるはず。それも1人ではなく、何人もいるはずです。それをずっと無視していられることが幸せなのか、痛みを伴いつつも受け入れて進むほうが幸せなのか、それも人それぞれの価値観だと思います。でも、自分が認めたくない自分も、やっぱり自分の一部だと思うと、それを受け入れた上で、どうするか対処するほうが、自分の運命の舵取りをうまくできるような気がします。今回ご紹介した2作は、観ていて心が苦しくなる展開がありますが、その後の人生に新しい扉が開いたと思えるストーリーです。実生活できっかけがなくても、自分と向き合えるきっかけをくれる映画として、ぜひ観てみてください。
2016.10.11 TEXT by Myson