神はいるのか?それは誰もが一度は考える疑問です。特定の宗教の信者でなくても、神の存在を信じる人もいるでしょうし、全く信じない人もいます。どう考えようと自由だと思いますが、今回は神の存在について考えずにはいられない作品をご紹介します。
ツイート沈黙-サイレンス-
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<沈黙のなかに、神の声を聞く> |
最初に、本作はキリスト教についてのお話ですが、ここでキリスト教の真理について書くわけではなく、映画を通して感じた、あくまで私の持論であることをご理解ください。さらに、いかなる宗教についても否定するつもりはありません。 本作で、ポルトガルからやってきた司祭である主人公には何度も難しい選択が訪れます。強い信仰心を持った主人公は、自分の身がどうなろうと揺らぎませんが、信者が危険な目にさらされるのを見て、何が“神が正しいとする選択”なのか、わからなくなっていきます。“神の声”を、彼は正しく聞かないといけないわけですが、結局導き出すのは自分。そう思うと、“神は自分とともにある”と思えてなりません。私は無宗教ですが、人それぞれに神のような存在がいると考えています。うまく表現できませんが、選択を間違えればまたヒントをくれたり、正しければ正しいのだと思えるサインをくれたり、姿や声はわからなくても、その存在を感じられる体験は誰にでもあると思います。本作は、姿は見えず、声が聞こえなくても、神の存在をすごく感じさせてくれます。 |
幸せなひとりぼっち
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<生かされる命> |
何度も自殺をするオーヴェが主人公と聞くと、すごく暗い話なのかなと思うかも知れませんが、本作はとても愛に溢れたストーリーです。彼はもともととても誠実で愛に溢れた人。でも生真面目な性格のおかげで、年を取るごとに頑固なおじさんになっていきます。それでも、困っている人をほうっておけない性分だし、仏頂面で無愛想だけど、人の好意はちゃんと受け止めてお返しする人。亡き妻に対しては全身全霊つくしていて、本当に素敵です。彼は何度も死のうとしますが、その度にご近所さんのトラブルを目撃したり、タイミング悪く誰かが尋ねてきたり、なかなか死ねません。でも、そんな彼の様子を観ていると、不思議な力に彼は生かされていると思えてきます。自覚はなくても、多くの人の役に立っているオーヴェ。彼の後ろにも神の存在を感じます。 |
神はいるのか、いないのか。それは“神”という存在なのかどうか。考え方はいろいろあると思います。はっきりとイメージできたほうが受け入れやすい人はそれはそれで良いだろうし、漠然としていても信じられる人もいるし、それも自由だと思います。答えは結局、「神のみぞ知る」ですものね。
2017.1.10 TEXT by Myson