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このコーナーでは、生活をより豊かにするためのお金について勉強になる書籍などをご紹介していきます。
「映画ばっかり観て、現実的な思考力がない!」なんて言わせないぞ!お財布の管理もうまくなれば、好きなときに好きな映画を観られるようになります。
■総工費100億円の自宅を建設しようとする大富豪デヴィッド・シーゲル夫妻ー
■秒速で1億稼ぐ生活からホームレスへ〜与沢氏が経験から学んだこと
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世界経済に大打撃を与えたリーマン・ショック。世界中の被雇用者が路頭に迷うことになったのは周知のとおりですが、桁違いの大富豪のなかにも運命を大きく変えられた人たちがいます。今回は、実在の大富豪のサクセスストーリーを記録するつもりで撮影されたドキュメンタリーが、撮影中にリーマン・ショックという悲劇によって転落劇へと変換されてしまった『クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落』をご紹介します。
2014年8月16日より全国公開
監督:ローレン・グリーンフィールド
出演:デヴィッド&ジャッキー・シーゲル一家ほか
映画批評&デート向き映画判定
【映画を処方】金に操られるのは、貧乏人よりお金持ち!?
デヴィッド・シーゲルは、1980年代、タイムシェア(共同所有)リゾート物件を提供する世界最大のバケーションカンパニーを設立し、巨万の富を築いた。何度か離婚を経験した彼は、1996年、ブロンドヘアでナイスバディ、元ミセス・フロリダのジャッキーと出会い、30歳以上の年の差を超えて2000年に結婚。9年間で双子を含む7人の子供を授かり、2,500平米もの巨大な邸宅に暮らし、車はロールスロイスファントムで、自家用ジェット機も所有するこの一家は、7人の子供に加え、養女に迎えた姪、ボディーガードとシェフ、5人の乳母を含む19人の使用人を抱えている。そしてデヴィッドの会社は100%自己資産でラスベガスに巨大なビルを建設する絶頂期を迎えていたが、2008年、リーマン・ショックが起き、銀行からの融資を受けられず状況が一変してしまう。
©2012 Queen of Versailles, LLC. All rights reserved.
Q:監督から見た大富豪夫妻の面白いと思った点と、疑問に思った点はどんな所ですか?
監督:デヴィッドとジャッキーの人生すべてに興味をそそられました。二人が貧しい生まれであることと、無一文から大富豪になったという物語が、皆が思う「普通」の億万長者より、もっと地に足がついた、親しみやすい存在にしているのです。
ジャッキーは信じられないくらい寛容で、心が広く、付き合いやすい女性です。デヴィッドの労働観や、事業や従業員に対するひたむきな献身ぶりは、尊敬に値します。しかし、二人はアメリカ最大の邸宅を建設するという計画を持ち、並外れた生活を送っていました。ほとんどの人が、常軌を逸していてやりすぎだと考えるような目標です。しかし、リーマン・ショックや、財政的な苦労によって、彼らは現実の世界に呼び戻され、それがある意味、思いもよらなかった形で、彼らを共感できる存在にしたのです。
撮影で彼らを知るにつれ、本当に驚いたことがありました。一つはデヴィッドがラスベガスでではなく、自分の事業において、ギャンブラーだったということ。彼は10億ドル以上の大金を持っていましたが、6億ドルのラスベガスタワー(その当時、世界で最も高いタイムシェアのビルになる予定でした)建設に必要だったビジネスローンの、個人的な保証人になり、資産の全てを事業の成長に賭けたのです。
また私は、最初はジャッキーにも驚かされました。彼女は自家用機や豪邸を持ち、買い物三昧する億万長者の生活を愛しているように見えます。しかし、金融危機に見舞われると、家族を大事にする思いや、夫への愛が引き出されます。
私が思っていたほど、彼女にとってお金は重要ではなく、どんなことがあっても夫のそばにいるであろうことは明白でした。ジャッキーは自分にお金が無い時でも、困っている友人にお金を貸してあげていましたし、辛い時期も家族をまとめようと努力していました。ジャッキーもデヴィッドも、金融危機による厳しい日々を通じ、サバイバーとしての彼ら本来の姿を見せてくれたのです。
Q:聞きにくい質問ですが、映画公開後にシーゲル夫妻と裁判になったと伺っています。そのことはアメリカでどのような反響がありましたか?
監督:聞いてくださってありがとう。デヴィッドは映画祭の晩、私たちとサンダンス映画祭を名誉棄損で訴えました。この物語が、彼自身が言った言葉なのですが、「大金持ちの転落物語」だと報道をされたことに基づき、訴訟を起こしたのです。
私たちは訴訟に勝ち、弁護士費用として75万ドルを勝ち取りました。判事はこの映画内の発言はすべて真実だと判断しましたし、実際すべて真実です。
デヴィッドによると、訴訟を起こした理由は、映画の最後で、彼の人生においてとても辛い一章である、ラスベガスタワーを失う自分の姿が映っていることが気に入らなかったためだからだそうです。
マスコミはこの訴訟を馬鹿げたものだと考え、そのように報道しました。マスコミや他の映画製作者は、最終的に私たちが裁判に勝ったこと、これが表現の自由の圧倒的な勝利でもあることを、とても喜んでいると思います。
映画を観る限り、リーマン・ショック後も撮影に協力していて寛大だなと思っていたのですが、後日談を知って、やはりプライドは持ち続けているんだなと感心しました。デヴィッド・シーゲルは70代にして仕事はまだまだ現役で、巨額の負債を抱えてもめげずに再起をはかろうと必死です。「また金をつかいまくりたい」というような発言も出ていましたが、潔いとすら思いました。彼はそうは言っても倹約家である一面を劇中でも見せており、監督が語るように地に足のついた人物であることはわかります。おそらく彼にとってのお金はゲームの道具なのではないかと思いました。ラスベガスのビルにしても、彼は仕事においてギャンブラーなのであり、何に使うかわからないお金をギャンブルで稼ぐタイプとは全く異なる人種です。でも彼がこうでなければ、彼の成功もなかったのではないかと思います。
名言がたくさん出てくるんですが、企業家魂みたいなものが学べるんじゃないかと思います。経営危機が起こってからの2年間、服役していたみたいだというデヴィッドさんの言葉があるんですね。企業家という存在は、公私を分けられないという気持ちがすごくわかります。ステキな奥さんと子どもたちがたくさんいてプライベートがうまくいっていても、仕事がうまくいっていないと、特に男性の場合は幸せが感じがたい状態になっちゃうと思います。プライベートと仕事の両方が成功して真の成功になると思うんですけど、男の場合、特に企業家は経済基盤が安定している上で、プライベートな幸せを感じるのではという部分にとても共感したというか、印象に残っています。
お金が溢れるくらいあるときの気持ちってどんなの?
お金に関する大切さがわからなくなるという点でいうと、あまり良いことっていうのは無いと思います。人間的基盤がしっかりできてて、例えばウォーレン・バフェットさんみたいに資産5兆になっても、創業当時から年収を上げずに同じというように40年間変わらない生活をするくらいの強さがないと、欲しいなと思ったものは基本的に買えてしまうので、それを誘惑とすら感じないような人間性がないと大きなお金をコントロールしたり、増やし続けられないと思います。
自分とデヴィッド・シーゲルの違いは?
私の場合はいろいろと甘すぎて、税金の支払いが滞り、結果的に資金ショートして資産売却をしました。そのときに「もう高い家に住まなくていいや」ってどっちかって言うとびびっちゃったんですね。でもデヴィッドさんがすごいのは、苦労している渦中で「もう1回お金を稼いで使いまくりたい」っておっしゃっていたのが印象的でした。あの状況でこの強気なスタンスを貫けるっていうことがとにかく凄いなと思いました。それに73歳にもなるとかなり丸くなると思っていたら、20代みたいなベンチャー・スピリッツで、不屈な精神、どんな状況でも強気という、あういう精神は私はなくなったことがあったので本当に参考になりました。
20代のときは反骨精神も強くてエネルギッシュだったと振り返った与沢氏の今後
1回失敗しているので、免疫は多少あるのでそのときよりは冷静です。今までは短期間に収益を出すということを考えていましたが、“ウサギとカメ”の話と一緒で、最終的にカメに負けるわけですよね。5年、10年という期間をかけて作った経済基盤は強固です。一方で短期間で築いたものはもろいということがあります。なので、私としてはカメになっていきたいと思います。数ヶ月間、現状を見つめてまたリベンジをしていきたい。過去の清算と未来を見つめながら、1年後には復活していたいなと思います。復活の仕方としては、もう前に出る必要もないし、すごいと思われる必要も全くないと思っています。どこかひっそりと海外か日本でも田舎か都心じゃないところに住んでるかなと思います。
2014年8月5日取材
何が正解というのはきっとないのだと思いますが、大富豪がいるビジネスの世界はハイリスク・ハイリターンであることは確かです。桁違いの儲けを得たと思ったら、明日には桁違いの金額の借金を負っているという可能性も常にあります。そんななか、やっぱり精神的に強くないと耐えられないと思いますが、その精神を支えるのは持って生まれたものもあるように感じました。なろうと思ってなれる大富豪ではありませんが、なってなれない大富豪でもないのかも知れませんよ(笑)。とにかく、本作はお金のパワーを知る上でも、お金をコントロールする立場の人間を観察するにもとても参考になる映画です。
2014.8.13 TEXT by Myson