リッチになりたいと思う人は多いと思いますが、金持ちにも金持ちなりの苦労があります。金持ちになるまでの苦労ももちろんですが、金持ちになってからの苦労もあります。今回は大富豪の栄光と転落を描いた作品を観て、お金について考えてみます。
ツイートクィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落
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<シーゲル夫妻のビフォー・アフター> |
デヴィッド・シーゲルの会社の株は非公開なので、自己資本で経営しているのですが、順風満帆なときは銀行も彼の会社にお金を貸して利益を得たいので低金利で大きな金額を融資しています。でも、リーマン・ショックが起きた途端に融資をストップ。デヴィッドは1800億円もの純資産を持つ身から、1200億円の借金を抱える身に変わってしまいました。自己資本で経営しているわけですから、こういう状況になれば、個人資産をどんどん売却して借金を返したり、お金を借りる場合は自宅などを抵当に入れるので返済できなければ差し押さえになります。そんな状況のなか、経営者のデヴィッドは70代となっても現役バリバリなので金策にかけづりまわるのですが、妻とは会社の話はしないようで、妻はどれほど会社が危機に瀕しているかをわかっておらず、浪費癖は抜けません。この年齢にしてまた成功したいと願うデヴィッドは仕事とプライベートは切り離せないと語っていますが、前述のとおりお金に関しても会社が傾けば家の財政に直接響くという状況なので、自然に気持ちも会社がうまくいっていなければ、家族とも気分良くは過ごせません。挽回を図ろうとする彼は必死なのですが、そのイライラを妻にぶつけます。そんな夫の態度を妻なりに理解して受け止めるジャッキーは健気にも見えますが、会社の状況を聞かされていない彼女は、激しくムダ使いするため夫をさらにいらつかせます。夫婦の絆を信じているジャッキーと、どこか夫婦という関係性を割り切っているようなデヴィッド。うまくいっているときは幸せに見えても、困難な状況で夫婦が同じ価値観で踏ん張れないのは観ていて切ないです。愛がすべてを救うなんて綺麗事は言えないけれど、お金が幸せを左右するかどうかは、お金持ちでもお金がない家庭でも根本は同じなのかも知れません。 |
ウルフ・オブ・ウォールストリート
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<ジョーダン・ベルフォートのビフォー・アフター> |
レオナルド・ディカプリオが演じたジョーダン・ベルフォートは実在の人物。実際問題、現代のアメリカでどこまでセーフなのかわかりませんが、ジョーダン・ベルフォートの稼ぎ方は素人が観てもルールもモラルもすれすれ。若くしてハイ・スピードで稼げるようになった彼は、遊びたい盛りなのでドラッグにはまり、パーティ三昧、贅沢三昧な生活で桁違いの散財を続けます。そしてお決まりのごとく若く美しい妻に乗り換え、まさにブイブイいわせている状況に。社員も若いので、社長の暴走に喜んで付き合い、正気の社員がどれくらいいるのかすらわかりません。でも案の定、彼は逮捕され服役することになるのですが、それくらいでないと彼の暴走を止めることはできなかったでしょう。お金が人の感覚を麻痺させてしまう怖さを描いた本作。成金のゴージャスな暮らしぶりは初めは楽しく観ていられますが、だんだんとその中身の無さに呆れてきます。 服役を終えたジョーダン・ベルフォートは現在、株のブローカーではなく、当時の経験を生かして、作家、講演活動をして稼いでいるようです。ジョーダン・ベルフォート自身や、彼に騙された人たち、両方がお金に踊らされていたと言えますが、自分も日常のなかでお金に操られていないかをたびたび客観視する必要性を感じさせてくれます。 |
金持ちになるのが簡単でないのは、稼ぐのが難しいというのもありますが、何より金持ちとして生きていられるかの方が難しいように思います。稼いだお金を維持できるかどうか、得るお金が多ければ税金も大きくなるだろうし、アテにしていたお金も急に入らなくなれば、支出ばかりが大きくて追いつきません。お金があるときもないときもお金に操られることなく、運命を操るのはお金でなく自分でありたいですね。
2014.8.11 TEXT by Myson