本作は、『新聞記者』や『空白』などの話題作を世に送り出しているスターサンズの河村光庸エグゼクティブプロデューサーのもと、『おじいちゃん、死んじゃったって。』『さんかく窓の外側は夜』の森ガキ侑大が監督を務め、コロナ禍で働く人々を追ったドキュメンタリーとなっています。
そして、俳優の有村架純と志尊淳が出演し、俳優という職業について語るだけでなく、2人が実際にさまざまな職場に出向き、そこで働く人達にインタビュアーとして話を聞いているのも特徴です。「一流の俳優さんだから、何か仕込みがあるのでは?」と疑いたくなりますが、冒頭から夜の渋谷の街で志尊淳が街頭インタビューを行うシーンが映し出され、志尊淳自ら誰に話しかけるか決めて行動する姿に驚かされます。有村架純もインタビューの際に一つひとつの言葉を選びながら話しかけている様子が印象的で、全編を通して2人がさまざまな場所で働く人々や本作と真摯に向き合う姿勢が伝わってきます。
当初は、実在の保育士をモデルにした劇映画を製作予定だったそうですが、コロナの影響により製作中止となってしまい、そこで出てきたのが本作の案だったそうです。本作では、保育士、農家などのエッセンシャルワーカー(人が生活していく上で必要不可欠な仕事に従事している人)、さらにバスケットボール選手、ホストクラブの経営者、風俗嬢、ホームレスなど、本当に幅広い人々に話を聞いており、それぞれの現場でコロナの影響によってどんな変化が起きているのかが浮き彫りになっていきます。業種は違っても困難な状況に置かれているという点では、どんな人でも共感できますし、自分にとって人や仕事がどんな存在なのかということも改めて考えさせられます。普段のニュースで語られる情報とはまた違った側面からコロナ禍の現状を見つめる良い機会にもなるので、ぜひ多くの方に観て欲しい作品です。
タイトルの通りまさに“人と仕事”をテーマにした作品なので、デートを盛り上げる要素はありませんが、どんな人にも響く部分が見つかると思います。本作では、コロナ禍におけるさまざまな職業の人達の姿が映し出されているので、これを機に普段言えなかった仕事や人間関係の相談をするきっかけにもなりそうです。
皆さんの場合は、仕事とまだ縁がない人が多いと思いますが、コロナ禍で大人がどんな風に仕事をしているのか、社会勉強として観るのも良いと思います。また、普段ドキュメンタリー作品に馴染みがない人にとっては、有村架純と志尊淳が出ているという点ではかなり観やすいので、本作からチャレンジするのもオススメです。
『人と仕事』
2021年10月8日より全国3週間限定劇場公開
スターサンズ、KADOKAWA
公式サイト
©2021『人と仕事』製作委員会
TEXT by Shamy