2013年11月29日全国公開
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト
2009年に実際に起こった海賊事件をトム・ハンクス主演、ポール・グリーングラス監督で映画化。上映時間は二時間を超えるものでしたが、最初から最後まで緊張の連続であっという間に終わった気がしました。あんなに大きな艦艇が、あっけなく数人の武装したグループに乗っ取られてしまうというのも驚きでしたが、本来海賊は船の積み荷を奪うのが目的とは限らず人質を取って多額の身代金を目当てにするというのもあまり知らなかったので予想以上に恐ろしい事態なんだと実感しました。1番ドキドキしたのは、ソマリア人の海賊たちが自分たちには失うモノは何もないとでも言わんばかりの言動で、交渉ができないに等しく、いつ銃を撃ってもおかしくない状況が続いていたことです。犯罪だという自覚がそれほどないのか、生きるためにやってるんだから仕方がないと開き直っているようにも見えて、常識が通じない相手との頭脳戦は先が読めずにハラハラしました。そんな海賊たちにもちろん共感はできないとはいえ、フィリップス船長と海賊たちとで交わされる会話のなかに、貧しい国は先進国に資源を搾取されているという事実が盛り込まれていて、社会が生んだ悪とも言える状況に、ソマリアの海賊たちだけを責める気にはなれませんでした。エンターテイメントのなかにこういった側面もちゃんと描く点で、やっぱりポール・グリーングラス監督は上手いですね。トム・ハンクスの演技もさることながら、ソマリア人の海賊たちがあまりにもリアルでした。彼らはソマリア系アメリカ人を対象に行われたオーディションで1000人の中から選ばれた演技未経験の若者たち。演技初体験にも関わらずトム・ハンクスにひけをとらない堂々とした演技で作品に信憑性を持たせていました。 極限状態のなかでも人として正しくあろうとするフィリップスの奮闘、ぜひ大きなスクリーンで海上シーンの臨場感を最大限に味わいながら観て欲しいと思います。 |
ほぼ最初から最後まで緊迫したシーンが続くので映画に集中する状況になると思います。デートで観ても問題はないですが、ムードが出る内容ではありません。でも、世界で起こっている社会問題に少しでも興味のあるカップルなら観終わった後にいろいろと話したくなる内容はたくさんあります。愛をささやくばかりでなく(そんな一日中愛をささやいている人もいないですかね・笑)、たまには自分たち以外の話題で真面目に話をしてみても良いでしょう。 |
かっこいい海賊が活躍する人気アニメなどは楽しく観ている人も多いでしょうが、ホンモノの海賊はイメージとは違います。本作で登場する海賊はソマリアという貧しい国で生活に苦しむ若者が生きる手段として海賊行為をやっています。勇気を持って生き残ろうと奮闘したキャプテン・フィリップスに感動するのはもちろんですが、本作を観て、海賊側の若者たちの視点にも立ち、自分たちが恵まれた世界に生きていることに改めて感謝する気持ちになってくれたら嬉しいです。 |
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2013.11.1 TEXT by Myson