2017年11月3日より全国公開
パルコ
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印象派の巨匠フィンセント・ファン・ゴッホの死を巡るストーリーを、世界中から集められた125名の画家による62,450枚の油絵で描いた、異色かつ圧巻のアート・サスペンスです。ゴッホが残した肖像画に登場する人物達を、ダグラス・ブース、ヘレン・マックロリー、シアーシャ・ローナン、エイダン・ターナーといった豪華俳優陣が演じ、その実写映像をベースにアニメーションを描いていく “ロトスコープ”という方式で制作されています。ロトスコープ自体はこれまでも数々の映画作品に取り入れられており、古くはディズニー映画の『白雪姫』(1937)や、最近では岩井俊二監督の『花とアリス殺人事件』(2015)などがありますが、何と言っても本作の醍醐味は誰もが一度は目にしたことのある“ゴッホの作品が動き出す”ということでしょう。実写ベースなので人物達の表情はとても豊かでリアルでありながら、ゴッホの描く世界は独特で、異様な空間に迷い込んだような錯覚を覚えます。さらに、カラーで描いた部分は実話に基づくストーリー、モノクロの部分は想像で描いたフィクションのストーリーと、色と絵のタッチで視覚的に分けられており、そんな細かなところにも作り手達の誠実さを感じました。 ゴッホが書いた“最期の手紙”を託された青年アルマンが、手紙を渡すべき相手を探して旅をするストーリーは事実を基にしたフィクションではありますが、サスペンスフルな展開のなかにゴッホの人間像を生々しく浮かび上がらせていてドラマとしても見応えがあります。ゴッホに興味がなかったとしても、映像の世界観を含めて充分に楽しめる作品だと思います。 |
アート好きなカップルや、ミニシアター系の映画を好むカップルのデートにオススメしたい作品です。また、「アート系の映画は難解そうだから観たことがない…」という人には入門編としてもオススメ。ゴッホ調の油絵が動く不思議な世界に没入しながら、人気俳優達が演じるサスペンス・ストーリーを楽しむ。それだけでデート映画としても充分に成立していると思います。ゴッホに興味を持ったら、次回のデートは2017年10月24日(火)〜2018年1月8日(月・祝)に東京都美術館で開催中の展覧会「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」(京都展は2018年1月20日(土)〜3月4日(日)開催)に行ってみるのもオススメ。詳細は公式サイトを参照ください。 |
キッズには少々難解な作品だと思いますが、絵や美術に興味のあるティーンなら楽しめると思います。将来、画家やアニメーション作家、イラストレーターなどを目指している人は、本作の制作に日本人で唯一参加した画家の古賀陽子さんのインタビューもぜひ併せて読んでみてください。きっと、何かにチャレンジしたくなりますよ。 |
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2017.10.25 TEXT by min