2014年12月20日より全国公開
コムストック・グループ
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ただ惹かれ合って、引き離されて…という単純なストーリーではなく、男女の愛について夢想的な部分と現実的な部分を併せ持つストーリーとなっていて、これは抑制されているから燃え上がるのか、運命の恋なのか、男女が惹かれ合う理由、愛が冷めてしまう要因など、いろいろな疑問を投げかけてくる作品でした。1912年のドイツを舞台にしており、身分違いの恋でもあるので、ラブシーンといえば、男女がお互いにただただ心に秘めた思いを募らせている様子が描かれているのがほとんど。露骨な性描写はないのに、なぜ官能的に見えるのかというと、抑制された欲望と葛藤するキャラクターたちの表情がリアルだからなのだと思います。愛する人の姿を追う眼差しや、存在を思いながら触れるピアノなど、パトリス・ルコント監督の演出と俳優の呼吸がピッタリあっての産物なのでしょう。先日インタビューさせて頂いたパトリス・ルコント監督がおっしゃっていましたが、今回起用したレベッカ・ホール、リチャード・マッデン、アラン・リックマンというイギリス人俳優たちは、「役柄に対する感受性、センス、インテリジェンス、そういう理解力がすごく深い」とのことで、1インチの距離で感情を引き出したという表現をされていました。キスすればそれで成立というラブシーンではなく、目線の変化、心を隠すための言葉での駆け引きなど、繊細に演じられたラブシーンにぜひ注目してください。 そして、レベッカ・ホールが本作のヒロインというのが観る前はイメージが合わないのではと思っていましたが、これまで演じた彼女のイメージを払拭し、役になりきっていました。これまでの作品でも多くの女優の新しい一面を開花させてきたパトリス・ルコント監督。やはり今回もお見事でした。女子目線では、女らしさ、奥ゆかしさとは何からくるのだろうという視点でも楽しんでもらえればと思います。 |
恋愛はハードルがあると盛り上がる!ってことで、最近刺激が足りないと感じているカップルは、「好きなのに一緒になれない二人」の葛藤を観て、自分たちもそうなったら…と想像してみてください。ちょっとは新鮮味を取り戻せるかも知れません(笑)。遠距離恋愛の方は少し注意が必要。恋愛の酸いも甘いも描いているので、結末の解釈によって今後のスタンスが食い違ってくる可能性はあります。 |
キッズにはまだ理解不能というか、感情移入は難しいと思うので、大人になってから楽しみましょう。恋心に目覚めたティーンでウブなタイプの人は意外にすんなり感情移入できるかも知れません。逆に最初からガツガツいっちゃうタイプの人は、時代や国は違えど、こういう静かに気持ちを温めていく恋愛もあるのだなと参考にしてみてください。 |
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2014.12.16 TEXT by Myson