2015年8月8日より全国公開
ファントム・フィルム
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戦争映画といえば、男性が主人公で戦地での様子が描かれるイメージですが、本作の場合は女性が主人公で血が出るシーンは一切ありません。物語は、戦時中に東京で暮らしていた女性たちを中心に描かれていていくのですが、その様子を観ているだけでも十分戦争の辛さや過酷さが伝わってくる、戦争映画としてはちょっと新鮮味のある作品でした。 戦時中の日本は、健康で若い男性がみんな戦争に行ってしまっているので、残された若い女性はまともに恋愛することさえできず、そんな状況下で主人公の里子は、妻子持ち(妻子は疎開中)の中年男性、市毛に心惹かれていきます。市毛は隣人なので、里子と暮らす母親も娘の様子がおかしいことに当然気づくのですが、そこではっきりと二人の関係を否定せずに、恋を知らない娘を不憫に思い、むしろちょっと応援してしまうところが、この時代ならではだと思いました。 観方によっては、「この時代に恋愛をしたいと思うこと自体が信じられない」と感じる方もいるかも知れませんが、本作を観ていると、恋をすることがいかに人間の動物的本能であり、それはどの時代に生きていようと変わらないことだということがわかります。ほかにも本作を通して戦争に対する捉え方が変わった部分がたくさんあります。戦争中の兵士たちの様子を知ることももちろん大事ですが、本作を観てぜひこの時代を強く生き抜いた女性の生き様を知ってください。 |
舞台が現代ではないとはいえ、不倫関係が描かれた作品で、静かだけどエロさを感じるシーンもあるので、里子と同世代の20代前後の初々しいカップルには刺激が強いかも知れません。大人のカップルで、戦争を知るという意味で本作を観るのであれば、勉強になる部分もあると思いますが、やはり人間の本質が描かれた作品なので、一人か同性同士で観た方が、隣の反応を気にせずに心置きなく作品の世界観に浸れると思います。 |
戦地を舞台にしたお話ではありませんが、男女の不倫関係が描かれているので、キッズは大きくなってから観ましょう。ティーンは、里子と市毛の関係性だけでなく、周囲の人物の気持ちや戦争が里子自身にどんな影響を及ぼしているのか考えながら観ましょう。そうすると、今までとは違う戦争の新たな側面を知ることができると思います。 |
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2015.7.28 TEXT by Shamy