2016年10月1日より全国順次公開
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まずタイトルからして、89歳のピアノ教師シーモア・バーンスタインって何者なんだろうと思いますよね?資料によると、彼の職業は ピアニスト、作曲家、教師、作家。1927年、アメリカ・ニュージャージー州ニューアーク生まれで、わずか15歳で人にピアノを教え始めたそうです。17歳でグリフィス・アーティスト賞を受賞、アレグザンダー・ブライロフスキー、サー・クリフォード・カーゾン、ヤン・ゴルバティ、ナディア・ブーランジェ、ジョルジュ・エネスクといった著名な音楽家に師事し、演奏家としての名声を築いた後、朝鮮戦争中は兵役に就きながら、その間も各地の前線で、また軍の幹部向けに、数々の演奏会を行ったとあります。彼は50歳でコンサート・ピアニストを引退し、以降の人生を教えることに捧げているようですが、なぜ彼が華々しい表舞台から去り、教えることに専念するようになったのかというところに、人生のヒントが隠されています。 好きなことを職業にしている人は特に「やり甲斐を感じられる仕事=稼げる仕事・評価される仕事とは限らない」というジレンマに悩まされることが多々あると思いますが、イーサン・ホークも同じ悩みをシーモアにぶつけます。そんなイーサンが、人生の岐路に立ち、金銭的な成功のためではなく、もっと有意義な人生にするためにどうすれば良いのかシーモアに尋ねるシーンや、シーモアと教え子の対話のシーン、ナレーションで語られる独白には、印象深い言葉がたくさん出てきましたが、世間のものさしで計った幸せではなく、シーモア自身が自分にとって何が幸せかをはっきりとわかっているからこそ、その言葉には説得力があります。シーモアの数々の言葉から、「答えは結局は自分が握っているのだ」と私は解釈しましたが、彼の宗教観や哲学にとても共感しました。頭で理解している段階から、彼のようにもっと深い部分で理解できるようになるには、まだまだ人生の修行が必要ですが、この映画を観て、メンターの1人に出会えた気がします。 |
ロマンチックなムードになる映画ではありませんが、人生観を問う内容なので、真剣交際中のカップルは、一緒に観て感想を語り合うと相手の価値観がより理解できて良いと思います。また相手が金銭的、物質的な成功にこだわり過ぎて、目の前の幸せに気付いていないなと不安に感じている人は、一緒に観て相手の反応を探ってみるのはいかがでしょうか?もしくは、そういう相手とこれからも付き合っていけるか悩んでいる人は、じっくり1人で観てください。 |
とても為になる言葉がたくさん詰まっているのですが、キッズにはまだ難しい内容だと思います。中高生は試しに観てみると良いかも知れませんが、もし今ピンとこなくても心配することはありません。今はとりあえず人生経験豊富なシーモア・バーンスタインの印象的な言葉をメモに残すだけでもオーケー。大人になってそれを読んでみると、そのときに初めて真の意味が理解できたり、何か迷ったときに役に立つのではと思います。 |
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2016.9.12 TEXT by Myson