冒頭で、1人の女性がせわしく子どもを探している様子が映るのですが、自分の子どもを探しているのではなく、親を亡くした子どもを探しているのだと気付いた瞬間から、何が起きているのか釘付けになりました。真相は、国外へ逃げるための偽装家族を構成するためだとわかるのですが、本作では主人公のディーパン、その妻を装うヤリニ、娘役のイラヤルの3人が、スリランカを出てフランスに渡り、新しい生活を始める様子が描かれていきます。
最初は移民がいきなりまともな職を得られないという現実の厳しさもひしひしと伝わってきて、(タイトルに闘いとついていることから)そういう日々の生活で“闘う話”なのかなと思いきや、事態はもっと深刻で、結局彼らが落ちついた先は治安の悪い地域で、銃を持った柄の悪い連中がうようよしています。そんななかでも、徐々に慣れてきたディーパンたちでしたが、また怖い目に遭う羽目になり…という切ない展開が待っています。内戦中のため母国を離れること、家族を失った事実、移住しても貧しい生活と、苦難ばかりの様子が描かれていますが、それでも他人同士が助け合い、家族のように絆が深まっていく様子は、観ていて人間の可能性や勇気をもらいました。ありきたりですが、こういう映画を観ると、自分達はなんて幸せなんだろうと改めて思いますね。
心理の変化と行動への影響など、ジャック・オディアール監督による人間描写も素晴らしかったです。同監督の『君と歩く世界』もそうでしたが、人間の怒りというか、内部から出てくる野性味というか、そういう描写が特に印象的です。第68回カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞の本作、映画好き女子にオススメの一作です。
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シリアスな内容で終盤までは淡々と進んでいくストーリーで、デート向きの内容とは言えませんが、主人公たちが徐々に家族になっていく様子などは、カップルで観ると微笑ましく思えるし、これから結婚などを意識しているカップルなら、家族の重みについて一緒に考えられるきっかけにできそうです。少しラブストーリー的な要素もありますが、気まずくなるほどのシーンは出てきませんので、ご安心を。 |
キッズにはまだ難しい内容だと思いますが、中学生以上なら充分わかると思うので、移民の人達の生活を本作で観て、少しでも興味を持ったら、自分でもっと調べてみたり、視野を広げるきっかけにして欲しいと思います。また、血の繋がりはなくても、家族の絆はやっぱり生きる上で重要ということも描かれているので、親子で一緒に観て、鑑賞後に語り合うと有意義です。 |