2013年4月6日より全国公開/R-15
ブロードメディア・スタジオ
公式サイト 予告編
想像していた内容と違っていて、とても力強くて野性的なお話であらゆる点で新鮮味がありました。マリオン・コティヤールが演じるシャチの調教師ステファニーが、事故によってシャチのいるプールに転落し襲われて足を奪われてしまいます。ここまで聞くと、きっとステファニーが苦労の末に立ち直るお話になるんじゃないかと思いますが、意外にも軸はそこではないんです。ショックを受け、家族や同僚に背を向けていたステファニーは、事故に遭う前に一度だけしか会ったことのないアリを呼び出しますが、飾らずにありのまま、欲求のままに過ごすアリと過ごす時間が増えていきます。このアリとの関係がとても奇妙なもので、意外な展開にずっと引き込まれて鑑賞しました。人間の男女のお話というよりは、生まれもっての調教師と野性的な男のお話に思えましたが、この2人が本来持っているものが出会うべきして出会ったのはドラマチックでステキだと思います。ちょっと意地悪な言い方をすると、シャチに襲われてもシャチを嫌いになったり怖がらない天性の調教師が、人間らしく生きることに苦労している野生的な男と出会い、無意識に彼を調教し、徐々に二人のあいだに信頼が生まれ、男は大人の男性らしく成長していくというストーリーです。ステファニーの回復と同時に、アリの再生の物語とも言えるので、主人公は二人ともですね。性的欲求、本心を照れずにずばっと口に出したり、訪ねたり、ちょっと笑ってしまうくらい無垢なアリですが、野生的で粗暴でありながら愛すべき存在に見えてきます。主演のマリオン・コティヤールの演技も良かったですが、アリを演じたマティアス・スーナーツにも注目です。彼はベルギー出身の俳優で、15歳で映画デビューを飾り数々の賞を受賞している俳優です。 ストーリー、演出、演技と、とても見応えのある作品ですので、ぜひ観てください。 |
「心の深いところの繋がり」を感じさせるとてもステキなストーリーなのですが、エロシーンはところどころに出てくるし、セリフにもときどきそういう話題が出てくるので、ウブなカップルは気まずくなる場合があります。そこまで気にしないというカップルならデートで観るのもありでしょう。苦難を抱えている男女のお話なので明るいテンションというわけではないですが、内容的にはお涙頂戴的な湿っぽいものではなく、とても力強さを感じるお話なので、そういう部分では暗いムードになることはありません。ただ、ストリート・ファイトのシーンは殴り合いが激しいので、そういうシーンが苦手な人は要検討です。 あとは、ワイルドな彼や旦那さんをお持ちの方は自分のカップルについて客観視できるし、ワイルドな人を相手にしている女子同士で観るのもおもしろそうです。 |
R-15ですので、中学生以下は観られません。万が一の勘違いを避けるために言いますと、「シャチと調教師の感動モノ」というのではありません。一見、歪(いびつ)な関係に見えるけれど心で繋がっている男女がお互いに苦難を乗り越えていくストーリーなので感動的ではありますが、性的な話題やシーンが何度か出てくるので、親子で観るタイプの映画ではないし、高校生以上の鑑賞可能な年齢のお子さんにわざわざ薦める内容とは言えません。人間の強さ、人との繋がりの大切さを描いた作品ですので、とても良い内容ではありますが、もうちょっと大人になってから観る方が理解しやすく、楽しめるでしょう。 |
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©Why Not Productions - Page 114 - France 2 Cinéma - Les Films du Fleuve – Lunanime
2013.4.3 TEXT by Myson