物語を一言で言うと、独裁者である大統領と幼い孫が、クーデターが起こったことから逃亡するお話なのですが、本当の悪とは何なのかを深く考えさせられる作品でした。民衆に残虐なことをしたはずの独裁者も、ストーリーが進むに連れて、普通のおじいちゃんにしか見えなくなり、だんだんと殺して欲しくないという感情になりました。私自身なんとなく“独裁者=悪”というイメージがあったので、観終わったときは「独裁者に共感してしまって良いのだろうか?」という疑問が湧き、とても複雑な気持ちになりました。
ちょうど本作のモフセン・マフマルバフ監督にインタビューさせて頂く機会があり、監督にそのことを伺ったところ「わざと皆さんが独裁者に感情移入するように作りました。独裁者の視点から考えることで、皆さんがこれから誰かに対して復讐しようと思わなくなると考えたからです」と聞き、なるほど!と思いました。監督自身イラン人で、昔に革命を経験したことがあるとお話されていましたが、実際に革命や暴動の起こる国で生きてきた監督の感覚と、平和に暮らしてきた私達との感覚の差には驚くことばかりでした。情報はたくさんあっても、やはり私達が知っていることは、表面的なことばかりで、肝心のそこで生活している人達の視点や感情というものは、なかなか知ることができません。そういう部分を知る意味でも映画って本当に大切だと改めて感じました。
本作の舞台は架空の国ではありますが、どの国でも起こり得ることが描かれており、そのすべてが一人一人の感情に原因があることがわかります。ぜひ本作を観て、世界情勢や平和のことはもちろん、自分自身の感情についても考えてみてください。
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ある程度付き合いの長いカップルであれば、たまにはこういう考えさせられるタイプの作品を観ても良いかも知れません。革命、民衆の暴動、復讐、暴力など、かなりディープなテーマが詰まっているので、観終わってから話し合うとお互いの価値観がすごく出ると思います。熱くなり過ぎてケンカしてはいけませんが(苦笑)、お互いの意見に耳を傾けながら、難しい内容を話し合うことで、2人の関係を深めることもできると思います。 |
本作には小さな孫が登場しますが、彼自身、自分の身に何が起こっているのかよくわからないように、キッズには難しい内容がたくさん出てきます。社会の授業などで、世界情勢のことなどを勉強し始めたティーンであれば、内容についていくことができると思います。本作で描かれていることはフィクションですが、実際にいろいろな国で革命や暴動が起こっていることは事実です。もし本作を観て、世界のことに興味を持てたら、自分で調べて勉強してみるのも良いでしょう。それ以外にも、本作には自分自身に問うべきメッセージも含まれています。誰かに嫌なことをされたら、やり返すという復讐心や、自分のなかの暴力的な感情についてもこれを機に考えてみてください。 |