TOP > 映画批評TOP > 映画批評タ行 > HERE
ドリーム ホーム 99%を操る男たち
2016年1月30日より全国順次公開
アルバトロス・フィルム
公式サイト
アメリカで長らく続いている社会問題をテーマに、物語と同じように家を失った経験を持つ人や、強制退去の場に立ち会ったことのある保安官など、アマチュアの方を役者として起用していることでも、かなりリアルに作られている本作。ドキュメンタリーのようなアプローチでありながら、演出的にはスリラーとして描かれていて、冒頭の眩しいほどの照明で始まるシーンは、特に印象に残り、導入からこの世界観に引き込まれました。主演は『アメイジング・スパイダーマン』で好青年を演じていたアンドリュー・ガーフィールドで、本作では若きシングルファーザーを演じ、俳優としての気合いと幅を感じました。不動産屋を演じたマイケル・シャノンの名演も光り、多面的で複雑なキャラクターを見事に演じていました。
突然家を奪われてしまい、定職にも就けずモーテル暮らしの一家と、強制退去で商売をする不動産屋。いかにも弱肉強食で一見善悪ははっきりしているようですが、そんな単純な問題ではない、社会の深い闇を描いているのが本作です。善とか正義なんて言っていられない、究極の選択を迫られ、とにかく1日1日を生き残らなくてはいけないアメリカ社会。アメリカン・ドリームなんて言葉がありますが、夢を見ても正当なやり方では成功しないのではないかと、本作を観て厳しい現実を目の辺りにしました。先日、ラミン・バーラニ監督に電話インタビューをさせて頂きましたが、このような社会問題についての解決策はまだ見つかっていないそうで、この作品で描かれたような、2人の主なキャラクター、デニス・ナッシュやリック・カーバーが取ったような選択肢も生きていく上では否定できないとおっしゃっていました。日本でも格差社会が進んでいますが、他人事ではない現実を描いた本作。あなたが同じような経験をしたら、どういう選択をしますか?ぜひ本作を観て想像してみてください。
|
まだまだ解決の糸口が見えていない社会問題を扱っているので、鑑賞後はスッキリさっぱりというわけにはいかず、デートのムードを盛り上げてくれるタイプの映画ではありません。ただこういう現実が実際にあることを知り、もし家族だったらこういう状況に陥ったときにどういう価値観を重視するか、一緒に観て考えることは有意義だと思います。エンターテイメントとしても見応えがあり、男女問わず楽しめるので、デートで観るのもアリだと思います。 |
どうして家を奪われるのか、どうして人を家から追い出して金を儲けられるのか、キッズには難しい内容だと思います。中学生以上なら、何となくでも物語はついていけると思うので、興味があれば観てみると、いろいろなことを考えるきっかけになります。家族を守ることの大切さ、人として正しいこととそうでないこと、2つを同時に実行するのが難しいとしたら、どうしますか?大人でも正しい答えを見つけるのは難しいこの問題を、本作を観て、ティーンの皆さんにもぜひ考えてみて欲しいと思います。 |
関連記事:
■ラミン・バーラニ監督インタビュー
■【知恵と知識】映画で学ぶお金のこと あなたは罠に気付けるか?
■TJE Selection イイ男セレクション/アンドリュー・ガーフィールド
■TJE Selection イイ男セレクション/マイケル・シャノン
Copyright ©2014 99 Homes Productions LLC All Rights Reserved
2016.1.25 TEXT by Myson