2017年2月11日より全国順次公開/PG-12
ギャガ
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原作は、ジャン=リュック・ラガルスの「まさに世界の終わり」。本作の邦題は『たかが世界の終わり』ですが、“たかが”とというイメージで観ても、おもしろいなと感じました。世界が終わることよりもある意味悲劇的なこと、それがこの映画には描かれています。死期が迫っている主人公が、12年ぶりに家族と再会し、相変わらずギクシャクしたまま不器用なコミュニケーションをとる様子が淡々と描かれているのですが、それがかなりリアルで、観ているこちらまでイライラしてくる臨場感がありました。家族って一番近いけれど近すぎて見えていない部分がたくさんあるというところが、マリオン・コティヤールが演じる長男の妻の存在によって、対比が上手く描かれていて、なぜ他人が気付いて、家族にはわかってもらえないんだというもどかしさがひしひしと伝わってきます。グザヴィエ・ドランはやっぱりこういう家族の痛々しい部分を描くのが得意ですね。そして主演のギャスパー・ウリエルを筆頭に、ヴァンサン・カッセル、マリオン・コティヤール、レア・セドゥという名優達の演技も、このドラマのリアリティの質を上げています。 家族だからこその敏感さと、それによって傷付くのを恐れるがゆえの鈍感さ(=鈍感なふりなのかも)の両方が絶妙に描写された人間ドラマ。これじゃあ死にきれないなと思ってしまう切ない物語ですが(苦笑)、いろいろな意味で美しい作品であることは間違いありません。 |
映画通が好きな要素が満載で、何だかオシャレなムードが漂いますが、ドラマとしては重いので、デートのムードが盛り上がるタイプの作品ではありません。またヴァンサン・カッセルとマリオン・コティヤールが演じる夫婦のやりとりは生々しく、彼や旦那がせっかちでぶっきらぼうなタイプだと、日常と重ね合わせてしまって、心穏やかに観られない可能性も。未婚のフレッシュなカップルが観るほうが無難かも知れません。 |
PG-12だし、内容的にも大人向けなので、キッズの皆さんは大きくなってから観たほうがより感情移入できると思います。ティーンなら、自分の家族にも照らし合わせて観ると、いろいろな気持ちが浮かび上がってきて、感情を刺激されると思います。家族って一番近い存在なはずなのに、一番手強い部分もある。そんなことがとても感じられるストーリーなので、家族のことで悩んでいる人がいたら、より共感できると思います。ただ、わかりやすく元気をもらえるような作品ではありません。でも、解釈によってはお互いの見えざる思いを想像できるので、少し気持ちが楽になる部分があるかも知れません。 |
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©Shayne Laverdière, Sons of Manual
2017.1.30 TEXT by Myson