『たかが世界の終わり』来日イベント、ギャスパー・ウリエル
本作に主演のギャスパー・ウリエルが来日し、ファンを招いてのイベントに登壇しました。自分に死が迫っていることを告げるために長年会っていなかった家族のもとを訪れる主人公は、とてもセリフが少なく、表情だけで気持ちを伝える難しい役ですが、そのことについて「私が演じた主人公は、家族のほかのメンバーと比べてほとんどしゃべらないんですね。俳優としてはとても挑戦的なことでした。沈黙を通して最大限のことを伝えるというのは、私にとってはチャレンジ。でもドラン監督からはシナリオを渡される前に、そういう役だと聞いていましたし、シナリオを受け取ったときも、監督が書いた手紙が入っていました。そこには“心配しなくて良いよ。一緒に沈黙がどれほど可能性を持っている表現方法か、2人で探っていこう。そして家族の話を聞きながら、それにリアクションする、そういう風な作業をしていこう”と書かれていました。本当にドラン監督との共同作業は興味深いものでした」と撮影当時を振り返りました。
これまでいろいろな監督と仕事をしてきたギャスパー・ウリエルですが、ドラン監督はどういうところが他の監督と違うかと聞かれると、「おそらく私だけでなく、他の俳優さん達もグザヴィエ・ドラン監督と仕事をすることに、非常にそそられると思います。なぜならドラン監督は、俳優に対して非常にリスペクトがあります。彼は映画へのアプローチにおいて、常に俳優を中心に据えて、特権的なポジションを与えるんです。だから世界中のどんな俳優にとっても、ドラン監督と仕事をするというのは、彼の作品をどう思っているかに関わらず、嬉しいと思わせるんです。そして、これまで一緒に仕事をしてきた監督とは全く違う仕事の仕方をする人でした。現場ではかなり干渉主義というか、介入主義というか、かなりご自分の頭のなかではっきりとしたアイデアを持っている人です。監督は誰でも必ずしもはっきりとしたアイデアを持っているわけではありませんが、彼は全くためらわず、“あっちょっと待って!”と言って、ダイレクトにその現場で新しいアイデアを沸々と沸かせるんです。カットも言っていない、カメラが回り続けているなかでダメ出しをするんですね。これはフィルムで撮っているんですが、僕らがようやくテイクが終わるのは、ほとんどフィルムが巻ききったところなんです。仕事のやり方としては、双方向性という感じでやっていきます」と語りました。
そして、今回ヴァンサン・カッセル、マリオン・コティヤール、レア・セドゥ、ナタリー・バイといったフランスを代表する名優達と共演している点について、「素晴らしい俳優さん達と一緒に仕事ができるのを、とても光栄に感じていました。それと同時に少しドキドキして、圧倒されるようなメンバーでした。今回助かったことは、レアもマリオンもヴァンサンも、数年前から知り合いだったので、ナタリー・バイさんだけ今回初共演でしたが、知っている俳優さん達との仕事ということで、割とリラックスして臨むことができました。でも現場の雰囲気というのは監督が作るものですよね。今回の現場の雰囲気はとても心地がよくて、それはドラン監督の映画へのアプローチの仕方とすごく関係があると思うんです。彼はデビューのときから同じスタッフと一緒に仕事をしていて、だからこそ打ち解け合った雰囲気で、一致団結して1つのものに真剣に取り組む雰囲気がありました。しかも今回あまり時間のないなか、一ヶ月足らずで撮影を取り終えなければいけない状況だったんです。俳優達全員が揃うのも8日間しかなかったんですね。皆さんタイトなスケジュールだったから、カメラが回るとすぐに取りかかろうっていう勢いがありました。しかも撮った場所はカナダのモントリオール、夏で雰囲気は軽やかな感じで、でもシーンは重苦しい、息の詰まるような場合は、テイクとテイクのあいだに俳優もホッとすることが必要なので、現場では軽やかな陽気な雰囲気が漂っていました」と、チームを絶賛しました。
振り返ってみて印象的なシーンを聞かれると、「1つの骨格みたいなものが、いろいろなシーンの積み重ねによって作られているわけですが、その骨格を作り出すのが、主人公ルイと家族のメンバーとの1対1で語り合うシーンなんですね。私自身の一番好きなシーンは、映画の中盤くらいにある、ルイと母親の対峙シーン。ルイは1つの考えを持って家族のもとへ帰ってきたわけですが、ここは、ルイがちょっと方向性を変えるターニング・ポイントになる、大切なシーンなんです。もちろんこのシーンには、ドラン監督のどの作品においても一番大切な人物である母親、その母親と対立するシーンだということもありますが、実はドラン監督のどの作品をとっても父親が不在ですよね。1つ欠けているパズルが父親。でもこのシーンでは、母親が父親について一瞬言及します。なので、感情がクライマックスに達します」と、これから観る方にネタバレしないよう気を遣いながら、見どころを語ってくれました。最後にこの映画について「ここで描かれているテーマはとてもユニバーサルなもの。だからこそ、この映画は力強さがあると思います。そして、それぞれの観客の方々がご自分と家族の関係や、ご自分の心の傷に思い当たるような、鏡のような作品になっています」と締めました。
今回で7回目の来日となるギャスパーは、京都にも行ったようですよ。お子さんが生まれたそうで(来日時に生後11ヶ月と話してました)、生まれてきてようやく“そうなんだ”ってわかることがたくさんあり、発見の日々だとパパの顔を覗かせていました。そろそろ父親などもやっていく年齢になってきたので、楽しみですね。でもその前に、まずは本作でも名演ぶりをご覧ください!
来日イベント:2016年12月13日取材 TEXT by Myson
『たかが世界の終わり』PG-12
2017年2月11日より全国順次公開
ギャガ
公式サイト
©Shayne Laverdière, Sons of Manual
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