2014年11月1日より全国公開
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これまで主に語られてきた“美女と野獣”は、今ある全ての作品の原点となる1740年にフランスのヴィルヌーヴ夫人により書かれた物語とは少し違っていたようですね。フランスでは、『美女と野獣』と言えば、1946年に撮られたジャン・コクトー監督による作品が有名なようですが、クリストフ・ガンズ監督は、ジャン・コクトー作品に敬意を払いつつもそのリメイクにすることなく、これまで語られてこなかったベルの父や姉兄について、そして王子がなぜ野獣に姿を変えられてしまったのかも描くことで、これまで世に知られてきたのとは異なる“美女と野獣”を披露してくれます。ラブストーリーとして描かれているディズニー版アニメとも違い、あらゆる登場人物の欲が絡んだ展開は人間ドラマの要素も多く、ベルのキャラクターも自分の意志で考え戦う強い女性として描かれていて、単なるプリンセス・ストーリーで終わっていません。衣装やセットも凝られていて、ただ煌びやかというのではなく、どこか悲しさを漂わせる美しさを放っていて見事な演出でした。『ジェヴォーダンの獣』や『サイレントヒル』など、クリストフ・ガンズ監督が得意とするダークな世界観はこの作品にも活かされていますが、おとぎ話の陽の面は爽やかに演出されていて、これまでの監督作とは違った作風を楽しめます。王子が野獣に変えられるいきさつを描いた部分は、宮崎駿監督の『もののけ姫』に通じる部分もあり、もしかしたら、ヴィルヌーヴ夫人の“美女と野獣”という同じルーツからきているのかも知れませんね。これだけ何度もいろいろな形で語り継がれてきた作品なので、物語のおもしろさは言うに及ばずですが、長時間かかる特殊メイクではなく顔面アフレコという技術を使っていたり、映画の背景にもおもしろさが多く潜んでいる作品です。 |
ディズニー映画『美女と野獣』を観たことがある人は、ラブストーリーでファンタジーという印象が強いかも知れませんが、ストーリーも演出も全く異なり、実写ということで迫力あるシーンもたくさんあり、女性だけでなく男性でも十分に楽しめます。人間の愛と欲望、そして本当の幸せについて描いており、結末は本作が結論づけた一つの幸せの形を表現しているので、鑑賞後にその点について話し合うとお互いの価値観をより深く知ることができるかも知れませんよ。 |
ディズニーのアニメ版とは全く印象が異なり、だいぶ大人向けの作風にはなっていますが、キッズやティーンでももちろん楽しめます。本作には、これまで他の作品ではほとんど描かれてこなかった王子が野獣に姿を変えられてしまう理由が描かれていますが、ここには学ぶべきメッセージが込められています。他にも、ベルがとる選択に大切な意味が込められていたり、鑑賞後に友達や家族と話しあうのに良い題材になる映画だと思います。 |
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2014.10.14 TEXT by Myson