2014年6月14日より全国公開/R-15
日活
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こういう邦画が好きなんだよなって実感できた作品。直木賞受賞、40万部を超えるベストセラーとなった桜庭一樹の原作を映画化。物語の濃厚さもさることながら、キャストの演技力と熊切和嘉監督の演出力、全てが合わさって最高の作品ができているという印象です。原作は読んでいませんが、物語の時間軸を見せる順番が違うとのことで、映画で観たストーリー展開の方が結果がわからないだけに、いろいろと憶測しながら鑑賞できて個人的にはこの順番の方が良かったと思いました。印象的だったのは血の雨が降るシーン。余計なことを語らずして、観ている側に想像させてくれる余地がありつつ、その強烈なインパクトでのちのちのストーリーに繋がった際にすぐに思い出すことができて、演出の意図していたことがそのときにわかるという見事な演出だと思いました。 そして、何と言ってもすごかったのが主演の二人。まず花を演じた二階堂ふみは、映画化が不可能と言われてきた一因ともされる流氷のシーンで実際に水のなかに入って撮影したそうで、本当に死んじゃうんじゃないかと思うシーンで、それをやってのけるとはすごい女優魂の持主だと改めて思いました。さらに、育ての親である淳悟との複雑な関係をあんなに見事に演じるとは彼女の演技力には今回も圧倒されました。娘としての顔、女としての顔…、観ているこっちまで怖いと思ってしまう演技でした。淳悟を演じた浅野忠信も負けていません。最近はハリウッド大作での活躍が目立ち、それはそれで喜ばしいことですが、個人的にはこういう役をやっている浅野忠信の方が好きです。何だか『幻の光』や『スワロウテイル』に出ていた頃の浅野忠信を思い出しました。今作では、震災で家族を失い一人ぼっちになった花という少女を引き取り育てていくことで自分も孤独から抜け出そうともがく淳悟を演じていますが、“彼のなかにある矛盾”をとてもリアルに演じています。それがとても象徴的に表れているのが、レストランでのシーン。花の行動に対する、いろいろな感情が入り混じったあの表情が絶妙過ぎます。セクシーさと危うさを持つ淳悟というキャラクターは浅野忠信でなければ誰がやったのか想像がつかないほどハマり役でした。ぜひ今後もたまにはこういう役をやって欲しいと思います。ということで、とにかくいろいろな面で必見の映画です! |
かなりヘビーな内容で複雑な心境にさせられる映画で、濃厚な濡れ場も何度かあり、物語の内容だけで判断するとデート向きではありません。とはいえ、現実的に置き換えて自分たちの生活とリンクするような設定ではないので、これを観たからといって2人の関係に何かしら疑問を投げかけるというものでもありません。なので、ヘビーな内容だとわかった上で観るならばデートで観るのもありでしょう。観終わったあとには語りたくなる要素もあるので、話題作りには良いようにも思いますが、さわやかな気持ちでいたいデートの日に観るのは避けましょう。 |
残念ながらR-15なのでキッズと15歳未満のティーンは観られません。衝撃的なストーリーなので高校生以上のティーンのなかにはまだこういう内容が受け入れ難い人もいるかも知れません。ベッドシーンも濃厚なのが数回出てくるので、一緒に観ても気まずくならない友達を誘うか、一人で観に行く方が良いでしょう。親子で観るのは内容的に気まずいと思いますよ。 |
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2014.4.15 TEXT by Myson