>映画に隠された恋愛哲学とヒント集22

毛深くて悩む女子中学生の後藤綾子と、毛が生えてこなくて悩む男子中学生、太田年彦。今まで他の人には打ち明けられなかった自分たちの悩みをお互いに暴露した二人。両極端とはいえ、同じカテゴリーで悩む二人はどんどん急接近していきます。でも、年彦に毛を剃ってもらうことで生活が変わってきた綾子は自分にだんだんと自信が出てくる一方で、年彦は綾子との“同盟関係”に執着が芽生えてきます。ずっと続くはずがない、「毛を剃る仲」の行方は、ある種男女の思考の違いを表しています。

毛深くて悩み続ける後藤綾子と、いつかは毛が生えてくるだろう太田年彦の関係は、今だけ成立しているような同盟関係です。でも、綾子の支えになりたいと思う年彦の思いは複雑です。自分に毛が生えてきたら、綾子はもう自分を頼りにできないと思ってしまいます。彼らのあいだに恋愛感情があるのかないのか、それは映画を観て考えてもらうとして、すね毛や脇毛というかなり恥ずかしい部分までさらけ出して剃ってもらっているのだから、綾子が年彦をかなり信用しているのは間違いないし、特別な存在であるのは確かでしょう。年彦も綾子のそういう一面を見ても嫌いになるどころか愛おしくも思っている様子なので、脈はありそうです。
だからといって二人が恋愛関係でうまくいくのかと言えば、わからないところ。個人差はありますが、好きな人だからこそ何でも見せるというタイプもいれば、好きな人だからこそ隠す部分は隠すというタイプ、両方がいます。割り切っているからこそ成立しているのか、好意があるから受け入れてくれているのか、本作のような特別な関係にいる方は、ぜひ一度一歩離れたところから自分たちを観察してみてください。