今回は、アナ・ケンドリックがクレイジーな失恋女子を演じる映画『バッド・バディ!私とカレの暗殺デート』の脚本家マックス・ランディスさんにSkypeインタビューしました。現在31歳で、過去に『クロニクル』『エージェント・ウルトラ』といったハリウッドのヒット作を手掛けてきたマックスさんに、オリジナルストーリーへのこだわりや、もし付き合った相手に衝撃の事実が発覚したらどうするのかなど伺いました。
PROFILE
1985年8月3日アメリカ、カリフォルニア州生まれ。2011年と2012年に、フォーブス誌の“30 under 30(注目すべき30歳以下の30人)”に2年連続で選出された。2012年、『クロニクル』で初めて長編映画の脚本を担当し、本作は24億9000万円という興収で全米初登場1位を獲得し、その後も興行収入を伸ばした。2015年には、ダニエル・ラドクリフ、ジェームズ・マカヴォイが共演した『ヴィクター・フランケンシュタイン』と、ジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワートが共演した『エージェント・ウルトラ』で脚本を務めた。さらに“Me Him Her(原題)”では、脚本と監督を兼任した。本作『バッド・バディ!私とカレの暗殺デート』では、脚本とともに製作も務めている。最近ではテレビ業界にも進出中で2本のパイロットの脚本が売れた。
父親は『ブルース・ブラザーズ』や、マイケル・ジャクソン「スリラー」のミュージックビデオを撮ったジョン・ランディス。
シャミ:
本作は、アクション、ラブストーリー、コメディといろいろな要素が詰まった作品で、一言でどのジャンルとは言い表せないおもしろいストーリーでしたが、本作の着想はどんなところから生まれたのでしょうか?
マックス・ランディスさん:
昔の作品だと、ロマンティックだけどおもしろかったり、ちょっとふざけていたり、アクションが含まれていたりと、いろいろな要素が詰まった作品がたくさんありました。でも最近は、シリアスかコメディのどちらかに寄った作品が多くて、僕は大学生の頃からそのことに苛立ちを感じていて、そんな思いから、今回はシリアスとコメディを混ぜた作品を作りたいと考えました。
シャミ:
本作では脚本以外に製作にも携わっていますが、製作に携わったことで得たことはありましたか?
マックス・ランディスさん:
作品に直接関われたというところが大きかったです。いつでも作品の様子を確認することができ、監督やプロデューサーと直接話すことができたのがとても良かったです。また、ほかのプロデューサーがすごく優れた方ばかりだったので、僕はどちらかと言うと製作のおいしい部分だけを味わえたと思います(笑)。例えば、出演者について話し合うとか、そういった楽しい部分だけをやらせてもらいました。僕はテレビでもプロデューサーを務めている作品がありますが、そちらでは予算のなかでどう作るかなど、もっと責任があって、妥協も必要な仕事をしています。だから今回の作品ではすごく楽しめました。
シャミ:
逆に今まで脚本だけを担当をされていたときは、もどかしさみたいなものがあったのでしょうか?
マックス・ランディスさん:
100%満足のいく仕事をしたことがなくて、何かしら変えたいけど妥協しなければならないことが多々ありました。でも、今回は製作に携わったことですごく楽しんで作ることができ、満足のいくものができました。
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シャミ:
アナ・ケンドリックは、歌も演技も素晴らしく、シリアス系の作品から今回のようなコミカルなキャラクターまで幅広い役を演じられる女優という印象ですが、マックスさんから見て彼女はどのような女優でしょうか?
マックス・ランディスさん:
すごく誠実な女優だと思います。クレイジーな演技をすれば観ている人もクレイジーだと感じるし、おもしろいことをすればおもしろいと信じ込ませてくれる、全く偽りのない演技が彼女の魅力だと思います。だから今回のマーサ役なら、彼女の得意な部分をすべて出せると思いましたし、実際に彼女はこの役を見事に演じてくれました。
シャミ:
本作のマーサは、理想の人だと思って付き合った相手に、衝撃の事実が発覚しましたが、もしマックスさんがマーサと同じ立場だったらどうしますか?
マックス・ランディスさん:
実はそういうことを何百回も経験しています(笑)。僕は、変わった人と付き合う傾向があって、付き合っていくうちに相手の衝撃の事実が発覚することがよくあります。さすがに相手が暗殺者だったらかなり驚くでしょうね。でもキスが上手かったら許します(笑)。
シャミ:
キスで許せちゃうんですね(笑)!マックスさんは、女性と付き合っているときに、マーサのように相手に影響されやすいタイプですか?それとも相手を自分色に染めていくタイプですか?
マックス・ランディスさん:
両方ありますね(笑)。誰と付き合うにしても、学ぶことはあるので。ただ別れたときに相手に悪い影響を与えていないか、良い影響を与えたかなってちょっと心配します。
シャミ:
相手のことを別れた後まで心配されるとは、とても優しいですね!
マックス・ランディスさん:
気遣いはできるんですが、僕は問題児でもあるんですよ(笑)。
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シャミ:
『クロニクル』で長編映画の脚本を初めて担当して以降、さまざまな作品の脚本を担当されていますが、いつ頃から脚本家を目指していたのでしょうか?
マックス・ランディスさん:
実際に脚本を書いたのは15年前です。いろいろなストーリーやアイデアが頭のなかに溢れていたので、それを何とか紙に収めたいと思って書きました。それまではコミックやショートストーリーはたくさん書いていたのですが、脚本を初めて書いたのはそのときです。最初に書いたのが99ページの脚本で、それ以降も100ページくらいの脚本を書き続け、まさかそれが映画になるとは自分でもかなり驚きました。
シャミ:
子どもの頃から映画そのものに興味があったんですか?
マックス・ランディスさん:
父が監督をしていて、家族が皆映画好きでした。
シャミ:
お父様が監督で、マックスさんご自身も監督をされた経験もありますが、それでも脚本家にこだわる最大の理由は何でしょうか?
マックス・ランディスさん:
頭のなかのアイデアがあまりにも多すぎるので、監督をしていると追いつかないんです。とにかく書き続けて、もし脚本以外で参加するのであれば自分が書いた脚本のコントロールができるプロデューサーが良いですね。そういう意味で、やっぱり脚本を書くのが一番だなと思います。
シャミ:
日本では人気小説やマンガの映画化作品が近年かなり多く、オリジナルの脚本が映画化されることは、皆が全く知らないものを世に出すことになるので、ハードルが高くなる印象もあるのですが、マックスさんご自身はオリジナルで書く際にそういったハードルを感じることはありますか?
マックス・ランディスさん:
やはり人がやったことを繰り返さないという点が大変です。全く新しいことというのはなかなかないと思うのですが、新しい方法で見せるというのがハードルだと思います。それに日本で起きていることは世界中で起きていることだと思うんです。いわゆるIP(=知的財産)をもとに作品が作れられていくので、オリジナルが少ないんです。『ターミネーター』や『フェリスはある朝突然に』『バック・トゥー・ザ・フューチャー』などの名作は、すべてオリジナルですが、最近はそういった名作が作られていなくて、とても悲しいなと思います。だから僕自身が手掛ける映画についてはできる限りオリジナルのストーリーを書いていきたいです。
シャミ:
ハリウッドでヒットする法則があるという話を聞いたことがあるのですが、実際にあると思いますか?
マックス・ランディスさん:
僕自身あまりヒットさせようと考えて作っていないので、法則というものにも特に従っていません。ただバイヤーに興味を持ってもらえるかや、自分自身が楽しめるかということは考えています。
シャミ:
それを聞いてちょっと安心しました。映画ファンとしてはその方が嬉しいです!では、今後の作品で書いてみたいのはどんなジャンルですか?
マックス・ランディスさん:
この作品や『クロニクル』『エージェント・ウルトラ』のようなアクションや超能力などが全くない作品を書いてみたいです。実は今そういった作品に実際に取りかかっているんです。
シャミ:
超能力やアクションが登場する作品も大好きで、そこがマックスさんの作品の特徴でもあったと思いますが、それがないとなるとそれはそれで興味深くて、ぜひ観てみたいです!
マックス・ランディスさん:
ありがとうございます。そう言って頂けると嬉しいです。
シャミ:
では最後にトーキョー女子映画部のユーザーに向けて、本作のオススメコメントをお願いします。
マックス・ランディスさん:
自分のことを受け入れることができれば、相手のことも愛せるし、相手も自分のことを愛してくれる。だから自分がどんなに変わり者であっても、必ず自分にぴったりの相手がどこかにいるんだよっていうのがこの映画の見どころだと思います。
シャミ:
運命の人を探している人にはぜひ観て欲しいですね!
マックス・ランディスさん:
デートにもぴったりの映画だと思いますよ。
2017年3月24日取材&TEXT by Shamy
2017年5月13日より新宿シネマカリテ他全国ロードショー
監督:パコ・カベサス
製作・脚本:マックス・ランディス
出演:アナ・ケンドリック/サム・ロックウェル/ティム・ロス/RZA
配給:パルコ、ハピネット
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