今回は映画『ジャッジ!』の永井聡(ながいあきら)監督にインタビューしました。監督ご自身はCMディレクターとしても活躍中で、本作は長編映画デビュー作となっています!
インタビューでは本作の監督をすることとなった経緯や現場の様子、そして映画の舞台となる広告業界についてもお話して頂きました。
1970年、東京都生まれ。武蔵野美術大学を卒業後、1994年に葵プロモーションに入社。CMディレクターとして数々の話題作を手がけ、2012年52nd 、2013年53rd ACC CM Fesivalクラフト部門ディレクター賞を2年連続受賞。主なCM演出作品は、ダイハツ工業【日本のどこかで】、大塚製薬カロリーメイト【とどけ、熱量。】、サントリーBOSS【ゼロの頂点】などがあり、映画は2005年『いぬのえいが』で短編監督をし、『ジャッジ!』で長編監督デビュー。
2014年1月11日より全国公開
監督:永井聡
脚本:澤本嘉光
出演:妻夫木聡/北川景子/リリー・フランキー/鈴木京香/豊川悦司
松竹
公式サイト 予告編 映画批評
落ちこぼれ広告マンの太田喜一郎は、上司に押し付けられサンタモニカ国際広告祭に審査員として参加することになる。しかし毎晩開催されるパーティに同伴者が必要と知り、仕事はできるがギャンブル好きの同僚、大田ひかりに“偽の妻”として同行してもらうことに。広告祭の裏側で世界中のクリエイターたちが駆け引きや小芝居を繰り広げるなか、喜一郎は持ち前のバカ正直さと謎の窓際社員・鏡さんからの伝授による英語を武器に奔走するが…。
©2014「ジャッジ!」製作委員会
シャミ:
本作で監督することとなった経緯を教えて頂けますか?
永井監督:
この映画の企画自体は5年前くらいから進んでいたようですが、僕が関わったのはちょうど1年前くらいからです。この映画は広告業界のかなり詳しいところまで描かないといけませんでしたし、脚本を担当した澤本嘉光さんとは10年くらいの付き合いだったのでそこから僕に監督の話が来ました。
シャミ:
実際に広告業界で働いている監督と脚本家だったからこそ描けた内容だと思うのですが、お二人で話し合いをするなかで監督がこだわった部分はありますか?
永井監督:
澤本さんも僕も2時間という長い尺で映像を作ることに慣れていないので、そこはたくさん話し合って詰めていきました。僕としては全体的におふざけに見え過ぎないようにすることを意識して、ジーンとさせるところはジーンとさせたいなと思って作りました。あとは外国人が多く出演しているので字幕がありますが、いかに皆さんが興味を持ってストーリーから外れずに観てくれのるかというところに気を付け、外国人の演技にもなるべく説得力を持たせたつもりです。
シャミ:
妻夫木さんと北川さんと一緒にお仕事されていかがでしたか?
永井監督:
2人とも役に対してすごくストイックなタイプの方々でした。アプローチの仕方は全然違いますけど、こっちがやってくれと言ったことに対して「それはおかしいんじゃないか」と言うのではなく、さらに良くしていこうという人たちなのですごくやりやすかったです。
シャミ:
妻夫木さんが演じた喜一郎の言葉に広告への愛や生きる上でのメッセージを感じたのですが、監督ご自身はどういう思いを込めて本作を作られたんでしょうか?
永井監督:
広告業界は結構特殊な世界だと思いますが、自分のやりたいことを上から締め付けられたり、言いたいことを言ったら自分の立場が危なくなるといったことはどの仕事でもあることだと思います。この映画では広告業界の話をしていますが、全ての業界の人に共感してもらえるようにしたいと思いました。喜一郎はずっと辛い仕事をやっていくのかも知れませんが、全てにおいて好きだという気持ちを失くしてしまうとそこでおしまいだと僕は思っています。だからこの映画には皆さんがここにいる理由を改めて考え直すというメッセージをわかりやすく込めたつもりです。
シャミ:
広告祭で不正を働いてジャッジに響くということは実際にあるのでしょうか?
永井監督:
あまり大きい声では言えませんがあります。外国人は駆け引きやちょっとした休み時間にロビー活動みたいなものをよくやっています。でもその人たち自身はそういう行為を不正と思っていなくて、純粋に自分のCMが好きだから良い賞をもらえて当然だという考えなんです。逆に日本人は自分たちのCMがどんなに好きでもそこまでアピールするような国民性じゃありませんし、日本人がそういうアピールを行う外国人を見ると「良いの?そういうこと」ってなりますよね(笑)。
シャミ:
CMと映画、それぞれの楽しいところはどんなところですか?
永井監督:
CMというのは強制的に流れてくるものですが、ちょっとした映画よりもCMの方がすごく有名ということがありますよね。だからいろんな人に観てもらえるところはCMの楽しさだと思います。あとはCMって15秒とか30秒の世界なので、先週はSFを撮ったとか、今度は時代劇を撮ったとか短いスパンでいろいろな世界を表現できて、新しい映像技術を試せることもCMの楽しさだと思います。逆に映画は1本にすごく時間がかかって大変ではありますが、お客さんにお金を払って観てもらうということが圧倒的に良いところだと思います。それに劇場にいると反応がダイレクトに聞けるところが楽しいと思います。
シャミ: 強制的に流れてくるCMはうるさがられるときもあると思うのですが、それをエンタテインメントとして楽しんでもらうために何か心がけていることはありますか?
永井監督:やっぱりCMが流れた瞬間にわざわざ観る人たちって少ないと思うんですよね。何かの番組を楽しんでいたけどCMになった途端に気を許すものだと思うので、そういう人たちを振り向かせるために僕らはアプローチして、何か新しいものを提供しなければいけないんだと思います。「何か一つでも新しいものを」ということは常に意識しています。
シャミ:
映画とCM、それぞれの今後の目標をお聞かせください。
永井監督:
映画はこれからも撮り続けたいなと思っています。CMは今回の映画ですごく勉強になった部分を持ち帰って上手く生かしていきたいです。
シャミ:
トーキョー女子映画部の映画好き女子たちに向けて、本作のオススメコメントをお願いします。
永井監督:
この作品ってバカっぽいコメディであって、アート作品ではないので気楽に観て欲しいです。人生観を変えるような作品ではないとは思いますが、何か嫌なことがあった友人や、元気のない人を誘ってみんなで笑って楽しんでもらえたら良いなと思います。
2013.11.20 取材&TEXT by Shamy