今回は、8歳の頃から魅了されているという伝説の都市ポンペイのストーリーを映画化したポール・W・S・アンダーソン監督に単独インタビューをさせて頂きました。これまで多くの3D映画を排出してきた監督に、ずばり3D映画の意義を問う質問をぶつけてみたところ、監督にとって「なぜ映画を作るのか」というところに触れる内容だったとのことで、熱い熱いコメントを返してくださいました。
PROFILE
イギリスのニューカッスル=アポン=タイン出身。1993年『ショッピング』で監督デビュー(兼脚本)し、その手腕を認められ『モータル・コンバット』で1995年にハリウッドに進出、全米大ヒットの快挙を成した。2002年、製作、監督、脚本を務め、ミラ・ジョヴォヴィッチが主演で映画化した『バイオハザード』が全世界で大ヒット。その後、本作の続編も大ヒットし、シリーズ化している。プライベートではミラ・ジョヴォヴィッチと結婚。『ポンペイ』の来日では妻のミラも同行し、夫の日本でのPRを支えた。ちなみに『ポンペイ』の主演キット・ハリントンは人気TVドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』に出演しており、同作にハマっているミラが夫ポールにプッシュしたとのこと。上記ほかの監督作は『イベント・ホライゾン』『ソルジャー』『バイオハザードW アフターライフ』『バイオハザードX:リトリビューション』『エイリアンVS.プレデター』『デス・レース』『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』など。
2014年6月7日より全国公開
監督・脚本:ポール・W.S・アンダーソン
出演:キット・ハリントン/エミリー・ブラウニング/キーファー・サザーランド/キャリー=アン・モス/アドウェール・アキノエ=アグバエ/ジャレッド・ハリス
配給:ギャガ
幼い頃にローマ人に一族を虐殺され、ケルト人騎馬族の生き残りとなったマイロは奴隷にされるも、無敵のグラディエーターへと成長する。そんなマイロはポンペイへの道中、ポンペイの有力者の娘であるカッシアの馬を助け、そのときお互いに惹かれ合うものを感じる。だがカッシアはローマの上院議員コルヴスにポンペイの平和と引き換えに婚姻を迫られ、マイロは決闘で死に追いやられようとしていた…。西暦79年、火山の噴火で一瞬にして全てを奪われた街ポンペイを舞台に描かれる歴史アクション超大作。
公式サイト 映画批評&デート向き映画判定 来日ジャパンプレミア
©2013 Constantin Film International GmbH and Impact Pictures (POMPEII) Inc.
マイソン:
監督がポンペイのお話を映画化したいと思った際、どの点に一番興味を引かれたのでしょうか?
アンダーソン監督:
8歳のときに学校でポンペイについて初めて学んだときに、石膏像のイメージを初めて目にしたんです。ポンペイの街の人々はヴェスヴィオ火山の噴火によって一瞬にして亡くなられましたが、(その石膏像の姿でわかったのは)人によって死への相対し方が違ったんですね。ある人は恐怖で身を縮め(キーファーのキャラクターのもとになった)、身体の大きなアフリカ系と想定されるグラディエーターの方(アティカスのキャラクターのもとになった)は非常に威厳をもって死の瞬間に臨んでいました。そして人によっては愛する者の瞳を見ながら死ぬことを選んだ、そういう石膏像を見ているだけで、こういう人たちはどういう生活をしていたのかバックストーリーを想像し、思いを馳せずにはいられませんでした。で、ポンペイに夢中になってその思いが実は40年も続き、それが理由でこの映画を撮りました。その石膏像というか、死の瞬間の人のあり方がとても心に刻まれたんです。そしてポスターにも使われているこのカップル。カップルの石膏像も残っていて、身につけていたアクセサリーから、女性は身分が高く、男性はおそらく奴隷かグラディエーターであったと科学者が推定しています。二人が恋人かどうかはわからないわけですが、この大変な天災が起きているなかで、二人はともに死の瞬間を迎えたわけです。それがこのストーリーの一番大きなインスピレーションになりました。
マイソン:
なるほど。監督は3D作品を積極的に手掛けてらっしゃいますが、3Dにすべき映画、する必要がない映画はあると思いますか?あるとしたらその判断基準は何ですか?
アンダーソン監督:
自分としては、題材、ストーリーに関わらず、3D向き、そうじゃないものっていうのはない思います。何でも3Dで撮れると思います。ただやっぱり皆さん最初に3Dって聞くと、ものすごいアクションとかスペクタクルとかに向いているんじゃないかと思うだろうし、それは間違いではありません。『ポンペイ』の最終章はまさにそうですよね。いろんなものが観客に向けて飛んでくる。だからその経験もより深いものになるし、前半のポンペイの街にあたかもいるような気分になれる没入感というのも、3Dであることによってより強まると思います。でもそういうわかりやすい3Dの効果だけでなく、この映画でいうと主人公のマイロとアティカスが牢屋のなかで語り合っているシーンとか、セリフだけの親密なシーンだったとしても、奥行きや距離感をすごく観客に伝えてくれるものだと思うので、3Dは効果的だと思います。あとカッシアとマイロが厩舎にいるシーンで、お互いに気持ちが動いて二人の距離感がどんどん近づいているというのも、3Dだからこそより実感できるところがあると思うんですね。だからドラマもそれこそロマンスも、きちんと撮れば3Dで撮ることによってより盛り上げることができると僕は思っています。でも世の中には悪い3D映画もあって、3Dカメラで撮らずに作ってからあとで3Dに変換されるものもありますが、僕はそれは作らないからね。
マイソン:
映像、撮影技術が発展して何でもCGで表現できるようになったと思いますが、具現化できないと思われていたものがリアルに再現できる一方で、逆に全部作り物に見えてしまうリスクもあると思います。そういった高技術を使って映画を作る上で監督が気を付けていること、こだわっていることは何ですか?
アンダーソン監督:
自分が観る立場になったとしても、良い映画って少なくとも観ているあいだはどうやって作られたかなんてことに思いを馳せないものなんです。純粋に感情移入ができて、そのキャラクターたちとともに喜んだり悲しんだり、ストーリーに入り込めれば、リアルに見えれば良いというのが僕のスタンスです。つまりなるべく観たときにその世界がリアルであれば良いわけで、作り方がCGを使ったとしてもハイブリッドだったとしても実際に撮ったとしても、それはどうでも良いと思うんですね。逆に僕が思うには、普段の生活をしている我々は人工的なものにとても敏感で、ロボットとかクリーチャーだったら元々ホンモノではないという意識があるから信憑性という意味では違和感を抱くことはないにせよ、普段から身の回りにある水とか火とか石とかそういったものは意識して無くても、さらに物理やその作用を把握していなかったとしても、ちょっとしたことが違ったら、皆さんはちょっと違うなと思うわけです。それにCGで炎を再現するのはとても難しいことでとても時間がかかる。だったら実際に撮ってしまった方が良いんじゃないかというのが僕のスタンスで、実際に炎も使います。その炎が嘘っぽければ観ていて「別に本当の炎じゃないから、死ぬ危険なんかないでしょ」とハラハラドキドキもしないですよね。僕の場合は本当に石も飛ばすし、天井も落とすし、炎も使います。その方が観ているときの危機感や感情移入感はよりレベルアップします。本作の撮影では、例えばキット・ハリントン(マイロ役)とアドウェール・アキノエ=アグバエ(アティカス役)の目の前に火の玉がバーンと落ちてきて爆発するシーンがあります。火の玉は飛ばさずCGを使っていますが、現場では実際に大きな爆発を起こしたんですね。煙とほこりを彼らの後ろで爆発させたんです。そうするとキットの髪も立つし、実際に熱さもあるので「今そこで火の玉がぶつかったから、よしじゃあそれにリアクションしなきゃ」という演技ではなくなります。「熱っ!痛っ!」っていう実際の肉体的、物理的な反応がとれるような仕掛けをちゃんと用意したんです。めちゃくちゃ熱いから、キットの顔が一瞬赤らむんですが、それをカメラで収めています。そういうディテールは全部CGではできないことなんです。役者にとっては辛い現場で、スタッフも準備などにとても手間がかかるけど、監督としてはなるべく実際に現場で撮る方が僕は好きです。
マイソン:
では最後の質問になりますが、最近日本の女子はムキムキよりもナヨッとした男性が人気があると言われているんですが、キット・ハリントンさんのようなマッチョでステキな方が登場しているこの映画をPRするために、監督が男目線でオススメコメントをお願いします。
アンダーソン監督:
ハハハハ!『グラディエーター』を当時の彼女と観に行ったときのことを思い出しますね。あ、でもミラと出会う前ですからね!ラッセル・クロウが演じていたマキシマスのキャラクターに劣等感を感じましたね(笑)。彼女が「マキシマス、男らしい!」という表情になっていて、もう本当に劣等感を感じたのをよく覚えています。でも学んだのは、「だからといって、女子はラッセル・クロウと結婚したいわけではないんだ」ってことなんです(笑)。現実はラッセル・クロウなのであって、マキシマスではないわけです。なので男子たちにはぜひ『ポンペイ』を観に来てもらって、女子が「キット、超イケメン!」とか言っても、現実的に恋愛ってことになれば、ちゃんと自分のことが好きだとか、自分と可能性があるということを感じてもらえると思います。あとデートムービーとして後半ちょっとハラハラドキドキするので、男子がジャケットを着ていたら女子が怖いシーンでジャケットの中に隠れようとするかも知れませんね。ラストは感動的ですから、女子と一緒に観て頂ければ「いや〜ん、怖い!」と言ってくっついてもらって、その後一杯飲むか食事に行ってもらって…あとはきっとステキな夜が待ってるでしょう!
2014.5.27 取材&TEXT by Myson